インプラントは「どんな痛み」が「いつまで続く」の?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラントは、天然の歯と機能や見た目がほぼ変わらないため、近年人気が高まっている治療法です。しかし、外科手術が必要なので、インプラントを入れたいと思うものの、痛みが気になりためらっている人は多いのではないでしょうか。

 

この記事では、インプラントで起きる痛みや痛みがおさまるまでの期間、痛みを軽減する方法などを詳しく解説します。

目次

1.インプラント治療中の痛み

インプラント手術は、歯ぐきを切開してあごの骨に穴を開け、インプラントを埋め込み、歯ぐきを縫い合わせるという流れで行います。

外科手術が必要なため痛みは伴いますが、麻酔を打つので、治療中はほぼ痛みを感じません。

 

また、インプラントは、口の中の状態を整えてから治療する分、一般的な虫歯治療よりも痛みが少ない傾向にあります。実際にインプラントを受けた人からは、親知らずをはじめとする抜歯の方が痛いという声がよくあがるほどです。実際に治療を受けると「思ったよりも痛くない」と感じる人が多いといえるでしょう。

 

治療中に痛みを感じる場面は3つあります。それぞれ解説します。

1-1.麻酔

インプラント手術は痛みを伴うため、必ず麻酔をしてから行います。表面麻酔を塗って歯肉の感覚を麻痺させてから麻酔注射を打つため、注射の痛みはほぼありません。

 

表面麻酔が不充分だったり、患者が痛みに敏感だったりする場合は、痛みを感じるケースもあります。

 

痛みや注射への恐怖が大きい場合は、麻酔の仕方を工夫できる場合もあるので、歯科医師に相談しましょう。

1-2.外科手術中

麻酔の効果が途中で切れて、痛みを感じるケースもゼロではありません。体質は人それぞれなので、一般的な量の麻酔を注射しても効果が持続する時間は異なります。

 

麻酔の効きが悪い場合は、まれに手術中に効果が切れてしまう場合があります。これまで受けた手術で麻酔の効きが悪かったことがある、痛みに弱いといった場合は、歯科医師に相談し、麻酔を調整してもらうとよいでしょう。

1-3.抜糸

手術の際に傷口の縫合に使った糸は、約1週間後に抜糸します。抜糸の際は、ちくちくとした軽い痛みがあります。痛みが軽く、抜糸にかかる時間も短いので、それほど心配はいりません。

 

麻酔が必要のないレベルの痛みですが、心配な場合は歯科医師に相談しましょう。

 

抜糸前に縫合した場所の痛みを感じる人もいますが、糸による違和感を痛みとして認識している場合がほとんどなので、抜糸により解決します。

1-4.不安がある場合は歯科医師に相談する

このように、インプラント治療により痛みを感じる可能性はゼロではありません。使用する麻酔の種類や量を調整してもらうなどの対策ができるので、痛みが心配な場合は診察時に医師にしっかり相談しましょう。

 

また痛みに対する恐怖心が大きい場合、「静脈内鎮静法」を行うのも有効です。鎮静薬や麻酔薬を点滴で注入する処置で、恐怖心や不安、緊張を和らげる効果が期待できます。

2.インプラント手術後の痛みは1~2週間続く

インプラントによる痛みのほとんどは、手術後に麻酔が切れた後の痛みです。手術後1~2週間は、痛み・腫れが続く可能性があります。また、手術当日~翌日は出血も見られます。

 

切開や縫合などをするため、手術後にこうした症状が出るのは正常な反応です。時間の経過とともに状態が落ち着くので、あまり心配はいりません。処方された痛み止めを使えば、耐えきれないほどの痛みが出ることはほぼないでしょう。

 

インプラントの本数が多い、抜歯直後にインプラントを埋め込む方法で治療したといった場合は、通常のインプラントよりも痛みが強くなる傾向があります。

3.インプラント手術後の痛みを軽減する方法

通常であればある程度の期間が経つと、インプラントによる痛みはなくなります。しかし、それまで痛いのを我慢するのは辛いものです。

 

ここではインプラント手術後の痛みを軽減する方法を紹介します。

3-1.食事に気をつける

食事をすると噛む力が加わり、痛みが起きる場合があるので要注意です。飲食は毎日のことなので、不明点があれば手術後にしっかり確認するのをおすすめします。

 

手術直後は、麻酔の影響が続いているため、食事は控えてください。口周辺の感覚がなく、熱いもので火傷をしても気がつかない、頬の内側・唇・舌を噛んでしまうといったリスクがあります。麻酔が切れるまでの数時間は、飲み物しか口にしない方がよいでしょう。

 

麻酔が切れた後も、噛むことにより治療部分にダメージを与えないよう、柔らかい食べ物中心の食事を1週間ほど心がけます。あごの骨とインプラントがくっつくのを待っている状態のため、硬いものを噛むと、痛みが出るだけでなく位置がずれるなど、治療の結果そのものに影響します。

 

おかゆやよく煮込んで柔らかくなった麺類、豆腐、ヨーグルト、プリンなど、あまり噛まなくても食べられるメニューがおすすめです。また、インプラントを入れた部分で噛まないように食べましょう。

 

飲み物は自由に飲めますが、手術後2~3日は飲酒を避けて下さい。アルコールは血行を促進する作用を持ち、手術後に摂取すると出血が止まらない、痛みや腫れが悪化するなどのリスクがあります。

3-2.禁煙する

タバコは「ニコチン」をはじめとする有害物質を含んでいるため、喫煙すると血行が悪化し、傷の治りに悪影響を及ぼす場合があります。粘膜の治癒が遅れると、化膿してしまい痛みが出るリスクがあります。

 

少なくとも手術前後1週間ほどは、禁煙する方がよいでしょう。また、タバコは血行を悪化させるだけでなく、免疫力の低下も引き起こします。免疫力が低下すると、歯ぐきが細菌に感染しやすくなり、歯周病やインプラント周囲炎の原因となるので、できれば完全に禁煙するのをおすすめします。

3-3.運動や入浴は避け安静に

運動や湯船での入浴は、血行を促進し、出血・痛みの原因となります。特に手術直後は、なるべく控えましょう。

 

手術から3日間は湯船につからず、シャワーですませるのをおすすめします。熱いお湯も血行に影響するので、ぬるめのシャワーがおすすめです。

 

また、ウォーキングなど軽い運動であっても、手術から2~3日は避けた方がよいといわれています。激しい運動は1週間以上経過後であれば問題ありません。

 

インプラント手術後は思った以上に、身体がダメージを受けています。しっかり回復させるために、仕事を休み、自宅で安静にして過ごすのがベストです。

3-4.抜糸まで治療箇所の歯磨きを控える

インプラント後は、傷口の影響が気になり歯磨きをためらう人も多いかもしれません。しかし、口の中が汚れていると細菌が増え、治療箇所に悪影響を与える可能性があります。毛先の柔らかい歯ブラシで、治療部位を避けて磨くようにしましょう。

 

施術部位周辺のブラッシングを避ける期間は、抜糸が済むまでの1週間~10日ほどです。歯磨きの刺激により、傷口が開く、痛みが出るといったトラブルが起きる可能性があるためです。

 

インプラント後に歯科医師がうがい薬を処方する場合が多いので、傷口に影響が出ないよう、優しくゆすぐとよいでしょう。

3-5.鎮痛剤や抗生物質を正しく使う

インプラント手術後に麻酔が切れると、痛みが出る場合があるので、あらかじめ鎮痛剤を服用し、痛みを和らげましょう。痛みが続く場合は、鎮痛剤を処方してもらうか、市販薬を用意し、服用します。

3-6.適度に冷やす

強い腫れが出て痛む場合は、治療箇所を適度に冷やすことで、痛みを軽減できます。ただし、冷やしすぎると血行が滞り、傷口の治りが遅くなったり、インプラントとあごの骨がくっつきにくくなったりする可能性があります。

 

氷や保冷剤をそのままあてると冷やしすぎてしまう場合があるので、濡れタオル・冷却シート・氷や保冷剤をタオルでくるんだものを使うとよいでしょう。

4.歯科クリニックに相談した方がいいケース

インプラント後に痛みが出るのは珍しいことではありません。しかし、なかには歯科クリニックに相談した方がよいケースもあります。

 

下記に当てはまる場合は、異常があるかもしれないので、早めに歯科クリニックに相談しましょう。

4-1.鎮痛剤が効かないほど痛い

通常であればインプラント後の痛みは、鎮痛剤を使用すれば我慢できないほどではありません。鎮痛剤を使用しても効かない、痛みを我慢できない場合は、治療箇所に問題がある可能性が考えられます。無理に我慢せず、歯科クリニックで相談しましょう。

4-2.時間が経っても腫れや痛みが引かない

インプラント手術による腫れや痛みは個人差がありますが、約1~2週間で落ち着きます。時間が経過しても、痛みが軽減しない、逆に増していくといった場合は、なんらかの異常が起きている、または鎮痛剤が合わないといった可能性があります。悪化する前に、歯科医師に診てもらいましょう。

4-3.出血が長く続く

治療箇所からの出血は、通常であれば1~2日ほどでおさまります。長い間出血が止まらない、鼻血が出るといった場合は、治療した部位の周辺でトラブルが起きている可能性があります。出血の頻度・量を歯科医師に伝え、診断をあおぎましょう。

4-4.痛み・腫れ・出血以外の症状がある

痛み・腫れ・出血以外の症状がある場合は、治療箇所に問題が起きている可能性があるため、早めに歯科医師に相談しましょう。

 

主な症状としては、上あごの手術後に鼻から血や膿が出る、下あごの手術後に下唇が震える・よだれが出るなどがあげられます。また、服用している鎮痛剤や抗生剤の副作用で、下痢や湿疹が出る場合もあります。

5.インプラントの痛みはイメージよりも痛くない場合が多い

インプラントは外科手術を伴うため、痛みが大きい治療法だと思われがちです。しかし、麻酔など痛みを軽減する処置をするため、個人差はありますが、抜歯と比べて、痛みが少ないといわれています。

 

インプラント治療後は、外科手術の影響で腫れや痛みが出ますが、1~2週間ほどでおさまります。食べ物に気をつける、入浴や運動を控える、冷やすなどの方法で痛みを軽減できます。

 

時間が経過しても痛みが引かない、鎮痛剤が効かないほど痛いといった場合は、手術した場所に異常があるかもしれないので、早めに診察を受けるのをおすすめします。

 

痛みが原因でインプラントをためらう人も多くいますが、イメージよりも痛みが少ない治療法といえます。麻酔などの工夫で軽減できる場合もあるので、まずは歯科医師に相談してみましょう。

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