
- この記事の監修者
- 医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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年齢を重ねるにつれ、歯の本数は減ってしまいます。失った歯を補い、噛む機能や見た目を回復するために、インプラント治療を検討する高齢者も少なくありません。
しかし高齢者のなかには寝たきりの人も多く、「寝たきりの場合でもインプラントができるのか」と疑問を持つ人もいるのではないでしょうか?
この記事では、寝たきりでもインプラントはできるのか、どんなメリットやリスクがあるのかなど詳しく解説します。
目次
- 1.寝たきりでもインプラントはできる?
- 2.高齢者はインプラントできない場合も多い
- 2-1.あごの骨量が少ない
- 2‐2.外科手術に耐えられる体力がない
- 2‐3.持病がある
- 3.寝たきりの人がインプラントをするメリット
- 3-1.認知症を予防できる
- 3-2.全身の健康を維持できる
- 3-3.食事を楽しめる
- 3-4.気兼ねなく会話ができる
- 4.寝たきりの人がインプラントをするデメリット
- 4-1.定期メンテナンスに通うのが難しい
- 4-2.毎日のお手入れが大変である
- 4-3.費用と時間が掛かる
- 5.寝たきりの人がインプラントをする際の注意点
- 5-1.訪問診療を行っている歯科クリニックを選ぶ
- 5-2.手入れしやすいインプラントにする
- 5-3.優れた経験・スキルを持つ歯科医師を選ぶ
- 5-4.日々の手入れをしっかりする
- 5-5.インプラント情報の管理を徹底する
- 6.寝たきりでもインプラントができる場合も。まずは歯科医師とよく相談を
1.寝たきりでもインプラントはできる?

結論から 言いますと、寝たきりでもインプラントができる可能性はあります。
ただし、寝たきりの人は身体に力が入った状態になるケースが多く、食いしばりによってインプラントが歯ぐきの奥まで刺さってしまう可能性があります。
また、本人が意図しない動きをした結果、インプラントで自分の頬や唇を噛んでケガをするケースも少なくありません。
まずは歯科医師にインプラントができるか相談しましょう。
2.高齢者はインプラントできない場合も多い

寝たきりではなくても、年齢を重ねるとインプラントできない・難しいケースが少なくありません。
2-1.あごの骨量が少ない
年齢を重ねると骨の量が減少するため、インプラント体を支えるのに充分な骨量がない高齢者も少なくありません。あごの骨量が不足している場合は、骨の量を増やす処置をしてから、インプラント治療を受ける必要があります。
2‐2.外科手術に耐えられる体力がない

インプラント治療では、歯ぐきを切り開きあご骨に穴を開ける外科処置を行います。ある程度身体に負担がかかるため、体力が低いと、インプラント治療を受けられない可能性があります。
2‐3.持病がある

糖尿病や心臓病などの全身疾患にかかっている人は、免疫力が低く感染リスクが高い・傷口の治りが遅い・インプラント体とあごの骨が結合しにくいといった理由で、インプラント治療が難しいケースがあります。
高齢者は何らかの持病がある人が多く、インプラントができない場合が少なくありません。持病を治療することでインプラントができる状態まで回復する可能性があるので、まずは歯科医師と持病の主治医に相談しましょう。
3.寝たきりの人がインプラントをするメリット

寝たきりの人がインプラントをする主なメリットを紹介します。
3-1.認知症を予防できる

ものを噛むことで、脳の血流量が増え、神経活動が活発化します。歯を失ったまま放置すると、脳のへの刺激が不足し、認知症のリスクが高まります。
日本 歯科総合研究機構が発表した「歯数とアルツハイマー型認知症との関連」についての論文では、2017年4月に歯周炎または歯の欠損を理由に歯科受診した60歳以上の患者、それぞれ401万名、66万名を対象に調査。歯の本数が少ない人ほどアルツハイマー型認知症のリスクが高いことが判明しました。
インプラント治療を受け、歯の機能を回復することで、認知症リスクを軽減できる可能性があります。
3-2.全身の健康を維持できる

歯が少ないと食べ物を噛む力が落ち、食事をしても充分に消化できなくなります。その結果、栄養を充分にとれなくなったり、全身の免疫力が低下して病気になりやすくなったりする可能性があります。
インプラントで噛む力を回復することで、全身の健康を守れます。
3-3.食事を楽しめる

歯を失って噛む力が低下すると、硬いものや弾力のあるものが食べられなくなり、食事に制限ができてしまいます。
寝たきりの人は、外出が難しく、楽しみが限られます。しっかり噛めるようになれば、食事の選択の幅が広がり、食べる喜びを感じながら生活できるでしょう。
3-4.気兼ねなく会話ができる

歯が欠けているとそこから空気が漏れて発音が不明瞭になり、会話がしにくくなります。インプラント治療を受けることで、発音が安定して安心して話ができるようになるでしょう。
会話が増えた結果、脳が刺激され認知症リスクが低下する、ストレスが軽減するなどさまざまなメリットが期待できます。
4.寝たきりの人がインプラントをするデメリット

イン プラントには、認知症予防などさまざまなメリットがあります。しかし、寝たきりの人がインプラントをする場合、下記のようなデメリットもあるので要注意です。
4-1.定期メンテナンスに通うのが難しい

インプラントを安全・快適に使い続けるには、歯科クリニックでの定期メンテナンスが必須です。定期メンテナンスを受けないと、「インプラント周囲炎」やインプラントの破損といったトラブルの原因となります。
インプラント周囲炎は、歯周病によく似た病気です。歯ぐきに炎症が起き、悪化するとあごの骨が溶け、インプラントのぐらつきや脱落を引き起こします。進行スピードが非常に早いので、インプラントの脱落を防ぐには、定期メンテナンスにより早期発見しなければいけません。
寝たきりの人は歯科クリニックに行くのが難しいので、定期メンテナンスをどうするかを事前に考えてから治療を受けるようにしましょう。
4-2.毎日のお手入れが大変である

インプラント周囲炎などのトラブルを予防するには、定期メンテナンスだけでは不充分です。毎日の歯磨きを正しく行い、口の中に汚れがたまらないようにする必要があります。
寝たきりの場合、自分で歯磨きをするのが難しいケースがあるので、本人または介護者がしっかり手入れできるのかを事前に考えておきましょう。
4-3.費用と時間が掛かる

インプラントの治療費は、基本的に全額自己負担です。
また、インプラント体とあごの骨が結合するまで、3~6ヶ月ほどかかります。インプラントは、費用と時間の負担が大きい治療法といえます。
5.寝たきりの人がインプラントをする際の注意点

寝 たきりの人がインプラントをする際は、下記のような点に気をつけると、治療・メンテナンスがスムーズです。
5-1.訪問診療を行っている歯科クリニックを選ぶ

寝たきりの人は定期的にメンテナンスに通うのが難しいので、訪問診療ができる歯科クリニックを選びましょう。
インプラントの破損・脱落といったトラブルが起きた場合も、訪問診療に対応している歯科クリニックであれば、スムーズに治療できます。
5-2.手入れしやすいインプラントにする

寝たきりの人がインプラントを入れる場合は、「オーバーデンチャー」など手入れしやすいインプラント法を選択するのも方法の1つです。
オーバーデンチャーとは、最小2本のインプラント体をあごの骨に埋め込み、入れ歯を取りつけるインプラント治療です。インプラント体が歯根の代わりとなるため、通常の入れ歯よりもしっかりと噛めます。
通常のインプラントとは異なり取り外しができ、手入れが簡単です。また、失った歯が多くても少ない本数のインプラントで対応できるため、手術による心身の負担や治療費をおさえられます。
5-3.優れた経験・スキルを持つ歯科医師を選ぶ

寝たきりの人のインプラント治療は、全身の状態やメンテナンスのしにくさなど、通常のインプラント治療よりも、細やかな配慮が求められます。また、あごの骨量を増やす処置など特別な対応が必要なケースも少なくありません。
そのため、ある程度費用がかかっても、症例実績が豊富で、高い技術を持つ歯科医師を選ぶとよいでしょう。
特に高齢者のインプラント治療実績が豊富な歯科医師は、寝たきりの人のインプラントで起きやすい問題を熟知しているので、スムーズな治療が期待できます。
5-4.日々の手入れをしっかりする

本 人が寝たきりで歯磨きなどの手入れが難しい場合は、歯磨きなどの介助が必要です。手入れをしないと、インプラントやその周りに汚れがたまり、インプラント周囲炎の原因となります。
歯科医師や歯科衛生士などから適切なケア方法を学ぶと、スムーズに介護できます。
5-5.インプラント情報の管理を徹底する

インプラント治療を受けた歯科クリニック以外で、再治療・メンテナンスを受ける場合は、インプラントの種類やいつどのような治療をしたかといった情報が必須です。
インプラントの再治療やメンテナンスは、基本的に治療を受けた歯科クリニックを受診します。しかし、歯科クリニックが急に閉院・転院した、本人が遠方に引っ越したといった理由で、他の歯科クリニックに移らざるを得ない場合もあります。
寝たきりの人が再治療・メンテナンスをする場合は、基本的に家族が病院探しや予約などを行うケースが多いと考えられます。インプラント情報を記載したインプラントカードやインプラント手帳をしっかり保管し、家族も場所を把握しておきましょう。
6.寝たきりでもインプラントができる場合も。まずは歯科医師とよく相談を

寝たきりであっても、身体の状態によってはインプラントができる場合もあります。ただし、インプラントによって歯ぐきや唇のケガにつながる場合があり、さらに高齢によるあごの骨量の減少などが原因でインプラントを入れられないケースが少なくありません。
寝たきりの人がインプラントにするメリットとしては、認知症の予防や全身の健康の維持などがあります。その反面、定期メンテナンスに通うのが難しい・毎日のお手入れが大変といったデメリットも存在します。
また、インプラントができたとしても、訪問診療に対応する歯科クリニックを選ぶなど、健康な人のインプラント治療よりもさまざまな面で注意が必要です。
インプラントを希望する場合は、歯科医師とよく相談して治療を受けるか判断しましょう。









