- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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「ピエゾサージェリー」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
最新鋭の手術器具のことで、三次元の超音波振動で歯や骨を切断するために使います。
歯や骨のような固い部分のみに反応するため、その他の歯茎、血管や粘膜、神経などを傷つけずに手術することができます。
そんな器具をインプラント治療には使うことはあるのでしょうか。
今回はインプラント治療とピエゾサージェリーについてまとめました。
目次
- 1. ピエゾサージェリーとは
- 1-1.固い組織のみに反応する
- 1-2.ヤケドを防げる
- 1-3.高い操作性
- 1-4.不快な音や振動がない
- 2.インプラント治療とピエゾサージェリー
- 2-1. 最小限の骨を安全に切削することができる
- 2-2.インプラント体と骨の結合を早める
- 2-3.患者さんの負担を減らせる
- 3.ピエゾサージェリーと歯科治療
- 3-1.ピエゾサージェリーが使われる歯科治療
- 3-2.ピエゾサージェリーの注意点
- 4.ピエゾサージェリーはインプラント治療の心強い味方!
1. ピエゾサージェリーとは
ピエゾサージェリーとは、超音波振動で、歯や骨を切断する医療器具のことです。
歯や骨を削るためには従来、ドリルが使われることが多かったですが、ピエゾサージェリーはドリルよりも操作性が高く、患者さんの負担を軽くします。
1-1.固い組織のみに反応する
ピエゾサージェリーは、歯や骨などの固い組織のみに反応します。
そのため、それ以外の歯茎や粘膜などの組織を傷つけずに手術できます。
特に血管や神経を手術中に傷つけてしまうと、大きなトラブルに発展することがあります。
これまでドリルで削る際には、血管や神経を傷つけないよう、細心の注意を払うことはもちろん、高い医師の技術力が必要でしたが、ピエゾサージェリーを使えば安全性を保つことができます。
1-2.ヤケドを防げる
ドリルで歯や骨を削る際には、摩擦によるヤケドをしてしまうこともあります。
しかし、ピエゾサージェリーは超音波で削るため、ヤケドの心配はありません。
歯茎や粘膜に触れたとしても、炎症を起こしにくいです。
1-3.高い操作性
ピエゾサージェリーは操作性が高く、切削部分の長さや深さを正確にコントロールすることができます。
そのため、精密治療などへ対応しやすいのが特徴です。
1-4.不快な音や振動がない
ドリルは大きな音や振動が、患者さんへの負担となることもありますが、ピエゾサージェリーは音も振動もありません。
音や振動が苦手な方も、手術が受けやすいです。
2.インプラント治療とピエゾサージェリー
インプラント治療においても、ピエゾサージェリーが使われることがあります。
ピエゾサージェリーを使うことで、さまざまなメリットがあるからです。
具体的にどのようなメリットがあるのか紹介します。
2-1. 最小限の骨を安全に切削することができる
インプラント治療において、インプラント体を埋め込む際に、顎骨を削ります。
その際にピエゾサージェリーを使うと、最小限の骨を削ることができます。
余計に骨を削らないので、安全に治療ができます。
特にこれまで骨が少ないせいでインプラント治療ができないと言われていた方も、最小限であれば可能になるケースもあります。
以下のような骨を造成する手術の際にも、ピエゾサージェリーが使用されることもあります。
・ソケットリフト
インプラント体が上顎洞に突き抜けそうな、上顎の骨を造成する手術をソケットリフトと言います。
ピエゾサージェリーで上顎にある膜を傷つけず持ち上げて、その隙間に骨造成を行います。
・サイナスリフト
上顎の骨の高さが不足している場合には、サイナスリフトという骨造成手術が行われることがあります。
この手術でも、ピエゾサージェリーを使って上顎洞の横に穴を開け、粘膜を持ち上げ、その隙間に人工骨を填入したり、自家製骨を入れたりします。
2-2.インプラント体と骨の結合を早める
最小限にしか顎骨を削らないため、インプラント体との結合が早くなることも期待されています。
骨密度を高めることにもつながります。
2-3.患者さんの負担を減らせる
ピエゾサージェリーは操作性が良く、インプラントの手術の際にも精密な治療がしやすいため、治療時間を短縮することも可能です。
そのため、患者さんの負担を減らすことができます。
また、ドリルの音や振動も出ないため、精神的なストレスにもつながりにくいかもしれません。
3.ピエゾサージェリーと歯科治療
ピエゾサージェリーは、インプラント以外にも、歯科治療において使われることも多いです。
3-1.ピエゾサージェリーが使われる歯科治療
・親知らずの抜歯
親知らずを抜歯する際、ピエゾサージェリーを使うことがあります。
抜くのに邪魔している骨だけを少し削り取ることができます。
また、超音波の力により、親知らずを骨から浮かせることもできるため、引き抜く際にも力の負担が軽くなります。
・進行した歯周病の治療
進行した歯周病の治療の際にも、ピエゾサージェリーを使えば歯肉組織を傷つけることなく、歯垢だけを取り除けます。
出血も少ないので、術後の回復も早いです。
3-2.ピエゾサージェリーの注意点
最新鋭の医療器具であるピエゾサージェリーですが、注意点があるとすれば、「取り入れている歯科医院がまだまだ少ないこと」が挙げられます。
なくても従来の器具を使ってインプラント治療や歯科治療を行うことができるから、まだ取り入れていない歯科医院も多いでしょう。
しかし、ピエゾサージェリーには多くのメリットがあります。
安全に、そして安心して治療を受けたいという方は、治療を受ける歯科医院がピエゾサージェリーを取り入れているか、またその他の最新機器を用いて、積極的に最先端の技術や知識を取り入れた治療に取り組んでいるかなども確認するといいでしょう。
4.ピエゾサージェリーはインプラント治療の心強い味方!
ピエゾサージェリーは、超音波で固い組織だけを切り取るという最新鋭の手術器具です。
インプラント治療の際にも、最低限の顎骨を削り、そこへインプラント体を埋め込むことで、骨との結合スピードが早まり、治療期間を短くすることができます。
患者さんへの負担も少なくなることも、大きなメリットです。
また、これまで骨が少なくインプラント治療が難しいとされてきた症例においても、ピエゾサージェリーを使うことで可能になるケースもあります。
まだまだピエゾサージェリーを導入している歯科医院は日本には少ないですが、今後インプラント治療においてピエゾサージェリーは心強い味方となることでしょう。