インプラントは老後にどう影響する?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラント治療とは、あごの骨にインプラントを埋め込み、人工歯をかぶせることで、失った歯を補う治療です。インプラントは入れ歯やブリッジと比べ、しっかり噛めるようになり、見た目も自然など、多くのメリットがあります。

 

しかし、インプラントが老後に与える影響が気になる方も多いのではないでしょうか。この記事では、一般的に老後と言われる60歳以上でもインプラント治療を受けられるのか、インプラントが老後に与えるメリットやデメリット、老後のインプラント治療の注意点を解説します。

目次

1.インプラント治療は老後もできる?60歳以上でも大丈夫?

インプラント治療は、ブリッジや入れ歯と比べると大がかりな治療なので、体力的な問題から「年齢によっては難しいのでは」と考えている方も多いかもしれません。

 

しかし、平成28年歯科疾患実態調査(厚生労働省)※より、失った歯を補うためにインプラントを選択した患者の割合を年代別に見ると、上位5位は下記のようになります。

 

①65~69歳:4.6%

②70~74歳:3.7%

③75~79歳:3.4%

④55~59歳:2.8%

⑤80~84歳:2.7%

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-02.pdf

 

このことから、60歳以上は若い年代と比べてインプラント治療を受ける患者の多い年代といえるでしょう。これは、50代以降で歯を失う方が急増することと深く関係していると思われます。

 

老後のインプラント治療の例は多数あるので、60歳以上だからといってインプラント治療を諦める必要はありません。

2.老後にインプラント治療をするメリット

老後にインプラント治療をする主なメリットを7つご紹介します。

2-1.しっかり噛んで食事を楽しめる

入れ歯は、歯茎や上あごの粘膜を広く覆って使うものです。入れ歯と歯茎の隙間にものが挟まって痛みを感じる、充分に噛めないので噛み心地が以前と異なる、味・温度・食感などが伝わりにくいといったデメリットがあります。そのため、天然の歯と比べて食事を楽しむのが難しいです。

 

また、ブリッジは両隣の健康な歯を土台としているため、両隣の歯の強度が落ちると、噛む力が低下しかねません。

 

インプラントであれば、上あごの粘膜を覆う必要がなく、味・温度・食感をしっかり感じられます。天然の歯と同じように噛めるので、固い食べ物や噛みにくい食べ物も問題なく味わえるでしょう。

2-2.誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の防止

「誤嚥性肺炎」とは、飲みこむ力が弱いため、誤って肺の方に食べ物やつばが落ち、肺が細菌に感染することにより炎症が起き、発生する肺炎を指します。発熱や咳、たん、酸素不足による息苦しさなどの症状が出て、最悪の場合は亡くなってしまいます。

 

入れ歯の手入れが行き届かず不衛生な状態で使っていると、細菌が繁殖し誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

 

また、部分入れ歯を使用した場合、大きなサイズの入れ歯であっても誤嚥してしまう可能性があります。

インプラントは歯磨きを丁寧にすることで衛生的な状態を保ちやすいので、入れ歯よりも誤嚥性肺炎のリスクは少ないでしょう。

2-3.健康な他の歯を守れる

健康な歯を失い、総入れ歯になるのを防ぐにはインプラント治療が有効です。ブリッジで歯を補った場合、健康な両隣の歯を削って土台とするため、周囲の歯やあごの骨への負担が大きくなります。

 

インプラントであれば、天然の歯と同じようにあごの骨が土台となるため、周囲の歯のダメージが少なくなり、健康な歯の寿命が長くなる可能性が高いでしょう。

2-4.認知症のリスクを下げられる

噛むことは脳に刺激を与えるため、噛む回数が少なかったり、噛む力が弱かったりすると、記憶や空間認知能力といった脳機能が低下する可能性があるといわれています。このことから、認知症は歯の状態と深い関係があると考えられます。

 

事実、日本歯科医師会によると、歯を失い義歯を使用していない場合は、認知症発症リスクは最大1.9倍になるそうです。インプラントによってよく噛める状態を保つことは、認知症発症リスクの軽減につながるでしょう。

 

入れ歯やブリッジを使用している場合も、歯が抜けたままよりはしっかり噛めるので、認知症のリスクはおさえられます。

しかし、インプラントの方がさらにしっかり噛めるため、より認知症予防につながります。

2-5.管理がしやすい

入れ歯を使用する場合、ブラッシングなど口の中のケアに加え、入れ歯の清掃が必要になります。さらに、長期間入れ歯を使用しているとフィットしなくなり、何度も調整が必要となるでしょう。

 

インプラントの場合は、毎日の歯磨きを丁寧にしたり、定期的に歯科医院でメンテナンスをしたりといったシンプルな管理のため、年齢を重ねても無理なく使い続けられます。

2-6.会話を快適に楽しめる

歯を失った状態だと、タ行やサ行の発音が難しくなり、会話がスムーズにできなくなる可能性があります。

 

さらに、インプラントは入れ歯など他の歯を補う治療法と比べて、カタカタしたり、隙間ができたりといった違和感があまりありません。発音がしやすく、会話を気兼ねなく楽しめます。

 

さらに、見た目も天然の歯に近いので、大きな口を開けて笑ったり、話したりしてもはがきになりにくいでしょう。

2-7.顔の印象を若々しく保てる

意外に感じるかもしれませんが、インプラントは顔の印象を若々しく保つのにも有効です。

 

周囲の歯やあごに日常的に負荷を掛けない治療法なので、歯茎がやせるのを防ぐことができます。歯茎がやせて歯が長く見えると、老けた印象を与えてしまいます。

 

また、しっかり噛んで食べられるため、表情筋の衰えを軽減でき、たるみやしわ、頬のこけといった年齢を感じさせる変化を予防できます。

3.老後にインプラント治療をするデメリット

老後にインプラント治療をするメリットは多いですが、デメリットがないわけではありません。主なデメリットを5つご紹介します。

3-1.細菌感染のリスクがある

インプラント治療では、歯茎を切り開きあごの骨を削ってインプラントを埋め込みます。外賀的な処置を含むため、細菌感染のリスクがあります。年齢を重ねると免疫力が低下し、若い患者に比べて細菌感染のリスクが高まるので注意が必要です。

3-2.インプラントと骨が結合するのに時間がかかる

年齢を重ねると回復力や免疫力が落ちているため、手術後の傷の治りが遅い場合が多いでしょう。傷の治りに時間がかかることで、インプラントとあごの骨がなかなか結合しないと、インプラントが安定せず、不具合が出るかもしれません。

3-3.あごの骨量が少ないと治療できる歯科医師が限られる

60代以降の方は、年齢によりあごの骨量が少なくなっている可能性が高いです。場合によっては、インプラントをする前に「骨造成」「骨移植」「再生療法」などで、骨量を増やす必要があります。

 

また「オールオン4」など、骨量が不足していてもできるインプラント治療を受けるという選択肢もあります。

 

いずれにしても、骨量が充分な場合のインプラント治療と比べて、治療できる医師が限られ、時間もお金もかかる可能性が高いでしょう。

3-4.持病によってインプラント治療のリスクが高まる

加齢とともに持病をかかえる可能性が高まり、それに伴いインプラント治療のリスクも大きくなります。

 

特に糖尿病や高血圧、心疾患、骨粗鬆症は、インプラント治療のリスクが高まる病気として知られています。歯科医師と持病の担当医が連携することで、インプラント治療のリスクを軽減することもできるので、まずは医師に相談するのをおすすめします。

3-5.保険適用の治療に比べて費用・時間がかかる

インプラント治療は、保険適用外の自費診療のため、入れ歯やブリッジといった保険適用される治療と比べて、治療費は高額になります。

 

また、あごの骨にインプラントを埋め込み定着するのを待って人工歯を装着するため、治療期間が長くかかります。

 

しかし、インプラントは、適切な治療やメンテナンスをすれば長く使用できるので、トータルで考えると保険診療よりも負担が少ない傾向にあります。

4.老後にインプラント治療を受ける際の注意点

老後にインプラント治療を受ける場合は、若いころとは違った注意点があります。主な注意点は下記の3つです。

4-1.難易度の高い治療ができる歯科医師を選ぶ

年齢を重ねると、細菌感染のリスクが高まる、あごの骨量が充分でないなどの理由で、インプラント治療の難易度が上がるケースが少なくありません。

 

感染リスクをおさえる技術を持ち、あごの骨の増やす治療にも対応できる歯科医師であれば、インプラント治療の成功率は高まります。

 

特に高齢の患者のインプラント治療の経験が豊富な歯科医師であれば、より高齢者に適した治療を受けられるでしょう。

4-2.介護が必要または通院が困難になったときの対策

高齢者は将来的に、介護が必要となったり、通院が困難になったりするリスクがあります。インプラントを長期間にわたり使い続けるには、治療後の定期メンテナンスが不可欠です。

 

通院が難しくなり、メンテナンスを受けられなくなると、歯周病に似た症状の「インプラント周囲炎」にかかり、最終的には歯を失ってしまう可能性もあります。

 

治療を受ける際は、医者が患者の自宅等へ赴き診療する「訪問診療」などの対策を講じている歯科医師を選ぶと、長く安心してインプラントを使い続けられます。

4-3.インプラント情報の管理

インプラントのメンテナンスや再治療は、通常は治療を受けた歯科医院で行います。しかし、転居などなんらかの事情で歯科医院を変えざるを得ないケースもあるかもしれません。インプラント情報をしっかり管理していないと、他の医院での診察がスムーズに進まない場合があります。

 

年齢を重ねるにつれ、家族が付き添いや手続きをする場面が増えますので、「インプラントカード」や「インプラント手帳」といったインプラント治療の詳細を記載した書類を家族にもわかる場所に保管しておきましょう。

5.インプラント治療で老後の生活の質を高めよう

一般的に老後と呼ばれる60歳以上になっても、健康状態などに問題がなければ、インプラント治療を受けられる可能性は高いです。

 

インプラント治療を受けることで、しっかり噛んで食事ができる、誤嚥性肺炎や認知症のリスクを下げられるなどさまざまなメリットがあり、生活の質の向上につながるでしょう。

 

インプラントには細菌感染などのリスクもありますが、腕のよい歯科医師を選ぶと、成功率を上げられます。

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