- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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近年、歯科医療技術は驚異的な進歩を遂げています。
その中でも特に注目されているのが、インプラント治療です。
何らかの事情で失った歯を、歯の機能はもちろん、見た目も自分の歯のように取り戻すことのできる治療です。
人工的な歯根を埋め込み、その上に人工歯を取り付けるので、従来欠損歯の治療として使われてきた入れ歯やブリッジ治療よりも、天然歯のような感覚で使えます。
そのインプラント治療の中でも、「ジルコニアインプラント」と呼ばれる治療法をご存じでしょうか。
ジルコニアという素材を用いた、新しい、最先端の技術の詰まった治療です。
今回は多くの人々の関心を集めている「ジルコニアインプラント」を紹介します。
目次
- 1.ジルコニアインプラントとは
- 1-1.ジルコニアとは
- 2.ジルコニアインプラントのメリット・デメリット
- 2-1.ジルコニアインプラントのメリット
- 2-2.ジルコニアインプラントのデメリット
- 3.ジルコニアインプラントの治療を受けたいとき
- 3-1.経験豊富な医師のいる歯科医院を選ぶ
- 3-2.定期的なメンテナンスを受ける
- 3-3.生活習慣の見直しをする
- 4.自分に合った最適な治療法の選択を
1.ジルコニアインプラントとは
一般的にインプラント治療で人工歯根として顎骨に埋め込まれる“インプラント体”はチタン素材を使われることが多いです。
チタンは金属の一種ですが、生体親和性が高く、人体に異物として認識されにくいものです。
空気に触れると酸化皮膜を形成し、金属イオンが溶け出しにくいため、チタンは金属アレルギーを起こしにくい素材として知られています。
しかし、絶対に金属アレルギーを起こさないというわけではありません。
やはり金属の一種であるため、顎骨の中に埋め込む、人工歯根として取り扱うのが心配だという方もいるでしょう。
そこで誕生したのが「ジルコニアインプラント」です。
ジルコニアインプラントは、名前の通り、ジルコニアという素材を使ったインプラント治療のことを言います。
1-1.ジルコニアとは
ジルコニアとは、酸化ジルコニウムのことであり、非常に硬くて耐久性が高い材料です。
この特性から、航空宇宙や医療などの分野で幅広く使用されています。
また、生体親和性が高く、金属アレルギーを持つ患者にも適しています。
そのため、歯科医療においても、ジルコニアは歯冠やブリッジなどの補綴材料として長年使用されてきました。
それをインプラントの素材にも使ったのが、ジルコニアインプラントです。
2.ジルコニアインプラントのメリット・デメリット
ジルコニアインプラントのメリット、デメリットはどのような点にあるでしょうか。
2-1.ジルコニアインプラントのメリット
【金属アレルギーを起こさず、安全性に優れている】
ジルコニアインプラントの何よりもメリットは、金属を使用せず、アレルギー反応のリスクが低い点だと言えるでしょう。
また、体調不良の元にもなりうる、口腔内ガルバニー電流が発生しません。
体に優しい素材であるため、安全性が高いと言えます。
【強度に優れている】
ジルコニアは非常に硬く、強度が高い特性を持っています。
その強度は金属であるチタンに匹敵します。
そのため、顎骨に埋めたジルコニアで作られたインプラント体は、噛む力や負荷に耐えることができ、長期間安定した治療効果が期待できます。
【審美性に優れている】
ジルコニアは金属色をしておらず、フルジルコニアの場合は白色であり、天然歯に近い見た目の色です。
そのため、治療後の審美性が高いところもメリットの1つ。
金属の銀色が見えてしまうことがないので、自然な笑顔を取り戻すことができるでしょう。
【インプラント周囲炎を起こしにくい】
ジルコニアは表面が滑らかでプラークが付着しにくいため、インプラント周囲炎を起こしにくいとされています。
これにより、治療後の歯周病リスクが低下し、インプラントの寿命が延びる可能性があります。
【生体親和性が高い】
チタンも生体親和性が高いですが、ジルコニアも生体親和性が高く、周囲組織との親和性が優れています。
これにより、インプラントの組織への適合性が向上し、治療後の治癒がスムーズに進むことが期待されます。
2-2.ジルコニアインプラントのデメリット
【費用が高め】
ジルコニアインプラントは製造コストが高く、チタン製のインプラントと比較して治療費が高額になる場合があります。
経済的な負担が大きいので、注意する必要があります。
【対応できない症例がある】
ジルコニアインプラントはまだ治療の歴史が短く、現時点では対応できない症例も存在します。
特殊なケースや他の種類のインプラントとの適合性については、慎重な検討が必要です。
3.ジルコニアインプラントの治療を受けたいとき
ジルコニアインプラント治療を受けたいと考えている方は、安全に受けるためにも以下の点について注意してみましょう。
3-1.経験豊富な医師のいる歯科医院を選ぶ
ジルコニアインプラント治療を受ける際は、経験豊富な歯科医院を選ぶことが重要です。
インプラント治療においてもそうですが、高度な治療となるため、医師の技術力や経験に左右されてしまう治療です。
適切な診断と治療計画を立てられ、かつ患者にとって信頼できる医師との十分な相談を行った上で受けましょう。
ジルコニアインプラントに対応しているかどうかも、事前に聞いておくといいでしょう。
3-2.定期的なメンテナンスを受ける
インプラント治療後は、定期的な歯科検診とメンテナンスが重要です。
インプラント周囲炎になりにくいジルコニアインプラントですが、やはりインプラントだけでなく、口内環境を良好に保つためには適切な歯磨きや歯間清掃が重要です。
日々のケアが間違っていないか、インプラントに不具合がないかを必ずメンテナンスで確認してもらいましょう。
3-3.生活習慣の見直しをする
ジルコニアインプラントだけでなく、一般的なインプラント治療も同じですが、治療後は食生活や喫煙などの生活習慣にも注意が必要です。
健康的な生活を送ることで、インプラントの寿命を延ばすことができます。
4.自分に合った最適な治療法の選択を
ジルコニアインプラントは、金属アレルギーのリスクが低い、強度や審美性に優れるなど多くのメリットがあります。
しかし、費用が高く、全ての症例に対応できるわけではありません。
患者は自身の状況や要望を考慮し、歯科医師との相談の上、最適な治療法を選択することが重要です。