
- この記事の監修者
- 医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療では、手術を行います。手術をすることから、入院が必要なイメージがあるかもしれません。
「家事や育児があるので入院できない」「仕事が休めないから入院は避けたい」といったように、入院が難しいことが原因で、インプラント治療をためらっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、インプラント手術に入院が必要かどうか・必要なケース・入院の注意点・手術後に気をつけたいことを解説します。
目次
- 1.インプラント手術は基本的に入院の必要はない
- 2.インプラント手術で入院が必要な場合とは
- 2‐1.インプラント手術以外の治療で入院が必要である
- 2‐2.手術中に大量出血する可能性がある
- 2‐3.全身麻酔をする
- 2‐4.全身疾患がある
- 2‐5.インプラント手術への恐怖・不安が大きく安静が必要である
- 3.インプラント手術で入院する場合の注意点
- 3‐1.入院費用がかかる
- 3‐2.入院できる医療機関が限られている
- 4.インプラント手術直後の注意点
- 4‐1.食事
- 4‐2.運動
- 4‐3.入浴
- 4‐4.飲酒・喫煙
- 4‐5.歯磨き・うがい
- 4‐6.処方薬
- 5.インプラント手術は基本的に入院不要!心配な場合は歯科医師に相談しよう
1.インプラント手術は基本的に入院の必要はない

結論から言いますと、通常であればインプラント手術のために入院する必要はありません。
インプラント手術は、歯ぐきを切り開いてあごの骨にインプラント体を埋め込み、歯ぐきを縫い合わせる手術です。
手術時間は、患者の状態やインプラントを入れる位置などによって異なりますが、1本入れる場合、30分前後が目安です。インプラントを入れる歯が1本増えるごとに、20分間ほど手術時間が長くなります。あごの骨量が不足しており、骨を補う「骨造成」という処置が必要な場合は、1本あたり60分ほどかかります。
インプラント手術時は通常、痛みを取りたい部分の感覚を失わせる「局所麻酔」を打ちますが、手術から1~2時間程度で効果がなくなります。
このように、インプラントを入れる本数にもよりますが、インプラント手術は麻酔が切れる時間を含めても数時間で終わります。1日安静にするといった行動の制限はありますが、すぐに日常生活に復帰できる治療法です。
仕事や小さな子どもの育児などで入院が難しくても、多くの場合は日帰りでインプラント治療を受けられます。
2.インプラント手術で入院が必要な場合とは

インプラント手術は日帰りで受けられる手術ですが、患者の状態によっては入院が必要な場合もあります。代表的な6つのケースを紹介します。
2‐1.インプラント手術以外の治療で入院が必要である

歯科以外の治療で入院が必要な場合は、入院してインプラント手術をします。例えば、事故に遭ってケガを負って歯も失い、入院してケガの手術を行い、入院先でインプラント手術を受ける場合を指します。
ただし、事故が原因で歯を失っても、他に治療が必要なケガなどがなければ、基本的に入院はしません。
2‐2.手術中に大量出血する可能性がある

インプラント手術は、歯ぐきを切開するため出血を伴います。通常であれば、入院が必要なほど大量に出血する手術ではありません。
しかし、患者の状態によっては大量出血のリスクがあるため、出血を処置するために入院します。出血が多くなる主な原因として、「肝機能障害」と「抗血栓療法」があります。
肝機能障害になると、肝臓でつくられる血液を固める働きを持つたんぱく質が減少し、血が止まりにくくなります。
抗血栓療法は、血の塊である血栓ができにくくする治療です。治療中は、血液がサラサラになるため、傷口から出血しやすい状態です。
手術後の出血が多いと身体の中の血液量が減り、「循環血液量減少性ショック」が起こる場合があります。身体の中の血液量が減ることで臓器に十分な酸素が届かず、複数の臓器の働きが低下する「多臓器不全」を起こし、生命の危機に陥る可能性があるので要注意です。
また、出血が多いと感染リスクが高まり、傷口の治りやインプラント体とあごの骨の結合の遅れにつながる可能性があります。
2‐3.全身麻酔をする

インプラント手術ではほとんどの場合、局所麻酔を打ちます。しかし、全身疾患や障害のある患者の場合は、全身麻酔を選択する場合もあります。
全身麻酔は、脳に作用する麻酔薬を使うことで、完全に意識がない深い睡眠状態にする麻酔です。手術による痛みだけではなく不安・恐怖も全く感じず、身体も動きません。
全身疾患や障害のある患者は、手術中に姿勢や口を開けた状態を維持できない、意思の疎通ができないといった問題によって、手術中の管理が難しくなる可能性があります。
全身麻酔をすることで行動をおさえ、スムーズにインプラント手術ができるようになります。
しかし、全身麻酔は身体へのダメージが大きく、回復を待つために入院が必要です。
2‐4.全身疾患がある

糖尿病・骨粗しょう症・高血圧などの全身疾患がある場合、体力や免疫力が低く、インプラント手術によるリスクが高いといわれています。さらに、インプラント体とあごの骨の結合がスムーズに進まない傾向にあります。
全身疾患があっても多くの場合、インプラント手術を受けられます。しかし、症状が重い場合は、手術中・手術後の急な体調変化に備え、入院して術後管理を徹底しなければいけません。
先に病気の治療をしたり服用している薬を控えたりと、何らかの対策が必要なこともあるので、まずは歯科クリニックに相談しましょう。
2‐5.インプラント手術への恐怖・不安が大きく安静が必要である

インプラント手術は、歯ぐきを切開してあごの骨にドリルで穴を開けるため、恐怖・不安を感じる患者は少なくありません。局所麻酔を打ってインプラント手術を受ける場合は、ドリルの音や歯科医師の話し声など周りの音が聞こえ、ドリルの振動など治療による感触も伝わります。
その結果、大きなストレスを感じ、自律神経が乱れてショック症状になるケースもあります。
極度に緊張している・精神疾患がある・自律神経に関する疾患がある・痛みに弱いといった場合は、手術後に心身の安静が必要になります。
このようなケースでは、麻酔薬でほぼ眠っている状態にして緊張を和らげる「静脈内鎮静法」や全身麻酔を行います。しかし、麻酔の効果が切れた後も精神的に不安定であれば、入院して様子を見る必要があるでしょう。
3.インプラント手術で入院する場合の注意点

インプラント手術で入院する場合は、下記の3点に注意しましょう。
3‐1.入院費用がかかる

入院する場合はインプラント手術の費用の他に、入院費も追加でかかります。インプラント治療は基本的に全額自己負担です。医療機関によって入院費用が異なりますが、相場は1泊2日で3万円前後、2泊3日で6万円前後です。
インプラント手術による入院日数は、1泊2日~2泊3日と短期間です。しかし、インプラント治療が1本あたり30万~40万円なので、入院費用も加算するとかなりの高額になります。
ちなみに、インプラント手術での全身麻酔も、基本的に全額自己負担です。2時間で、6万~7円万くらいが相場です。
入院が必要になる場合は、インプラント治療・入院費・麻酔費用など、トータルの金額で見積もりをもらうようにしましょう。
3‐2.入院できる医療機関が限られている

インプラント手術そのものに対応している歯科クリニックはたくさんありますが、入院設備のある医療機関は限られています。入院が必要な場合は、医療機関を見つけるのに苦労するかもしれません。早めに探し始めるのをおすすめします。
4.インプラント手術直後の注意点

インプラント手術は多くの場合、入院する必要がありません。しかし、麻酔の影響や手術でできた傷によるダメージがあるため、手術直後の過ごし方には注意が必要です。
ここでは、インプラント手術から約1週間の主な注意点を紹介します。
4‐1.食事

インプラント手術が終わってからも、局所麻酔の効果は1~2時間続きます。麻酔が効いていると感覚が鈍くなり、舌・唇・頬を噛んでしまう、熱いものによってやけどしてしまうといったリスクがあります。麻酔の効果が切れるまで、食事は控えましょう。
硬いものを食べると手術した場所に負担がかかり、傷口の開き・痛み・腫れ・出血の原因となります。おかゆ・うどん・スープ・ゼリーなど柔らかいものを中心に食べるようにします。辛いもの・甘いもの。粘り気のあるものも負担になるため避けましょう。
4‐2.運動

運動によって血行が促進されると、炎症が悪化して痛み・腫れが強くなる場合があります。手術当日は、家で安静にしましょう。
手術から2~3日くらいは激しい運動はもちろん、ウォーキングをはじめとする軽い運動も控えるのをおすすめします。
4‐3.入浴

入浴も運動と同じく、身体の血の巡りを良くすることにより、腫れや痛みを悪化させる可能性があります。手術当日、できれば手術から2~3日は、湯船に浸からずに軽いシャワーですませましょう。
サウナも血行促進作用があるため、手術からしばらくは入らないようにしてください。
4‐4.飲酒・喫煙

アルコールには血行を促進する作用があり、痛み・腫れ・出血の原因になります。症状が強くなるのを避けるため、手術から1~2週間はお酒を飲まないようにしましょう。
喫煙もインプラント手術後に悪影響を与えます。タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させ、血流を妨げる作用があります。血流が悪化すると、傷口の回復に必要な酸素や栄養が届きにくくなり、治りが遅くなります。さらに、免疫力の低下により感染リスクが高まるため、手術直後は禁煙しましょう。
4‐5.歯磨き・うがい

歯ブラシの刺激により傷の治りが遅れる可能性があるため、手術直後から10日くらいは手術した場所の歯磨きは避けましょう。
ただし、口の中に汚れが溜まると感染リスクが高まるので、歯科医師の指示に従って、手術翌日くらいから、手術した場所以外の歯磨きを再開します。
また、うがいも手術した場所への刺激となるので注意が必要です。手術から3日くらいは、強いうがいは控えましょう。
4‐6.処方薬

インプラント手術後は、痛み止め・抗炎症剤・抗生物質などの薬が処方されます。処方された薬は、歯科医師の指示通りに服用しましょう。
痛み・腫れがないからといって服用しないと、炎症が悪化するかもしれません。また抗生物質を飲み切らないと、薬に耐性を持ち抗生物質が効かない「耐性菌」が生まれる可能性があります。
5.インプラント手術は基本的に入院不要!心配な場合は歯科医師に相談しよう

インプラント手術は数時間で終わるため、基本的には入院の必要はありません。
しかし、インプラント手術以外の治療で入院が必要である・手術中に大量出血する可能性がある・全身麻酔をするなどの理由により、入院が必要なケースもあります。まずは歯科医師に相談しましょう。
入院する場合は、費用がかかり、対応できる医療機関が少ないので、注意が必要です。
インプラント手術直後は、麻酔の影響や手術によるダメージがあります。食事・運動・入浴などの注意事項を守り、トラブルを防ぎましょう。









