
- この記事の監修者
- 医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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目次
- 1.インプラントの感染症リスクが高い理由
- 1-1.歯根膜がない
- 1-2.インプラントと歯肉の間にすき間がある
- 1-3.インプラント体の表面がザラザラしている
- 2.細菌感染によって起きるインプラント周囲炎とは
- 3.インプラント周囲炎の治療法
- 3-1.あごの骨が破壊されていない場合
- 3-2.あごの骨の破壊が進んでいる場合
- 4.インプラント周囲炎の治療費はどれくらい?
- 5.インプラント周囲炎を防ぐ方法
- 5-1.歯周病治療をしてからインプラントを入れる
- 5-2.定期メンテナンスに必ず通う
- 5-3.毎日のセルフケアをしっかりする
- 5-4.禁煙する
- 5-5.インプラント周囲炎対策に力を入れている歯科クリニックを選ぶ
- 6.インプラントは感染リスクが高い!インプラント周囲炎に注意しよう
1.インプラントの感染症リスクが高い理由

インプラントは、歯根の代わりとなるインプラント体をあごの骨に埋め込み、その上に人工歯をかぶせて固定する治療法です。天然歯と同じような見た目で、噛む機能も優れていますが、下記のような違いから細菌感染症リスクが高くなります。
1‐1.歯根膜がない

「歯根膜(しこんまく)」とは、歯根とあごの骨の間にある薄い膜を指します。歯根膜には、外部から侵入した病原体などを排除する免疫細胞が存在します。
さらに血管や神経が通っており、細菌への抵抗力を保つのに不可欠な栄養を歯ぐきやあごの骨に送る役割を担っています。
しかし、インプラントには歯根膜がありません。インプラント体とあごの骨が直接結合しているため、口の中の細菌があごの骨に移動しやすく、さらに細菌に対する抵抗力も弱い状態です。そのため天然歯と比べて、感染リスクが高いといえます。
また、神経がないので痛みを感じにくく、感染による症状が進行するまで異変に気がつかないケースがあります。
1‐2.インプラントと歯肉の間にすき間がある

天然歯は、歯と歯肉が非常に強く結びついていて、細菌が侵入しにくい構造になっています。
しかし、インプラントは天然歯と比べて歯肉との結びつきが弱く、すき間があるため、細菌が侵入しやすい傾向にあります。
特に、インプラントが不適切な位置に埋め込まれていたり、加齢などによって歯ぐきが縮んだりしている場合は、すき間ができやすいので要注意です。
1‐3.インプラント体の表面がザラザラしている

インプラント体の表面は、あごの骨と結合しやすいよう、ザラザラとした状態に加工されます。
天然歯の歯根と比べて表面の凹凸が多いため、歯垢などの汚れが溜まりやすく、完全に取り除くのが難しいといわれています。そのため、細菌が増殖し、感染リスクが高くなります。
2.細菌感染によって起きるインプラント周囲炎とは

イン プラントの感染症の代表的なものが「インプラント周囲炎」です。インプラント周囲炎は、歯周病とよく似た病気で、インプラントが使えなくなる主な原因のひとつです。
初期は、インプラント周囲の歯肉が赤く腫れるなど、ごく軽い症状です。放置すると次第に症状が進行し、出血や膿が見られるようになったり、口臭が強くなったりします。
さらに進行すると、歯ぐきやあごの骨が破壊されます。あごの骨の破壊が進むとインプラント体を支えきれなくなり、ぐらつくようになります。最終的には、インプラントが脱落してしまう可能性があります。
また、あごの骨が大幅に減少すると、将来的に新しいインプラントを入れることが困難になる場合もあります。
3.インプラント周囲炎の治療法
イン プラント周囲炎の治療は、症状の進行度によって異なります。あごの骨が破壊されていない場合とあごの骨の破壊が進んでいる場合の2パターンにわけて解説します。
3‐1.あごの骨が破壊されていない場合

インプラント周囲炎の原因となる歯周病菌を減らすために、歯科クリニックでクリーニングを受けます。
クリーニングでは、歯科衛生士などの専門家が専用の器具で、インプラント周囲の歯垢や歯石を丁寧に取り除きます。歯垢や歯石には多くの細菌が含まれており、取り除くことで、口の中の存在する細菌の量を減らせます。特に歯石は通常の歯磨きでは落とせないため、クリーニングが効果的です。
しかし、口の中を清潔な状態に保つには、日々のセルフケアも大切です。歯科衛生士などから指導を受け、日々のお手入れをしっかり行いましょう。
場合によっては、人工歯などのパーツを取り外し、歯石の除去や洗浄を行います
また、腫れや痛みなどの症状が強い場合は、抗菌剤などを使用するケースもあります。
3‐2.あごの骨の破壊が進んでいる場合

あごの骨の破壊が進んでいる場合やクリーニングなどの処置をしても改善しない場合は、切除療法や再生療法といった外科治療をします。
(1)切除療法
歯肉を切開して、直接インプラント体の表面を磨いて汚れを取り除く・薬剤でインプラント体の表面を消毒する・炎症を起こしている組織を切除するといった治療を行います。
(2)再生療法
インプラント周囲炎によって破壊された歯肉やあごの骨を再生する治療法です。代表的な治療法として「GTR法」があります。
GTR法とは、患者本人の骨や人工骨を移植してあごの骨量を増やし、「メンブレン」と呼ばれる膜で移植した部分を覆うことで、あごの骨の再生を促進する治療法です。
症状が重く、インプラント体を支えるのに十分な量まで骨量を回復できない場合は、インプラントを取り除かなければいけません。
4.インプラント周囲炎の治療費はどれくらい?

イ ンプラントは、基本的に保険適用になりません。インプラントを自由診療で入れた場合、インプラント周囲炎の治療も自由診療となり、治療費は全額自己負担です。
症状の重さによって治療費は異なりますが、クリーニングや消毒だけで対応できる場合は数千円、クリーニングと投薬どちらも必要な場合は数万円、外科手術が必要な場合は10万円〜50万円ほどかかる場合があります。自由診療のため歯科クリニックによって費用が異なるので、見積もりをもらい確認しましょう。
インプラントは、「医療費控除」が適用される場合があります。医療費控除とは、その年に支払った医療費が一定額を超えた場合、所得金額から差し引くことができる制度のことです。
所得税や住民税は所得額によって決まるので、医療費控除を受けると税金が安くなり、金銭的な負担を軽減できます。
医療費控除を受けるには確定申告が必要なので、忘れずに手続きするようにしましょう。
5.インプラント周囲炎を防ぐ方法

インプラ ント周囲炎にかかると、インプラントが使えなくなるリスクがあり、治療費もかかります。
インプラント周囲炎は、初期のうちは自覚症状があまりなく、進行が早いため、予防が大切です。主な予防法を紹介します。
5‐1.歯周病治療をしてからインプラントを入れる

インプラント周囲炎の原因となるのは、歯周病と同じく歯周病菌です。そのため、歯周病が発症している状態でインプラントを入れると、口の中の歯周病菌が多いため、インプラント周囲炎のリスクが高まります。
歯周病治療を行い症状や口の中の衛生状態が改善してからインプラントを入れることで、インプラント周囲炎のリスクを軽減できます。
5‐2.定期メンテナンスに必ず通う

定期メンテナンスでは、歯科医師による診察・レントゲンなどによる口の中やあごの骨の検査・クリーニングなどを行います。
診察を受けることで、インプラント周囲炎が発症したとしても、早期に発見・治療できるため、インプラントが使えなくなるといった深刻な事態を防げます。
さらに定期的にクリーニングを受け、歯垢・歯石を徹底的に取り除くことで、口の中の歯周病菌が減少し、インプラント周囲炎のリスクを軽減できます。
5‐3.毎日のセルフケアをしっかりする

数カ月に1回の歯科クリニックでのクリーニングだけでは、細菌の増殖をおさえられません。毎日の歯磨きを丁寧に行うことが大切です。
特にインプラントと歯肉の境目は細菌が溜まりやすいので、歯ブラシを45度の角度であて、汚れをかきだすように丁寧にブラッシングする必要があります。
通常の歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスなどのケア用品を使用すると、通常の歯磨きで落ちにくい汚れも除去でき、より効果的です。
5‐4.禁煙する

喫煙は細菌感染のリスクを高めるので、できるだけ控えましょう。
タバコにはニコチンなどの有害物質が含まれています。ニコチンは血管を収縮させる作用がある成分です。喫煙するとニコチンの働きにより血流が悪くなり、必要な酸素・栄養が行き届かなくなります。その結果、免疫力が低下して、感染・炎症を起こしやすくなります。
5‐5.インプラント周囲炎対策に力を入れている歯科クリニックを選ぶ

定期メンテナンスの内容は、歯科クリニックによってさまざまです。なかには、マイクロスコープで精密に確認しながらクリーニングをするなど、より徹底したメンテナンスを実施している歯科クリニックもあります。
インプラント周囲炎のリスクをおさえるには、予防に力を入れている歯科クリニックを選ぶのも方法のひとつです。
特に、歯周病にかかったことがある・糖尿病や貧血などで抵抗力が低下しているなど、インプラント周囲炎になりやすい要因がある場合は、インプラント周囲炎対策に力を入れている歯科クリニックがおすすめです。
6.インプラントは感染リスクが高い!インプラント周囲炎に注意しよう

インプラントは、失った歯の機能や見た目を大幅に回復できる治療法です。しかし、天然歯よりも感染症リスクが高いというデメリットがあります。
感染リスクが高い理由としては、歯根膜がない・インプラント体と歯肉の間にすき間がある・インプラント体の表面がザラザラしていて歯垢が付着しやすいなどがあげられます。
インプラントが歯周病菌に感染するとインプラント周囲炎になり、重症化すると歯肉やあごの骨が破壊されます。クリーニングや薬の使用、外科治療などの治療法はありますが、あごの骨が大幅に失われると、インプラントを使えなくなるかもしれません。
細菌感染を防ぎ、インプラント周囲炎を予防するには、歯周病治療をしてからインプラントを入れる・定期メンテナンスに必ず通う・毎日のセルフケアをしっかり行うといった対策が効果的です。









