- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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根管治療は、痛みが出る治療というイメージがありませんか?
また、痛みが長く続いて辛い…というようなイメージもあるかもしれません。
しかし、根管治療のやり方によっては、痛みを最小限に抑えて治療を終えることもできるのです。
そこで今回は、根管治療の痛みを最小限にする方法について解説していきます。
なるべく痛みがない方法で治療をしたいと思っている方は、是非この記事を参考にして下さい。
目次
- 1 どうして根管治療で痛みが出るの?
- 1−1:根管治療が不十分
- 1−2:根尖性歯周炎になっている
- 1−3:根っこに圧力がかかっている
- 2 神経を取った後は麻酔をしなくても痛くない?
- 3 根管治療の痛みを最小限にする方法
- 3−1:治療中は麻酔をする
- 3−2:唾液が歯に接触しないようにする
- 3−3:根管治療の回数を少なくする
- 3−4:途中で治療を放置しない
- 4 痛みを最小限にして根管治療を終わらせよう!
1 どうして根管治療で痛みが出るの?
根管治療で、ズキズキとした痛みや噛んだ時に痛みが出る理由は、次の2つのことが原因になっている場合があります。
1−1:根管治療が不十分
根管治療が十分にできていない、根の中にいる虫歯菌たちが活発になっていると痛みが出やすいです。
根管治療は文字通り、神経が通っている管(くだ)の中で細菌に汚染されている部分を取り除く治療法です。
しかし、根管内の治療が不十分のまま治療を終えて被せ物を入れると、根管内にいる細菌が増殖して痛みを引き起こしてしまいます。
また、虫歯が神経まで進んでいる場合には、歯の外側にある歯根膜という膜が刺激されることがあります。
歯根膜は、噛んだ時に感じる固いや柔らかいといった感覚や痛みの感覚の機能があります。
虫歯が根の奥まで進行したことによって、歯根膜が炎症を起こして痛みを感じやすいです。
1−2:根尖性歯周炎になっている
根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)とは、根管内の細菌が増殖して感染する範囲が骨まで広がって、歯を支えている骨を溶かしてしまう病気のことです。
根尖性歯周炎になると歯の根の先に膿が溜まって、歯茎が赤く腫れ、痛みが出るようになります。
細菌感染している範囲によっては、根管治療を行うことで腫れや痛みを改善することが可能です。
しかし、骨が溶けている範囲や細菌感染を起こしている状態が深刻化している場合には、溜まっている膿の袋を外側から取る、歯根端切除術という外科手術が必要になるケースもあります。
1−3:根っこに圧力がかかっている
根管内をキレイにした後は、根管内の隙間を埋めていく処置を行います。
それが、根管充填という方法です。
根管充填では、専用の材料で根管内を隙間なく埋めていくことで、細菌の侵入を防いで再発するリスクを減らすのが目的です。
また、根管治療を成功させるためには、根管内の無菌化が重要ですが、根管内は複雑になっていて細菌を取り除くことにも限界があります。
そこで、根管内を無菌化に近い環境にした後、専用の材料を入れることで、取り残こした細菌が活動できないようにしていきます。
根管充填では細菌を取り除く処置とは違い、根管内を隙間なく埋めていくため、一時的に根の先に圧力がかかって、ズーンっとした鈍い痛みを感じることがあります。
ただ、この場合には、根管内に詰めた薬剤が2〜3日で馴染んでくるのと同時に痛みがなくなってきます。
2 神経を取った後は麻酔をしなくても痛くない?
「歯の中の神経を取る処置をしたから、根管治療は麻酔なしで行っても痛くない」と主張する歯科医師がいます。
しかし実際には、神経を取っても根管治療中に痛みが出たり、根管治療後に痛みが出るケースが多くあります。
歯の周辺には、血管や神経などさまざまな組織が存在して、歯の中の神経を除去しても、歯の周りには知覚があるので、痛みを感じます。
そういった知識がないまま根管治療を行っている歯科医院があり、根管治療が痛すぎて途中で治療を止めた結果、残せたはずの歯を抜かなければいけない状態になった方も少なくないでしょう。
3 根管治療の痛みを最小限にする「4つの方法」
ここでは、根管治療の痛みを最小限にする4つの方法を紹介していきます。
3−1:治療中は麻酔をする
前述したように、歯の中の神経を取った状態でも、歯の周辺には知覚があり痛みを感じます。
根管治療中は、リーマーという細い針金のような器具で、細菌に汚染された部分を取っていきます。
炎症を起こしている部分をリーマーで刺激することになるため、治療中に痛みを感じるケースも少なくありません。
そのため、根管治療の時には、麻酔をしてくれる歯科医院を選びましょう。
麻酔をするときの痛みも苦手という方は、電動機器の麻酔や笑気吸入鎮静法といった、リラックスした状態で治療を受けられる設備を整えた歯科医院がオススメです。
痛みを感じながらの治療ほど、辛いものはありません。
痛みを訴えても麻酔をしてもらえない場合には、他の歯科医院にする勇気も必要です。
3−2:唾液が歯に接触しないようにする
唾液の中には、良くも悪くも数多くの細菌が存在します。
根管治療中に唾液が根管内に入ってしまう環境では、どんなに汚染された部分を取り除いても、細菌感染を引き起こして痛みが出やすいです。
唾液が根管内に入らない状態で根管治療をすれば、根尖性歯周炎や再治療になりにくいという報告があります。※1
それほど、唾液が歯の中に入らない状態で、治療を進めることが重要だということです。
唾液が歯の中に入らないようにするためには、ラバーダム防湿を行います。
治療する前、歯を削る段階から治療する歯にゴムでできているラバーで口元を覆って、唾液が歯に接触しないようにするのが、ラバーダム防湿です。
保険の根管治療では、ラバーダムを使う歯科医院はほとんどありません。
ラバーダムを使用する時は、手間と材料費がかかってしまうからです。
しかし、ラバーダムを使用している歯科医院は、唾液が歯に接触すると根管治療の成功率が下がってしまったり、治療完了後に痛みが再発したりするのを理解している証拠です。
虫歯の治療を受ける前に、歯科医院のホームページを見たり、歯科医師に直接聞いたりして、根管治療でラバーダムを使用しているのかを確認しておきましょう。
3−3:根管治療の回数を少なくする
根管治療の治療期間が長引くほど、根管内にいる細菌が数を増やしながら、汚染する範囲を拡大していきます。
その結果、歯茎が腫れたり、強い痛みが出たりと炎症が酷くなる原因になります。
根管治療は、回数を少なして、短期間で終わらせるのが重要です。
そのため、保険の根管治療では、最善を尽くすことに限界があります。
保険治療では、使う材料や時間を国に制限されていて、どうしても長期的な治療になってしまうからです。
根管治療をしても痛みが続いている、治療した歯が痛むようになってきたといった症状は、保険の根管治療を受けている可能性が高いです。
一方で自費の根管治療は、マイクロスコープを使用する歯科医院がほとんどです。
マイクロスコープでは、1センチほどの穴しかない歯の中をハッキリと見ることができます。
根の細部までしっかりと確認できるので、歯の状態を正確に診断、治療を進めることを可能です。
マイクロスコープを使用した根管治療の回数は、約1〜4回が一般的です。
特に前歯の場合には、根の数が基本的に1本なので、治療が1回で終わることも少なくありません。
奥歯を治療する場合には、根の数3〜4本と多く、複雑な形になっていることもあり2回〜4回の回数がかかることもあります。
それでも保険の根管治療と比べると、圧倒的に根管治療の回数は少なく1ヶ月以内に被せ物まで完了するケースがほとんどです。
3−4:途中で治療を放置しない
「痛みがなくなった!」と思って、根管治療を途中で放置する方がいます。
これは、大変危険です。
根管治療を行ったことで、以前より細菌感染した部分を取り除いている状態です。
しかし、無菌状態とは、程遠い状態である可能性が高く、放置していると根管内に残っている細菌が活動し始めて感染範囲を広げていきます。
細菌は根管内だけでは止まらず、歯の外側まで活動範囲を広げていき、歯を支えている骨を溶かしてきます。
最悪の場合には、ほとんどの骨を溶かしてしまい歯を支えることが不可能な状態になり抜歯になるケースも少なくありません。
何度も言いますが、根管治療は、短期間で治療を終えることが重要です。
途中で治療を放置することは症状を悪化させて、歯の寿命を縮めているだけです。
歯科医師の技術力や整った設備は、根管治療の痛みを少なくして最短で終わらせるのに欠かせません。
しかし、それは患者さんの協力なしでは成り立たないのです。
根管治療を始める時には、担当医と歯を残すぞ!という強い気持ちで最後まで望むようにしましょう。
4 痛みを最小限にして根管治療を終わらせよう!
根管治療は歯の中を刺激するため、治療中や治療後に痛みが出ることがあります。
しかし、今回紹介した4つの方法を取り入れている歯科医院で根管治療をすると、痛みが最小限で済む場合が多いです。
根管治療は長引くほど、痛みも続きどんどん悪化していく傾向があります。
患者さんの痛みを理解して、最小限で済むような工夫をしている歯科医院で、根管治療を成功させましょう!