インプラントは入れて終わりというわけではありません。長く使い続けるためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。メンテナンスを怠ると「インプラント周囲炎」などが原因で、インプラントが脱落してしまう場合もあります。

インプラントのメンテナンスは、インプラント治療と同様、保険が適用されません。インプラント治療を受ける際には、メンテナンスも含めたトータルの費用を把握しておきましょう。

インプラントは見た目も機能性も天然の歯に近く、歯を失っても以前とあまり変わらず歯を使える治療法です。しかし、保険が適用されないため、他の治療法と比べ、費用が高い傾向にあります。

そのため「メンテナンスでさらにお金がかかるなんて…」と考える方も多いでしょう。インプラントのメンテナンスが必要な3つの理由を詳しく説明します。

インプラント周囲炎とは、インプラント周辺の歯茎が歯周病菌に感染し、歯周病のような症状が出る病気です。

インプラント周囲炎の原因は、日ごろのメンテナンスが不充分で、口の中に歯垢や歯石が蓄積し、歯周病菌が増殖し、炎症が起きることです。病状が悪化すると、あごの骨にまで炎症が広がり、膿が出たり、インプラントがぐらぐら動くようになったりします。

そのまま進行すると、インプラントを支えきれなくなり、インプラントが抜け落ちてしまいます。そういった場合は、再治療が必要です。再治療が必要になると、メンテナンスをするよりも、はるかに費用や時間、身体的負担が大きくなります。

人工物を埋め込んでいるため、通常の歯周病よりもさらに病気の進行に気がつきにくいので注意が必要です。

インプラントのメンテナンスをする際は、他の部分の歯や歯茎に虫歯や歯周病がないかもチェックします。仮に虫歯や歯周病があっても、早めに発見できれば、簡単な治療で済みます。

日本人が歯を失う原因は、１位が歯周病、２位が虫歯といわれています。定期的にメンテナンスをすることで、健康な歯を失うリスクを軽減できるでしょう。

また虫歯や歯茎の治療は、インプラントの寿命を伸ばすことにもつながります。もし、健康な歯が減ってしまうと、噛むときのインプラントにかかる負荷が増え、かみ合わせも微妙に変化します。それにより、本来であれば10年以上もつはずのインプラントが、短期間で使えなくなる場合も少なくありません。

また、歯周病が進行すると、口のなかの歯周病菌が増加し、インプラント周辺の歯に感染し、インプラント歯周病のリスクが高まります。

インプラント治療は成功率の高い治療法ですが、患者の不安や金銭的負担を軽減するために、多くのクリニックが保証制度を設けています。

一般的な保証内容は、保証期間中にインプラントが欠ける、割れる、抜けるなどのトラブルが発生した際に、再治療の費用を無償、または減額するというものです。

クリニックによって、具体的な保証内容や適用条件は異なりますが、多くの場合「医師の指示に従ってメンテナンスを受けていること」を条件としています。メンテナンスを怠った状態で、インプラントが使えなくなると、全額自己負担で再治療が必要となる可能性が高いです。

クリニックで行われる主なメンテナンスは、下記の3つです。歯科医院によっては、フッ素の塗布などより丁寧なメンテナンスを実施しているケースもあります。

インプラントの状態を確認するのはもちろん、インプラント周囲炎や虫歯、歯周病などの病気がないか、かみ合わせなど、口のなか全体をチェックします。また、歯垢や歯石の状態も確認します。

インプラント部位をはじめとする口のなかをレントゲンで撮影し、インプラント手術前に撮影した写真と比較し、変化を確認します。

自覚症状がない初期段階でのインプラント周辺の炎症やあごの骨の吸収など、異変がないかチェックします。

口のなかの状態の確認やレントゲン撮影の結果をもとに、かみ合わせの調整や歯・インプラントのクリーニングといった必要なメンテナンスを行います。

また、取り外し可能なインプラントの場合は、人工歯の部分を外してクリーニングします。人工歯根と人工歯の結合部は、歯垢がつきやすいので、定期的に掃除することで、インプラント周囲炎の予防になります。

さらに、歯磨き指導を受けることで、正しいセルフケアができるようになり、よりよい状態を保ちやすくなります。歯科医院でのメンテナンスは、1～3ヶ月に一度程度なので、自宅でのケアも、インプラントの寿命を延ばすうえで非常に大切です。

インプラントのメンテナンス費用が、どのくらいかかるのか解説します。

インプラントのメンテナンスは、インプラント治療と同じく、保険適用外です。そのため、虫歯など保険適用の診療に比べて、費用が高くなる可能性が高いです。

ただし、歯科医院のなかには「最初の○回までのメンテナンスは無料」といったシステムを導入している場合もありますが、ほとんどの場合、メンテナンス費用は全額自己負担となります。

インプラントは、保険適用外の自由診療なので、クリニックが自由に費用を決められます。さらに、インプラントを入れている本数や手術方法、口のなかの状態によって、価格は変わります。

そのため、インプラント治療を受ける際は、メンテナンス費用についても事前に確認しておくと、後で慌てずに済むでしょう。

インプラントのメンテナンス費用は「インプラント○本まで1回あたりの値段」と「インプラント○本につき1回あたりの値段」どちらなのかによって、大きく費用に差が出ます。メンテナンス費用について相談する際に、必ずどちらなのか確認しましょう。

メンテナンスの頻度が多くなるほど、メンテナンス費用も高額になります。しかし、あまり間隔があいてしまうと、異変の発見が遅れてしまうため、歯科医師の指示に従い、コンスタントに通うようにしましょう。

インプラント治療後のメンテナンス頻度は、歯科医院の方針や口のなかの状態などにより異なりますが、3～6ヶ月に1回くらいの場合が多いようです。インプラント治療後の1年間は、まだインプラントの状態が不安定な可能性があるため、3ヶ月に1回の頻度でメンテナンスする場合が多いといわれています。

インプラントのメンテナンス費用は、インプラントの寿命は、平均で10～15年、長持ちした場合は20年以上といわれていますので、長期的に考えておきましょう。

メンテナンス費用が高いと、その歯科医院でインプラント治療を受けるのをためらうかもしれません。

しかし、費用が少々高くても、診察やクリーニングなどの処置が丁寧な歯科医院の方が、インプラントの寿命が延び、結果的にトータルの費用が安くなる場合も多いものです。

費用だけで判断せずに、メンテナンスの内容など詳しく説明を受けて、納得のいく歯科医院を選びましょう。

インプラントは保険適用外の治療ですが、「医療費控除」の対象となる場合があります。

医療費控除とは、納税者本人または本人と同一生計の親族が、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が所得から控除される制度です。合計10万円または所得金額の5％のいずれか少ない金額を超えた場合に適用されます。

対象となると、所得から最高200万円までの範囲内で、超えた分の金額が差し引かれ、所得額が減少。所得税や住民税が安くなり、還付金が戻ってくる場合があります。

見た目を美しくするための審美的な治療などは対象外ですが、失った歯を補うインプラントは控除対象です。メンテナンス費用だけではなく、通院のために使用した公共公的機関の交通費も対象になります。

メンテナンス費用だけでは、医療控除の対象となる金額にならなくても、インプラント手術費用や他の医療費と合算すると対象となる場合があるので、ぜひ確認しましょう。

医療控除を受ける場合は、会社員であっても自分で確定申告をしなければいけません。領収書が必要となるので、紛失しないよう注意してください。

インプラントを長持ちさせるには、歯科医院でのメンテナンスが不可欠です。

インプラントのメンテナンス費用は、歯科医院によって異なりますが、メンテナンスを怠り、再治療するよりも結果的に負担を軽減できます。

定期的に歯科医院でメンテナンスを受けて、インプラントの寿命を延ばしましょう。