根管治療の成功率を高める「精密マイクロスコープ」治療!!

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

根管治療の成功率がどのくらいか知っていますか?

 

東京医科歯科大学の調査では、保険治療での根管治療の成功率は約30%~50%だと分かっています。

 

この成功率の低さの原因は、日本の保険制度が関係しています。

根管治療は、精密さや正確性が求められる治療です。多くの制限がある保険治療では、根管治療を行うのに限界があるのです。

 

根管治療の成功率を上げる方法の1つとして、マイクロスコープがあります。

マイクロスコープを活用して根管治療を行うことで、成功率はグッと高くなります。

 

そこで、今回はマイクロスコープについて解説していきます。

 

根管治療をしているのに治療が全く終わらない

根管治療が終わったのに痛みや腫れが続いている

といった根の治療にお悩みの方は是非、これを機にマイクロスコープについて知って下さい。

目次

1 マイクロスコープはどこの歯科医院にもある物ではない

まず、マイクロスコープとは、歯科用顕微鏡のことです。

特にマイクロスコープの大きな特徴としては、見えなかった部分が見えるようになることです。歯科治療が進んでいる外国では、マイクロスコープを使って治療するのが当たり前になっています。しかし、日本のマイクロスコープの使用率は約3%~5%と言われていて、ほとんどの歯科医院では使われていないのが現状です。

2 精密マイクロスコープ治療と保険治療の違い

マイクロスコープを使用することで、保険の根管治療とどんな違いがあるのでしょうか?

 

治療の違いは、次の6つになります。

根の先まで見える

複雑な根管内がわかる

ヒビや折れているのを見逃さない

歯の負担を最小限に抑えられる

術者の治療の正確性が高くなる

処置が見える

 

それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。

2-1:根の先まで見える

保険の根管治療は、術者のこれまでの経験や勘を頼りに根管(神経が通っている管のこと)の中にいる細菌を除去しています。確かに、長年の経験が治療に活かされることもあります。かといって、保険治療の根管治療には正確性が全くありませんし、勘で治療を行われるなんて患者さんからすると不安でしかありません。

 

反対に、マイクロスコープを活用した根管治療では、根の先まではっきりと確認することができます。マイクロスコープは暗くて狭い根管内に光を当てながら、根の先を肉眼の約8倍~32倍に拡大して見ることができるからです。そのため、根管内を確実に見ながら正確に治療をすることができます。

2-2:複雑な根管内がわかる

根管内は非常に複雑な作りになっています。

例えば、肌の色や爪の形が人によって違うのと同じで、根管も形や数に違いがあります。

特に、奥歯の根管の本数が2本~3本が一般的ですが、希に4本の方もいて、保険の治療では、そのことに気づかずに治療を終えてしまう可能性があります。

 

根管の中は暗くて、直径1㎜ほどの狭い中を治療しなければいけません。そんな狭い穴では、肉眼で見ても中がどんな状態かを確認するのは不可能に近いです。

不可能だからといって、根管を1つでも見逃すと細菌が根管内に残ったままになり再発する可能性が高くなります。

 

マイクロスコープは、複雑な根管内も拡大して見ることができるので、曲がった形をしている根管でも、光を当てながら歯を拡大することで、確認することが可能です。さらに、根管の本数も見逃しません。

複雑な根管内も、しっかりと見ることができるので、根管の本数の見落としをせずに治療することができます。

2-3:ヒビや折れているのを見逃さない

根にヒビが入っていたり、根が折れていたりすると、そこから細菌が侵入し痛みや腫れの原因になります。保険治療でも折れていることは、確認しやすいですが、ヒビが入っているのに気づかず根管治療をして、最終的な被せ物まで完了する可能性もゼロではありません。ヒビが入っているのが、根の先の奥になるに連れて、肉眼での確認は難しくなります。

 

マイクロスコープは、ほんの少しのヒビも見逃しません。肉眼では見ることが難しいわずかなヒビもマイクロスコープでは、はっきりと確認することが出来ます。そのため、ヒビや根の折れている部分からの細菌感染を防ぐことができ、再発するリスクが低くなります。

2-4:歯の負担を最小限に抑えられる

根管治療を何度も繰り返すと、根管内が削られて、歯の厚みが薄くなっていき最終的には抜歯になる可能性があります。

また、保険治療では、視野を広くするために歯を削る量が多くなる場合があります。そうなると、歯の寿命が短くなって、長く使い続けることが難しくなります。

 

治療した歯を長く使い続けるためにも、歯の負担を最小限にする必要があります。マイクロスコープは、小さな穴からでも根管内を確認することができるので、歯を削る量が少なく済みます。

また、根管内がはっきりと目に見えることから、細菌を取り残すことがほとんどないため、マイクロスコープを使用して根管治療を終えた歯は、再発する可能性が低いのです。

2-5:術者の治療技術の正確性が高くなる

保険治療には多くの制限があり、治療に使える時間や器具にも限界があります。

そんな制限のある中で、根管内を正確に細菌除去するのは難しく、再発するリスクを高めてしまいます。

 

マイクロスコープを活用することは、術者の治療技術の正確性が高くなります。

根管治療は難易度が高い治療です。術者がマイクロスコープの力を借りて治療することで、確実性や正確性が増すため、根管治療の成功率を高めることができます。

 

2-6:治療が見える

根管内は暗くて狭いので、患者さんに治療中の様子を見せるのが困難でした。

しかし、マイクロスコープでは、根管内を拡大したままの映像を残すことができます。その映像を使って、患者さんに治療説明をすることができるので、患者さんも何をしているのか、今はどんな状態なのかを実際に見ることができます。

3 費用はマイクロスコープの欠点になる?

マイクロスコープを活用した精密根管治療は、一般的に自費診療の扱いになります。

そのため、治療費が高額になる場合もあります。

 

費用の平均は、約15,000~100,000円です。

自費診療のため、歯科医院によっては、根管の数によって費用が変わってきます。

 

例えば、前歯の根管は1つですが、奥歯になると根管は2本、3本と増えていきます。特に、奥歯になるほど根管内が複雑になるため、奥歯の場合には、前歯に比べて費用が高くなる歯科医院もあります。

 

根管治療だけで、15,000円の費用は高いと感じますか?

しかし、根管がしっかりと治療されていないと、良い素材の土台や被せ物を入れても再発する可能性が高まり、再び根管治療することになります。

土台や被せ物に、良い素材の物を使うのは、根管治療が正確に行われているのが前提になります。

 

マイクロスコープを活用した精密根管治療は、再発する可能性や治療後の不安を取り除いてくれるため、費用は欠点ではないかも知れません。

4  マイクロスコープは根管治療に欠かせない!

根管治療が正確に行われていないのに、良い土台や被せ物をしても意味がありません。

根管治療は、難しい治療です。難しい治療だからこそ器械の力を借りて、確実に治療する必要があります。

 

また、マイクロスコープがあるという理由だけで歯科医院を決めるのは危険です。

なぜなら、マイクロスコープは、使いこなす技術や専門性が必要だからです。

マイクロスコープだけではなく、歯科医師がどんな専門資格を持っているか、マイクロスコープを活用した根管治療の症例があるのかを確認してから、歯科医院を選ぶようにしましょう。

 

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