
- この記事の監修者
- 医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療は3%程度の確率でトラブルが発生すると言われています。
トラブルの原因は様々ですが、事前の下調べや毎日のケアでしっかりと防ぐことができます。
今回はそれでも失敗してしまった際の処置について、ご紹介していきます。
目次
- 1 インプラント治療の失敗には様々な種類がある
- 1-1 治療中のトラブル
- 1-2 術後のトラブル
- 2 失敗時の処置は?
- 2-1 治療中のトラブルに対しては
- 2-2 術後のトラブルに対しては
- 3 患者側で出来ることは?
- 3-1 まずはトラブルにならない歯科医を選ぶこと
- 3-2 自分で出来る日々の対策とは
- 3-3 もしトラブルが起きてしまったら
- 4 インプラントのトラブルに適切な対処を取ってくれる医師を探す!
1 インプラント治療の失敗には様々な種類がある

トラブルの種類によって、対応方法は異なります。
まずはインプラント治療が失敗してしまう例をいくつか見てみましょう。
1-1 治療中のトラブル

治療中のトラブルには、以下のようなものがあります。
・手術時のミス
・インテグレーション不良
・人工歯製作でのトラブル
インプラントでは、顎の骨に金属のボルトを埋め込みます。
そのため、手術時に顎の骨をボルトが貫通してしまったり、インプラント自体の定着(インテグレーション)が上手くいかなかったり、といったケースがあるのです。
また、インプラントにした歯の色が他の歯と異なり違和感が出るなどのトラブルもあります。
1-2 術後のトラブル

インプラントの挿入が無事に完了していても、手術から数年経過していくうちにトラブルが起こる場合もあります。
インプラント周囲炎は、人工歯と歯肉の間に歯肉炎が発生し、その炎症が骨にまで広がってしまうことで発生します。
骨組織の炎症がひどくなると、固着していたインプラントが外れてしまい、人工歯が根本から取れるようなケースも起こるのです。
また、人工歯に対して強い衝撃が加わると、割れたり欠けたりすることもあります。
2 失敗時の処置は?

インプラント治療がうまくいかなかった際には、以下のような処置が取られます。
2-1 治療中のトラブルに対しては

インプラント治療中は、歯科医師がしっかり診察、診断を下してくれていますので、基本的にはその方の指示に従うことになります。
もし担当医に不安があれば、セカンドオピニオンを考えてもいいでしょう。
以下に、治療中にトラブルになった症例と、それに対する再治療方法をいくつか挙げます。
・医師の技術力不足で……
インプラントは骨に打ち込まれるものですが、歯肉部分(歯茎)にしかボルトが埋まっておらず定着しなかった、というトラブルが発生しています。
本来はあり得ないことなのですが、医師の技量が不足していたり、十分な知見がなかったりした場合には、こうした問題が起こるリスクもあります。
このような場合には、一度歯肉からインプラントを取り出し、再度適切な位置にインプラントを埋め込むことが必要です。
・上の歯にインプラントをしようとしたケースでのトラブル
頬骨のところには、上顎洞という空洞があります。
上顎にインプラントを施そうとした際に、インプラントがこの上顎洞にまで到達してしまい、内部に入り込みました。
その結果、インプラントは正常に固定されず、上顎洞で炎症が起きて蓄膿症になってしまいました。
このようなケースの再治療では、上顎洞に入り込んだインプラントを取り出し、蓄膿症の治療を行ってから、再度適切なインプラント埋込の処置を行います。
・歯周病や虫歯の治療前にインプラントをしてしまった
歯周病は、歯と歯茎の間に「歯周ポケット」と呼ばれる隙間ができ、その部分が炎症を起こしていく病気です。
悪化すると、歯を支える骨組織がダメージを受け、歯が抜けるなどのトラブルに発展します。
歯周病を患っている人にインプラント施術をする際には、一度歯周病をある程度まで良好な状態に戻す必要があります。
歯周病菌が患部に蔓延し歯肉が炎症を起こしているため、結果としてインプラントの固着不良、インプラント周囲炎のリスク増加などが考えられるからです。
また、虫歯がある場合も、同様に炎症リスクが高まるため、先に虫歯治療を行います。
歯周病治療を怠ってインプラントを実施してトラブルが発生した場合は、埋めていたインプラントを取り出して、歯科治療・骨造成術を行った後に再度インプラント処置を行うことになります。
・インテグレーション不良
インプラントを埋め込んだ後、3か月程度の時間をかけて、骨組織がインプラントにがっちりと食い込むのを待ちます。
これがうまくいかないと、インプラントはいつまでも骨の一部としての役割を果たせません。
インテグレーションは個人の骨の再生能力に依存する場合もあるため、必ず成功するとは言い切れない部分があります。実際に、優秀な実績を数多く持つ歯科医でも、インテグレーション不良を起こすことはあるのです。
もしうまく癒合しない場合は、1度埋め込んだインプラントを抜いて再度埋め直すか、より長い時間をかけてインテグレーションを進めていくこととなります。
これらの再手術にかかる費用は、施術を行うクリニックによって対応は異なりますが、初期費用の中にこうしたトラブルに対する保証が含まれているケースも多くあります。
クリニックを選ぶ際の基準の1つとして、再治療費や保証がどうなっているのかをチェックしておくといいでしょう。
どのようなトラブルであっても、再治療には、通常の治療の2倍以上の時間が掛かってしまいます。
これは、一度トラブルが発生したインプラントを除去したのち、インプラントを埋め込む場所の状態がある程度まで回復しないと、再手術を受けることが出来ないためです。
ですから、なるべくトラブルが発生しない歯科医を選ぶことが重要になってきます。
2-2 術後のトラブルに対しては

術後は、基本的に3~6か月に1度、歯科医院へ通院しながらインプラントの状況を確認していくことになります。
インプラント施術後になると、自分でトラブルに気付くことは難しく、この定期通院で状況を都度判断してもらうことが必要です。
術後に起こるトラブルは、インプラント周囲炎と、人工歯の破損が中心となります。
・インプラント周囲炎になってしまった
インプラント周囲炎になっても、自分で状況を把握することは難しく、インプラントがぐら付き出してようやくトラブルに気付けるということも少なくありません。
定期健診を受けていればかなりの高確率で防げるトラブルではありますが、それでもなってしまった場合は、人工歯周辺の細菌の除去や、骨の中に埋まっているインプラントの洗浄などを行います。
それでも対処しきれないようなトラブルの場合や、すでにインプラントが抜け落ちてしまったようなケースでは、一度インプラントを抜いて骨形成を行い、炎症を抑えたうえで再度新しいインプラント施術を行うことになります。
・人工歯が欠けてしまった
強度が低い素材ではなくても、長年使用していると破損する恐れがあります。
多くのケースでは、インプラント本体に問題があるわけではなく、表面の加工がはがれてしまっただけですので、通院中の歯科に相談して修復もらうか、人工歯の表面部分を交換することになります。
特にセラミックなどの外見がよく見える製品は10年で60%近くが破折するというデータもあります。
インプラントによる人工歯は消耗品ですので、一定期間後の交換については、あらかじめ想定しておきましょう。
術後のトラブルについては基本的に有償対応になることがほとんどですが、人工歯の破損に関してはメーカー保証が期限付きで有効になっている場合もあります。
定期健診の費用はクリニックによって異なりますが、おおよそ5,000~10,000円前後が目安となります。
3 患者側で出来ることは?

こうしたトラブルに対して、患者側ができることには何があるのでしょうか?
3-1 まずはトラブルにならない歯科医を選ぶこと

手術時のトラブルの中心は、歯科医師のインプラントに対する技術・知見不足に大きな原因があります。
これまでに多くの患者さんを診ていて、治療経験の豊富な歯科医師にお願いすることで、トラブルの多くは回避することができるのです。
また、運悪く再治療となってしまった場合の費用について、事前に相談をしておくことが望ましいでしょう。いくら手術をお手頃な価格で受けられたとしても、再手術に同額が掛かってしまうのであれば、少し手術費用は高額でも信頼できる歯科医師に1回の治療で処置してもらったほうが、結果的に安上がりになる場合があります。
また、施術回数は当然少ないほうが肉体への負荷も軽く済みます。
3-2 自分で出来る日々の対策とは

インプラント施術後に患者側で出来ることは、適切なブラッシングと定期的な検診を受けること、そして人工歯に悪影響の少ない生活習慣に変えることです。
ブラッシングについては手術前後に歯科衛生指導が受けられますので、そこでしっかりと「正しい歯磨き方法」を教わりましょう。
日々やっているはずのことですが、だからこそ意外と雑になっていたり、特定の部分に磨き残しが出ていたりするかもしれません。
定期検診は、3~6か月おきに1度程度の頻度で受けるようにします。
インプラント周囲炎の予防や早期発見につながり、再度インプラント手術を受けなければいけないような大きなトラブルを防ぐことができます。
また、喫煙は歯周病のリスクを高めることでも知られており、口内環境に対して悪い影響を与える生活習慣です。
インプラント周囲炎の遠因にもなりますので、可能な限り禁煙・減煙を進めていきましょう。
3-3 もしトラブルが起きてしまったら

それでもトラブルが起きてしまった場合、患者側で出来ることはほぼありません。
すぐに掛かりつけの歯科医師に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。
4 インプラントのトラブルに適切な対処を取ってくれる医師を探す!

インプラントのトラブル対処は歯科医師の専門分野であり、患者側でできることは、トラブルにつながるようなことを未然に排除していくことだけです。
それだけに、インプラントを依頼する歯科医を選ぶ段階で、しっかりとした選定を行っていく必要があります。
技術の腕や経験、その歯科医に施術してもらった人の口コミなどももちろんですが、定期通院が必要になることも念頭に入れ、自宅や職場からの通いやすさも検討の対象にするといいでしょう。
また、現在かかっている医師に対して不安がある場合は、より信頼できそうな歯科医のもとに転院することを考えてもいいかもしれません。









