- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント手術後の痛みや腫れが出るのが嫌で、治療に踏み込めない方もいると思います。
特に仕事柄、接客業や人前にでる職業の方は、仕方なくインプラント以外の治療を選択した方も少なくないでしょう。
ですが、現在のインプラント治療は質や手術方法など様々な面で進化をしていて、術後の痛みや腫れといった症状がでにくくなっています。
今まで諦めていたインプラントができる可能性があるのです。
そこで今回は、インプラント手術後の痛みや腫れを少なくする「9つの条件」について解説していきます。
目次
- 1 インプラント後に痛みや腫れがでる「3つの理由」
- 1-1:体の免疫・防御反応
- 1-2:細菌感染
- 1-3:インプラント周囲炎
- 2 インプラント手術後の痛みや腫れを少なくする「9つの条件」
- 2-1:アレルギー検査を受ける
- 2-2:全身疾患がない
- 2-3:喫煙をしない
- 2-4:食事内容に気をつける
- 2-5:患部を刺激しない
- 2-6:侵襲の少ない手術を選択する
- 2-7:手術回数を減らす
- 2-8:術者の技術力がある
- 2-9:衛生管理・設備が整っている
- 3 インプラント手術後も快適に過ごせる
1 インプラント後に痛みや腫れがでる「3つの理由」
インプラント治療は、顎の骨にインプラントを埋める外科手術が必要です。
外科手術は、侵襲といって体を傷つける行為です。
侵襲の範囲が広いほど、炎症として腫れたり、痛みを感じたりする可能性が高まります。
特にインプラント手術後で痛みや腫れがでる理由は、主に次の3つが関係しています。
・体の免疫・防御反応
・細菌感染
・インプラント周囲炎
それぞれについて、簡単に説明していきます。
1-1:体の免疫・防御反応
インプラントはチタンといって、体に拒否反応が起きにくい金属を使用しているメーカーがほとんどです。
しかし体は、インプラントを異物と認識して、排除しようと防御反応を起こすこともあります。
その場合には、インプラント周辺の歯茎が炎症を起こして、インプラントが骨に固定せずに抜けてしまう時もあります。
また手術後の傷口を治そうと、体が再生を活発にしている時に腫れや痛みがでやすいです。特に、術後2~3日は痛みや腫れのピークで、段々と治まっていきます。
2週間以上経っても痛みや腫れが引かない場合には、トラブルが起きている可能性が高いので、すぐに担当医に相談しましょう。
1-2:細菌感染
インプラント手術中やインプラント術後の傷口から菌が侵入すると、細菌感染を引き起こし、痛みや腫れが強くでることがあります。
1-3:インプラント周囲炎
インプラント周囲炎は、インプラントの歯周病とも言われています。
インプラントの周りは自身の歯より弱く、細菌の侵入を許してしまうと、症状の進行が早いです。
インプラント周囲炎が重症化すると、歯茎が腫れてインプラント周辺の骨が溶けてグラグラし始め、最悪の場合には、抜けてしまう可能性があります。
2 インプラント手術後の痛みや腫れを少なくする「9つの条件」
インプラント手術後の痛みや腫れを少なくするためには、次の9つの条件をなるべく多く満たしていると良いでしょう。
・アレルギー検査を受ける
・全身疾患がない
・喫煙をしない
・食事内容に気をつける
・患部を刺激しない
・オプション治療を避ける
・手術回数を減らす
・術者の技術力がある
・衛生管理・設備が整っている
順番に解説していきます。
2-1:アレルギー検査を受ける
金属アレルギーがある方でも、チタンを使用しているインプラントだと拒否反応がでにくいので、使用できる場合があります。
とはいえ、安全にインプラント治療を受けるためにも、事前にアレルギー検査を受けておくと安心です。
2-2:全身疾患がない
全身疾患の種類や症状の状態によっては、インプラント治療が難しい場合があります。
例えば、糖尿病の方は、Hba1c(ヘモグロビンエーワンシー)値が6.0%以下で安定している必要があります。
それ以上の数値だと、傷が治りにくく、細菌感染しやすくなる確率が高くなるので、傷口の痛みや腫れが長く続く可能性も否定できません。
全身疾患がなければ、感染や傷口治癒の遅延のリスクを軽減することが可能です。
2-3:喫煙をしない
喫煙には、歯の表面の黒ずみだけではなく、インプラント治療でも影響がでやすいです。
タバコの中に含まれているニコチンは、毛細血管を収縮させて、十分な量の血液を届きにくくするので、傷口の治りが長引いたり、痛みや腫れを引き起こしたりする可能性があります。
また、血行が悪くなることで、インプラントと骨の結合がうまくいかずに、脱落してしまうケースも少なくありません。
喫煙している限り、インプラントの生存率は低くなり、リスクが付きまといます。
長くインプラントを使い続けるためにも、治療をきっかけに禁煙を始める方もいるほどです。
2-4:食事内容に気をつける
インプラント手術後2~3日は、かたい食べ物や刺激がある辛い食べ物、飲酒は控えるようにしましょう。
食べ物が傷口に当たって、痛みや腫れがでる場合があります。
それ以降は、患部の治りの様子を見ながら担当医の指示に従って、食事を摂るようにしましょう。
2-5:患部を刺激しない
食事以外にも、歯ブラシが患部に当たって痛みの原因になることがあります。
かといって、インプラント周辺に汚れが溜まると不衛生になり、傷口から菌が侵入して傷の治りが悪くなりがちです。
インプラント術後は、柔らかい歯ブラシで優しくインプラント周辺を磨くようにしましょう。
また、刺激が少ないうがい薬で、軽めに口の中をゆすぐのも清潔に保つのに効果的です。
2-6:侵襲の少ない手術を選択する
フラップレスという、歯茎を切らずに行えるインプラントもあります。
大きく歯茎を切開する必要がないため、痛みや腫れが起こるリスクも小さくなります。
歯科医院によっては対応できなかったり、口の状態によっては適応できなかったりするケースもありますので、まずは担当医に相談してみましょう。
2-7:手術回数を減らす
手術回数が多いほど、組織は再生をする必要があり、形態を変化しようとすることにエネルギーを使うので、痛みがでやすいです。
手術の回数を減らして、1回の手術の中で処置を済ませる方が、何度も歯茎を開く必要がなかったり、組織の形態を変化させにくかったりと、身体的負担も軽減されます。
2-8:術者の技術力がある
手術後の痛みや腫れを抑えるためには、術者の技術力が欠かせません。
例えば、インプラントを埋め込んだ後の歯茎を閉じる処置では、しっかりと閉じていないと細菌が侵入して、痛みや腫れといった症状の原因になりかねません。
そこで、出血を抑えて菌が侵入しないような閉じ方ができ、さらに歯茎が治る形を予測して縫合する知識と技術が必要になるのです。
また、メスの入れ方ひとつでも、痛みや腫れの有無を左右します。
インプラント治療の年数や経験が豊富な歯科医師を選ぶのも、痛みや腫れを抑えるためには重要な要素になります。
歯科医院のホームページや口コミがあれば確認しておきましょう。
2-9:衛生管理・設備が整っている
痛みや腫れを少なくするには、手術環境も重要な要素になります。
使用する器具が滅菌されていない不衛生な状態では、感染症を引き起こしやすいです。
また、CTといって三次元的に歯や骨を確認することができる機械や手術がシミュレーションできるインプラントシステムを活用していれば、インプラント手術の正確性が増して侵襲範囲を狭くすることが可能です。
インプラント手術をする設備や環境が、整っているかのチェックも事前にしておきましょう。
3 インプラント手術後も快適に過ごせる
インプラント手術後の痛みや腫れを少なくするには、担当医の腕だけではなく、治療を受ける患者さんの協力も必要不可欠です。
どちらか一方でも欠ければ、痛みや腫れがでる可能性が高くなります。
手術後も快適に過ごせるように、治療法や不安に感じていることを伝えた上で自分に合った治療を受けるようにしましょう。