- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療は完了したら、終わりではありません。
定期検診が必要になります。
とはいえ、
・また頻繁に歯科医院に通うとなると面倒で途中で辞めてしまいそう・・・・・・
・インプラント治療費も高いから検診の費用も高そう・・・・・・
と思っている方もいるでしょう。
そこで今回は、インプラントに定期検診が必要な理由や通う頻度、費用などについて解説していきます。
目次
- 1 インプラントに定期検診が必要な「4つの理由」
- 1-1:インプラント周囲炎の予防
- 1-2:他の歯の虫歯・歯周病予防になる
- 1-3:インプラント保証の対象になる
- 1-4:インプラントの再治療は負担が大きい
- 2 インプラントの定期検診の「頻度」と「費用」
- 2-1:歯科医院に通う頻度
- 2-2:検診の費用
- 3 インプラントの定期検診の内容
- 3-1:口全体の確認
- 3-2:レントゲン撮影
- 3-3:歯周病の検査
- 3-4:PMTC
- 3-5:噛み合わせの確認
- 3-6:口の状態の説明・指導
- 4 定期検診はインプラントを長持ちさせる
1 インプラントに定期検診が必要な「4つの理由」
そもそも、インプラントに定期検診が必要な理由は次の4つです。
・インプラント周囲炎の予防
・他の歯の虫歯・歯周病予防になる
・インプラント保証の対象になる
・インプラントの再治療は負担が大きい
それぞれについて詳しく解説していきます。
1-1:インプラント周囲炎の予防
インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病のような症状をしめすようにはなります。
それがインプラント周囲炎です。
インプラント周囲炎とは、インプラントを支えている骨が細菌によって溶かされていく病気です。
症状が軽度の場合には、炎症が起きている部分の汚れを取り除いて、清潔な状態を保つことで、症状は改善します。
一方で、症状が重度になると、インプラント周辺にある骨の多くが溶けている状態になります。
歯茎の中の汚れを除去して改善することもありますが、出血が多く膿が出ていたり、インプラントがグラグラと強く揺れていたりすると、インプラントを撤去するケースもあります。
インプラントには、細菌からの侵入を防ぐ役割がある歯根膜という組織がないため、自身の歯より細菌感染を引き起こす可能性が高くなります。
細菌がインプラントの周辺の歯茎に侵入した場合には、インプラント周囲炎になる速度が早く気づいたら重症化しているケースも少なくありません。
もう数ヶ月早く歯科医院に行っていたら、インプラント周囲炎の症状が悪化することなく改善できていたということも有り得るのです。
インプラント周囲炎は、自身の歯で起こる歯周病と同様、ほとんど痛みがなく症状の進行だけが深刻化していきます。
患者さん本人では気づきにくい病気であるので、定期検診でのチェックが欠かせないのです。
1-2:他の歯の虫歯・歯周病予防になる
定期的な検診は、インプラント以外に他の歯の健康を守ることに繋がります。
例えば、虫歯が早い段階で見つかれば、治療をせずに様子を見るだけで済む場合があります。
他にも定期的に、歯垢や歯石を取り除くのは、細菌の数を減らし口臭予防にも効果的です。
定期的に歯科医院に通うことは、担当医と患者さんで口の管理をしていることになります。
虫歯や歯周病になっても、早期発見、早期治療が可能なため、症状が悪化せずに最小限の治療で完了できるのが定期検診の魅力のひとつです。
1-3:インプラント保証の対象になる
歯科医院では、インプラントに保証を付けている場合がほとんどです。
インプラントの保証期間は治療終了後、約5~10年が一般的です。
この期間内に保証が受けられる条件として、定期検診が含まれていることが多いです。
例えば、インプラント治療後5年目にインプラントの被せ物が事故で欠けてしまった場合には、保証期間内なので治療費の負担なしや何割かだけで済むのが基本です。
しかし、決められた定期検診の頻度を守れていないと、保証が受けられない可能性があります。そうなると、治療費は全額自己負担になることが多いです。
また歯科医院によって、保証内容が異なります。
予め、どういったケースが保証対象になるのかを確認しておきましょう。
1-4:インプラントの再治療は負担が大きい
インプラント周囲炎が重症化してインプラントを撤去、再治療になった場合には、
まず、細菌感染した部分を完全に除去し、清潔な状態にする必要があります。
その後、骨を失った部分に骨を足す手術をし、完全に骨が再生してからインプラントを顎の骨に埋めていく治療方法が一般的です。
骨を足す手術とインプラントを埋める手術と2回の手術が必要になり、身体への負担も大きくなります。
さらに、骨が再生するまでの治癒期間がかかるので、被せ物が入って噛めるようになるまでは数年かかるケースもあります。
再治療になった場合には費用面だけでなく、治療期間が長くなったり、身体への負担が大きくなったりとデメリットが多いです。
2 インプラントの定期検診の「頻度」と「費用」
インプラントの定期検診の頻度と費用については次の通りです。
・歯科医院に通う頻度
・インプラントの検診の費用
それぞれについて見ていきましょう。
2-1:歯科医院に通う頻度
インプラントの検診の頻度は、口の状態や歯科医院の方針により期間が変わってきます。
特に、インプラント治療後は、噛み合わせの位置が不安定でズレが生じやすいため、数ヶ月に1度のペースで通うのが一般的です。
またインプラントを含め、口の状態が安定している場合には、検診の期間を半年に1度に間隔をあけて様子を見るケースもあります。
インプラントの定期検診は、3ヶ月~6ヶ月に1度の頻度を設定している歯科医院がほとんどです。
2-2:インプラントの検診の費用
インプラント治療は、保険が適応されません。
そのため、インプラントの検診の費用も保険適応外のことが多いです。
歯科医院によっては、インプラント治療後の最初の1年~5年間の定期検診の費用がかからない、またはインプラント治療費の中に含まれていることもあります。
次からは、定期検診の具体的な内容について説明していきます。
3 インプラントの定期検診の内容
インプラントの定期検診では、次の6つのことを行うのが基本です。
・口全体の確認
・レントゲン撮影
・歯周病の検査
・PMTC
・噛み合わせの確認
・口の状態の説明・指導
3-1:口全体の確認
まずは、インプラントも含め口全体の状態を観察します。
例えば、口内炎ができていないか、歯に汚れが多く付いていないかなどです。
他にも体調の良し悪しや、服用中の薬の有無などの生活習慣についても問診し確認していきます。
3-2:レントゲン撮影
歯や歯茎、インプラントの状態を確認するために、口全体が映るレントゲン撮影を行います。
レントゲン写真では、特にインプラント周辺の組織に変化がないかをしっかりと確認します。
インプラント治療後、定期検診に移行した場合には、年に一度の頻度で撮影する歯科医院がほとんどです。
3-3:歯周病の検査
歯周病の検査では専用の器具を使って、次のことをチェックしていきます。
・歯と歯茎の間にある歯周ポケットという溝が深くなっていないか
・出血や膿の有無
・歯やインプラントが大きくグラグラ動いていないか
上記の他にも、歯茎の色や汚れの付いている状態を記録していきます。
3-4:PMTC
PMTCとは、プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略語で、歯科医師や歯科衛生士が、専用の器具や機械で汚れや着色を除去する処置のことです。
歯のプロが、自宅で行う歯磨きでは取れない汚れを、適切に除去し歯を保護していきます。
インプラントを綺麗にする専用の材料や機械を使う歯科医院が多く、PMTCの内容によって金額が変わるケースもあります。
3-5:噛み合わせの確認
インプラントの噛み合わせや、全体の噛み合わせのバランスを確認します。
インプラントに過度な力がかかりすぎると、周辺の骨が減少して、噛みにくくなる原因になります。
また、インプラントを含めた口全体の噛み合わせのバランスを調整することで、顎の関節に痛みがでる顎関節症を防止にもなります。
3-6:口の状態の説明・指導
歯周病の検査やレントゲン撮影の結果をもとに、今の口の状況を説明していきます。
また、歯の汚れの付き方によっては、歯磨き指導を行う場合があります。
汚れの残りやすい部分は、虫歯や歯周病になりやすいので、自宅でもケアできるように指導を受けましょう。
4 定期検診はインプラントを長持ちさせる
定期検診は、インプラントを長く使い続けるためには欠かせない処置です。
検診を疎かにすると、費用面だけでなく、身体への負担が大きくなったり、多くの時間が必要になったりします。
歯を補充するためのインプラント治療なのに、すぐに駄目になっては意味がありません。
インプラントは管理の仕方によっては、生涯に渡って使い続けることも可能な治療法です。
インプラントや自身の歯の健康を守るためにも、定期検診に通いましょう。