
- この記事の監修者
- 医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療は、何らかが原因で歯を失った方も、自分の歯と変わらない機能や審美を手に入れることができるため、有効な選択肢のひとつとして、人気の高い治療です。
しかし、このインプラント治療は全ての方が可能なわけではなく、中には治療が難しく、おすすめできないケースもあります。
また、治療によるトラブルを避けるためにも、失敗率が高くなる要因がある場合、治療をおすすめされないこともあります。
ここでは、インプラント治療に適さないケース、もしくはおすすめされないケースについてご紹介します。
目次
- 1. 健康状態からインプラント治療が困難なケース
- 1-1. 心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症などの心血管疾患
- 1-2. 重度の高血圧
- 1-3. 重度の糖尿病
- 1-4. 重度の腎疾患
- 1-5. 重度の肝疾患
- 1-6. 放射線治療中
- 1-7. その他リスクが高いと考えられる疾患・症状
- 2. 顎骨や口腔内の状態から治療が難しいとされるケース
- 2-1. 顎の骨が少ない
- 2-2. 重度の歯周病
- 3. 治療前に注意が必要なケース
- 3-1. 喫煙者
- 3-2. 若年齢
- 3-3. 金属アレルギー
- 4. まとめ
1. 健康状態からインプラント治療が困難なケース

インプラント治療は、外科手術を伴う治療です。
口腔内の手術とはいえ、大掛かりな手術ため、健康状態に何かトラブルを抱えている方や、不安がある方は、手術を行うことが危険だと判断されることがあります。
また、治療による感染症などのリスクが高まる可能性がある場合も、治療を断られることがあるでしょう。
もちろん、疾患の程度にもよりますが、特に次のような疾患を持っている方は、歯科医だけではなく、各疾患の主治医にも治療が可能であるか相談が必要です。
1-1. 心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症などの心血管疾患
心血管疾患がある場合、内服している薬の影響で、手術中に血が止まりにくいことがあります。
また、体内型ペースメーカーを入れている方は、口腔内の細菌がペースメーカーなどに付着すると、感染性心内膜症を引き起こしてしまう可能性があります。
そのため、手術や治療が困難だと言われています。
ただし、狭心症の場合は1~2ヶ月発作がない、あったとしても軽度である、また心筋梗塞の場合は半年以上発作が起きていないときには、治療を行える可能性はあります。
インプラント治療を希望する場合は主治医と歯科医両方に相談し、連携をとってもらいながら、治療可能であるかを判断してもらいましょう。
1-2. 重度の高血圧
高血圧の方は、インプラント治療による血圧の変動に注意が必要です。
歯科治療で一般的に使われる局所麻酔には、血管収縮薬が入っていることもあり、使用する量が多いと血圧を上げてしまう可能性があるためです。
また、治療の際の緊張により、血圧の変動があることがあります。
血圧の変動で怖いのが、血圧が上がることよる脳や心臓への負担です。
高血圧の合併症である、脳梗塞や脳出血、心不全などを引き起こさないためにも、重度の高血圧の方には治療はおすすめできません。
ただし、毎日忘れずに血液を下げる薬を服薬しており、血圧のコントロールが良好で、かつ麻酔の使用を最小限に抑えてもらうなどの対処ができれば、治療が可能であることもあります。
また、治療の際に緊張しすぎないよう普段から歯科医師とコミュニケーションを取っておくことも重要な対処法の1つです。
1-3. 重度の糖尿病
重度の糖尿病で、血糖値のコントロールが難しい方は、手術をしても傷口の治りが悪く、感染症を起こしやすいというリスクがあります。
その上、免疫の働き低下により、細菌感染への抵抗力が弱まっている可能性も考えられること、骨がもろくなりやすいためにインプラントと骨の結合がうまくいかない可能性もあることから、インプラントの治療には向いていません。
しかし、血糖値がしっかりコントロールできており、かつインプラント手術の規模を小さくできるのであれば、治療を受けられる可能性はあります。
糖尿病の主治医とも相談しながら、どの程度であればリスクを抑えて治療を進められるか慎重に見極めることが大切です。
1-4. 重度の腎疾患
腎臓病など、血液透析を受けなければいけない程度の腎疾患を持っている方も、インプラント治療が危険とみなされる場合があります。
疾患により免疫力が低下している状態なので、細菌感染のリスクも上がりますし、手術をしても骨がもろく結合がうまくいかなかったり、傷の治癒が遅くなる可能性があるためです。
感染症対策を万全に行えば手術が可能な場合もありますが、まずは内科医と歯科医の両方への相談が必要です。
1-5. 重度の肝疾患
肝臓病などの肝疾患のある方は、手術後に止血しにくい恐れがあることから、インプラント治療が難しい場合があります。
インプラント治療を受けたい場合は、内科医、歯科医ともに事前に相談しましょう。
1-6. 放射線治療中
放射線治療中の方は、外科治療は禁忌です。
インプラント治療においては、顎骨の骨髄炎を引き起こしてしまう可能性があります。
1-7. その他リスクが高いと考えられる疾患・症状
その他にも、以下のような疾患や症状がある場合、治療のリスクが高いと考えられています。
・免疫不全(リウマチ、膠原病など)
・血液疾患(血小板減少症など)
・重度の骨粗しょう症
など。
これらの疾患や症状の他、健康状態不安がある場合は、必ず担当の歯科医に申告し、主治医(またはかかりつけの内科医など)に相談の上、治療が可能であるか確認するようにしましょう。
2. 顎骨や口腔内の状態から治療が難しいとされるケース

健康状態に異常はなくても、以下の状態である時には治療が難しい、または治療前後でトラブルの起こるリスクの高い場合にも治療はおすすめできません。
2-1. 顎の骨が少ない
インプラント治療は、なくなった歯の部分に人工歯根であるインプラントを埋め込む治療なので、インプラントの土台になる顎の骨は十分な量が必要です。
骨の厚みや幅がないと、治療自体が困難である場合もあれば、無理に埋め込んで治療できたとしても、周りの神経や血管を圧迫したり、骨に炎症を起こしたりすることがあります。
そのため、以前は骨の量が足りないとインプラント治療は適応外とされていました。
しかし、最近では顎の骨を人工的に厚くする治療もあります。
“骨造成”“骨再生誘導法”などと呼ばれる治療で、インプラント治療前に3~6ヶ月程度かけて骨の厚さを十分に持たせることで、インプラント治療が可能になります。
2-2. 重度の歯周病
重度の歯周病の場合も、インプラント治療が難しいと考えられています。
歯周病が治れば治療は可能ですが、歯周病のまま治療をすると、“インプラント周囲炎”を発症してしまう確率が高いです。
インプラント周囲炎とは、細菌が歯肉とインプラントの間に侵入し、歯肉からの出血や腫れなどを引き起こす感染症のこと。
インプラントと骨をうまく結合できたとしても、インプラント周囲炎が進行すれば、周囲の歯肉が痩せ、インプラントがぐらつく、または抜け落ちてしまうことが考えられます。
インプラント周囲炎は、歯周病とは違い、完治が難しいものです。
インプラント周囲炎の発症を抑えるためにも、治療前に歯周病が見られる場合にはしっかり治し、また再度歯周病になるリスクを抑えるために日々のメンテナンス方法を見直してから治療を受けるのが最適です。
3. 治療前に注意が必要なケース

インプラント治療ができないわけでありませんが、次のようなケースでは、治療前に注意が必要です。
3-1. 喫煙者
喫煙はインプラント治療において、大きなリスクです。
歯茎の毛細血管が収縮し、血行不良に陥る陥らせるため、インプラントと骨を融合させる手術がスムーズに進められなかったり、術後の傷の治癒を遅らせてしまう確率が上がります。
術中、術後ともにトラブルが出てくる可能性が高いため、禁煙を治療の必須条件としている歯科医も多いです。
また、治療後のメンテナンス期間に至るまで、禁煙は続ける必要があります。
3-2. 若年齢
発育中である子どもはインプラントができません。
インプラント治療は、インプラント体と骨を結合する治療です。
それを顎骨の発育途中で行うと、成長に伴い、骨の中へインプラントが埋没してしまう可能性があります。
個人差はありますが、18歳~20歳頃の骨の成長が止まってからであれば、治療を開始できるので、その時期を待ってするのがいいでしょう。
反対に治療ができる年齢の上限はありません。
60歳以上の高齢者でも、健康状態や骨の状態に問題がない場合は治療が可能です。
3-3. 金属アレルギー
インプラント治療で使われるチタンは、金属アレルギーを起こしにくいと言われています。
しかし、中にはチタンでもアレルギー反応を起こす方もいるので、金属アレルギーが心配な場合は、事前にパッチテストや血液検査を受けるようにするといいでしょう。
4. まとめ
インプラント治療を望んでも、残念ながらできないケースもあります。
健康状態に心配がある場合は、担当の歯科医とともに主治医に相談し、治療が可能であるかどうか判断してもらいましょう。
また、治療可能ではあるけれども、注意事項がある場合は、必ず医師の指示を守り、できる限り治療のリスクを避けることが大切です。








