歯が抜けたまま放置するとどうなる?歯がないことで起きる「3つの影響」

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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結論からいうと、歯が抜けたまま放置している場合には、口だけではなく全身に影響がでます。

なぜなら、身体の健康は口から始まると言われるほど、口の状態が全身の健康にも関わってくるからです。

 

とはいえ、歯が1本や2本無くなっても、他の歯があるから問題ないと思っている方もいるでしょう。

そこで今回は、歯が抜けたまま放置すると起きる「3つの影響」について、解説していきます。

目次

1 口のバランスが崩れる

歯がない部分があると、口のバランスが崩れていきます。

歯は、上下28本の歯で口のバランスを取っているのです。

 

そのため、1本の歯を失った場合でも放置していると、噛み合わせの位置や歯茎など、様々な口の変化が起きてきます。

 

また、失った歯の本数が多い場合には、残っている歯にかかる負担が大きく、口のバランスが崩れていくスピードも加速していきます。

 

次からは、歯が抜けた状態を放置していると、起きる3つの影響について解説していきます。

2 口への影響

2-1:歯に負担がかかる

歯は食べ物を噛み砕いたり、すり潰したりして細かくしていきます。

その時には、グッと力が歯にかかります。

 

それに加えて、噛む回数も合わせると歯にかかる負担は大きいです。

歯が1つでもなくなってしまうと、噛み合わせのバランスが崩れて他の歯に負担が大きくかかるようになります。

 

他の歯に強い負荷がかかると、歯の周辺の骨が溶けたり、歯茎が下がったりする原因になります。

 

また、歯への過度な負担は、歯が折れたり、根の先に膿ができたり、歯の寿命を短くすることにも繋がります。

2-2:歯が傾く、挺出する

歯は、隙間がある方へ動く性質があります。

例えば、右下の前歯から3番目の歯(犬歯)が抜けたままだと、その両隣の歯が少しずつ傾いてくるようになります。

 

その結果、噛み合わせの位置がズレてしまい、しっかりと噛めなくなる可能性が高いです。

 

他にも、抜けた歯の反対側の歯が伸びてくるケースがあります。

噛み合う歯がないと、押されることがないので、歯が伸びてきてしまうのです。

 

伸びてきた歯は、顎の骨の中に埋まっていた部分が露出するため、しみたり、虫歯になりやすかったりします。

 

また、歯が伸びて出てきたことで、反対側の他の歯に当たって、噛み合わせの位置がズレてしまう可能性が高いです。

 

伸びた歯が、反対側の歯に強く当たり続けると、痛みや炎症が出ることも少なくありません。

2-3:歯茎が凹んだ形になる

歯が抜けて放置していると、歯茎が凹んだ形になります。

歯がないと、噛む刺激が骨に伝わらなくなり、骨が痩せていきます。

 

骨が痩せると同時に、歯茎の位置も下がって、凹んだような形になり、見た目が悪くなりやすいです。

2-4:舌に癖がつきやすくなる

歯に大きな隙間ができると、無意識の内に舌が隙間を触っていることがあります。

歯の隙間に舌を入れる癖は、歯が押されて歯並びが悪くなる原因になります。

 

舌癖が改善していないのに、治療をしても歯を押す癖が残ってしまい、出っ歯や受け口などの歯が前に出ているような歯並びになる可能性が高いです。

2-5:発音しにくくなる

歯がない部分がある場合には、言葉を発する時に、空気が隙間から漏れてしまい、ハッキリとした発音ができなくなります。

 

特に「サ行」「タ行」「ラ行」などは、狭い隙間に空気が通ることで発音できるようになっています。

 

大きな隙間がある状態では、ハッキリと発音できず、他人からも言葉が聞き取りにくくなる場面が多くなるでしょう。

2-6:細菌感染が起きる

歯が抜けてから、しばらくは傷口が開いたままです。

そのままの状態にしておくと、傷口から菌が侵入して、顎の骨を溶かすことがあります。

 

また、完全に歯が抜けていなくて、根だけが歯茎の中に残っている状態では、細菌が根で増殖して、膿ができたり、腫れたりといった症状を引き起こしやすいです。

3 身体への影響

歯がない状態を放置していると、身体には次のような影響がでます。

3-1:老け顔になる

歯がない状態では、しっかりと噛めず今までに比べて噛む回数が減少します。

噛む回数が減ることで、口周りの筋肉が使われなくなり、筋力が低下していきます。

 

特に、頬の筋肉が低下すると、頬の位置が下がって老け顔に見えるようになるのです。

 

また、歯を失った部分は骨がなく、歯茎が凹んだ状態で皺が集まりやすくなります。

 

そのため、歯がない期間が長いと、口の筋肉が低下や皺が目立つようになり、以前より顔が老けて見えるのです。

3-2:脳への刺激が減る

咀嚼(噛むこと)は、痴呆防止になっている可能性が高いことが、研究で報告されています。

口の周りには、多くの神経があり、脳へと繋がっている状態です。

 

特に、口に食べ物を入れて咀嚼をした刺激は、歯の根の周りにある、歯根膜や舌などからの感覚情報や多くの筋肉からの情報を、脳に送る働きをします。

 

また、良く噛んで食事をすることで、視覚聴覚味覚嗅覚触覚といった五感の多くの情報が脳に送られて、脳のあらゆる部位を活性化させます。

 

脳が活性化することは、痴呆予防になるのです。

 

一方で、歯がないと咀嚼の回数が減って、脳へ送る情報が少なくなり、活性化が弱まります。

 

脳の活性化が弱まると、記憶をためる部分である、海馬の神経細胞が減ってしまい、痴呆や記憶障害などを引き起こす原因になります。

3-3:消化器官に負担がかかる

歯がない状態では、食べ物を細かく噛み砕いたり、すり潰したりすることができなくなります。

特に、多くの本数の歯がない場合には、噛み合う部分も少なく、食べ物を丸呑みしていような状態です。

 

そうなると、食べ物を消化するのに多くのエネルギーが、必要になります。

食べ物を消化するには、エネルギーと時間がかかるため、消化器官(胃や腸)に大きな負担になるのです。

 

また、消化の助けになる働きをする唾液は、噛むことでも分泌されます。

歯がなく、噛む回数が少なくなると唾液の分泌量も減り、消化不良を起こして、体調が悪くなる原因になります。

3-4:ストレスを感じやすくなる

「幸せホルモン」とも呼ばれているセロトニンは、咀嚼によって増加することがわかっています。

 

歯がなく、しっかりと噛めない状態では、セロトニンの分泌が減少して、不安な気持ちになったり、落ち込みやすくなったりしやすいです。

 

また、脳には、扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる快か不快かを判断する部位があります。

 

しっかりと咀嚼できると場合には、扁桃体の活動を抑えられて、不快という信号が大脳に送られにくくなり、ストレスを感じにくくなります。

 

逆に、咀嚼が正しく機能していないと、扁桃体の活動が活発になって、ストレスを感じるようになるのです。

4 治療への影響

歯を失ったまま放置していると、治療では次のような影響がでます。

4-1:治療費が高額になる

例えば、歯がない部分の両隣の歯が傾いている場合には、傾いた歯を元の位置に戻す治療が必要です。

 

歯を元の位置に戻すためには、矯正治療を行います。

矯正治療は自費になるので、治療費は自己負担です。

 

矯正治療は、部分的に歯を動かすだけでも、約20万円の費用がかかるのが一般的です。

 

矯正治療の完了後には、歯を補充する治療も必要になるため、費用が多くかかります。

他にも、歯がないまま放置していたことで、治療が増えます。

 

例えば、歯を補充する治療で、インプラントを希望したとします。

しかし、長い期間歯がなかったため、顎の骨がなく歯茎も下がった状態です。

 

インプラントは、人工歯根(インプラント)を顎の骨の中に埋めるので、骨の量や厚さが

重要です。

 

骨の量や厚みが足りない場合には、インプラント治療代とは別に、骨を足す手術費や材料費が必要になり、費用が高額になりやすいです。

4-2:治療期間が長くなる

口のバランスが、崩れてしまうと元に戻すのに時間がかかります。

 

特に、歯がない期間が長いほど、どんどん口のバランスが悪くなるので、治療する部分も増えていきます。

 

歯がない部分の治療を開始しようと思っても、まずは、その周りの組織(歯、歯茎、骨)を改善することから始まることが多いため、治療期間が長くかかりがちです。

5 歯を補充する治療法は「3種類」

歯を補充するには、次の3種類の治療法があります。

5-1:ブリッジ

ブリッジは、歯がない部分の両隣の歯を削って、繋がった被せ物を装着する治療法です。

歯を支えにしているので、噛み心地は良いです。

 

ただ、両隣の歯は、負担がかかりやすく、健康な歯を削って被せ物を作製する必要があります。

5-2:入れ歯

入れ歯は、歯がない部分に歯と歯茎の形をした被せ物を作り、残っている歯に取り付ける治療法です。

 

入れ歯には、バネが付いていて、残っている歯に引っかけることで、維持することが可能です。

 

ただ、入れ歯は、歯茎を支えにして咀嚼をするため、歯茎に入れ歯が当たって痛みが出やすく、金具を付けている歯は負担がかかりやすいです。

 

また、金属のバネが位置によって、見た目が悪くなります。

5-3:インプラント

インプラントは、人工歯根を顎の骨の中に埋めて、その上に被せ物を取り付ける治療法です。

インプラントは、他の治療法にはない、歯と同じような機能をすることが可能です。

 

インプラント治療では、他の歯を削ったり、負担をかけたりすることがなく、自身の歯の寿命を奪うことはありません。

 

また、インプラントは見た目が優れているのも特徴です。

 

特に、金属を使用していないセラミック(お茶碗の陶器のような素材)は、自身の歯に近い艶や色を表現できるため、インプラントとはわかりにくい見た目です。

6  負担が大きくならないうちに歯科医院へ

歯がない状態のまま放置していると次のような影響がでる可能性が高いです。

 

【口への影響】

・他の歯に負担がかかって、折れたり痛みがでたりする

・歯が傾く、挺出する

・歯茎が凹んだ形になって見た目が悪くなる

・舌癖がつきやすくなる

・発音しにくくなる

・細菌感染が起きる

 

【身体への影響】

・老け顔になる

・脳への刺激が減る

・消化器官の負担

・ストレスを感じやすくなる

 

【治療への影響】

・治療費が高額になる

・治療期間が長くなる

 

歯が抜けたままでは、口や身体だけではなく、大切な時間やお金まで大きく影響していきます。

 

歯が抜けた時は、放置せずに早めに歯科医院に相談にいきましょう。

 

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