インプラントは変色する?美しい見た目を維持したい方へ

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

費用や時間をかけてインプラント治療したからには、見た目が美しいまま長く使い続けていきたいですよね。

 

しかし、自身の歯や差し歯のように変色するのが不安な方もいると思います。

 

そこで今回は、インプラントが変色しない、美しい見た目を維持する方法について解説していきます。

目次

1 インプラントが変色する理由

そもそも、インプラント自体が変色することはありません。

 

インプラントが変色するのではなく、インプラントの被せ物や周辺の歯茎が次に紹介する状態であれば、変色する可能性が高いです。

1−1:被せ物がプラスチック製

まず、インプラントは大きく分けて、次の3つの構造に分かれているのが基本です。

 

・顎の骨の中に埋めて、歯の根っこのような役割を持つ「インプラント」

・インプラント体と被せ物を繋ぐ役目の「アバットメント」

・アバットメントの上に取り付ける「被せ物」

 

この3つの構造の中で、変色するのは被せ物の部分だけになります。

インプラント治療が自費診療になるので、被せ物も自費の被せ物を使うのが基本です。

 

自費の被せ物にはいくつか種類があって、費用を抑えるためにハイブリットセラミックを被せ物として選んでしまうと、変色して見た目が悪くなる可能性が高いです。

 

ハイブリットセラミックは、セラミックプラスチックの2つを配合してできている被せ物のことです。

 

プラスチックには、水分を吸収する性質があり、コーヒーやワインなどの色の濃い水分をも取り込んでしまうと、歯を磨いても取れず被せ物に染み込んでしまいます。

 

一度、染み込んだ着色を除去するのは難しく、見た目が気になる場合には被せ物を作り直すしかありません。

1−2:歯茎からインプラントが透けている

インプラントは、チタンという体に馴染みやすい金属を使用して、作られている場合がほとんどです。

 

そのため、インプラントを入れた位置によっては、歯茎から金属が透けて見えてしまい、インプラントが変色したと感じやすいです。

 

金属が歯茎から透けて見えるようになると、歯茎が黒くなったように感じて見た目が悪くなります。

 

1−3:インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、インプラントの歯周病のことです。

 

症状としては、インプラントを支えている周辺の顎の骨が溶けていく病気で、歯茎が炎症を起こして赤黒く変色するようになります。

 

インプラント周囲炎が深刻化した場合には、周辺の骨がほとんど溶けてなくなるので、インプラントを支えきれず抜けてしまう可能性が高いです。

 

また、インプラント周囲炎を引き起こすと、歯茎の位置が下がって金属の部分が見えるようになります。

 

歯が長くなったような見た目になるだけでなく、ギラっとした金属の部分が大きく見えて、不自然な見た目になりやすいです。

 

2.インプラントの美しさを保つ「7つの条件」

インプラントの美しさを保つには、次の「7つの条件」が大事になります。

2−1:変色しない被せ物を選ぶ

インプラントの被せ物として使われる材料は、主に次の3つが一般的です。

 

・ジルコニア

・オールセラミック

・メタルボンド

 

それぞれの材質の特徴について、簡単に説明していきます。

 

・ジルコニア

 

ジルコニアは、人工のダイヤモンドと呼ばれるほど、強度があり美しい仕上がりになる材質です。

 

耐久性の強さから歯の被せ物意外に、スペースシャトルの耐熱タイルやF1で走る車のブレーキ、人工関節などにも使われています。

 

ジルコニアは、表面が滑らかになっていて、汚れが付きにくいのが特徴です。

 

コーヒーやワインといった色の濃い飲み物でも水分を吸収しないので、着色しずらいです。

 

ただ、セラミックに比べると歯の透明感を出すのが難しく、奥歯にインプラントをした時の被せ物として使用されるケースが多いです。

 

他にも、ジルコニアは外側だけでなく内側もジルコニアを使っていて、被せ物に境目がないため、歯茎が下がった時にインプラントの金属が目立ちにくくなります。

 

ジルコニアは金属アレルギーがある方でも、安心して使うことができます。

 

・オールセラミック

 

オールセラミックは、ハイブリットセラミックとは違って、セラミックだけで作っている被せ物のことです。

 

オールセラミックには、陶器のような艶(つや)と自然な光を透過するような透明感があり、自身の歯と変わらない美しさにすることが可能です。

 

従来のセラミックは、衝撃に弱く割れやすいのがデメリットでした。

 

しかし、現在では、技術の進歩と共にセラミックの質も向上して、強度のある物もありますが、ジルコニアよりは強度が劣ります。

 

また、セラミックは汚れが付きにくく着色しにくいので、長く見た目の美しさを維持することが可能です。

 

特に審美性が優れているため、前歯のインプラントで使われるケースが多く、他の歯を傷つけない柔軟性と耐久性を持ち合わせた性質があります。

 

ジルコニアと同じように金属を使用していないので、金属アレルギーの方でも使用することができます。

 

・メタルボンド

 

メタルボンドは、外側にセラミックを貼り付けて、内側部分には金属を使っている被せ物のことです。

 

外側の表面には、セラミックを使っているので、自身の歯に近い見た目にすることができ、変色しにくいのが特徴です。

 

一方で、内側には金属を使用していて、強度があり割れやすいといったトラブルがほとんどありません。

 

しかし、内側に金属を使っていることもあり、セラミックに比べると透明感が無く、歯茎が下がった時には根元の部分の金属が見えることがあって、見た目が悪くなりがちです。

 

今までメタルボンドは、奥歯のインプラントの被せ物として使う場面が多くありました。

 

技術の進歩とともに、強度のあるオールセラミックの開発が進んでいるため、現在ではメタルボンドを積極的にすすめてくる歯科医院はほとんどありません。

 

上記の3つの被せ物は、歯科医院によって費用に多少の差があります。

担当医と話し合い、自分に合った被せ物を選ぶのがオススメです。

2−2:ジルコニアインプラントを選択する

金属のインプラントは、歯茎の中から透けて見えることがあり、見た目の悪さに影響を及ぼします。

 

特に、歯茎の薄い前歯では、ジルコニアインプラントを選択する方も少なくありません。

 

ジルコニアインプラントは、インプラント体やアバットメントがジルコニアの素材でできていて、歯茎から透けても目立ちにくいのが魅力です。

 

ジルコニアインプラントには、1ピースタイプ2ピースタイプの2つの種類があります。

 

1ピースタイプの場合には、インプラントとアバットメントが一体化していて、部品が繋がっているので、強度に優れている特徴があります。

 

ただ、このタイプはアバットメントが折れるといったトラブルが起きた時に、インプラント体も除去するデメリットがあります。

 

2ピースタイプの場合は、インプラントとアバットメントが別々になっていて、アバットメントが破折しても新しい部品に交換して修理することが可能です。

 

なお、ジルコニアインプラントは、メーカーによっては研修を受ける必要があったり、費用が高額になったりするので、取り扱っている歯科医院が少ないのが現状です。

 

2−3:歯科医師の実績や技術が豊富

インプラントの見た目を美しくするためには、治療をする歯科医師の技術や実績が重要です。

 

例えば、前歯のインプラントは奥歯のインプラントより難しいと言われています。

 

それは、前歯の歯茎や顎の骨は薄くて厚みがないことがほとんどで、インプラントを入れた後に、予想以上に歯茎が下がって金属が見えてしまったり、歯茎や骨のボリュームが足りない不自然な見た目になったりするトラブルが起きやすいからです。

 

こういったトラブルは、知識や技術、経験のなさから起きる場合がほとんどです。

 

そのため、インプラント治療をする時には、実績が豊富で技術力のある歯科医師がいる医院で行うようにしましょう。

2−4:セルフケア

セルフケアは、自宅で行う歯磨きのことです。

 

ジルコニアやセラミックといった被せ物は、表面が滑らかになっていて、汚れや着色が付きにくいです。

 

とはいえ、被せ物を毎日かたい歯ブラシで力強く磨いたり、研磨剤が多く含まれている歯磨き粉で強く磨いたりすると、表面のコーティングが取れてしまい、艶がなくなって着色や汚れが付きやすくなってしまいます。

 

また、過度な歯磨きは歯茎を傷つけて、位置を下げてしまいインプラントの金属部分が見えてしまう原因になります。

 

そのため、治療後は歯科医師や歯科衛生士から、自分に合った歯磨き方法を教えてもらい実践するようにしましょう。

 

自分の口の状態に合った歯磨きの仕方や道具を知ることで、効率的に歯磨きができて、口の中を清潔に保つことが可能です。

2−5:定期的なプロケア

プロケアは、歯科医院で受けるクリーニングのことです。

 

インプラントの被せ物にハイブリットセラミックの材質を使っている場合には、着色が付きやすく茶色や黒い汚れが表面に残っていることがあります。

 

着色は被せ物の表面にこびりついているので、歯磨きでも落ちない場合も少なくありません。

 

プロケアでは、専用の機器を使って着色をキレイに除去して、キレイな状態にすることができます。

 

ただ、被せ物に着色が染み込んでいる場合には、完全に汚れを除去することは難しいケースもあります。

 

定期的なクリーニングは、セルフケアだけでは取れない細かな汚れを取り除けるため、インプラントの美しさを保つには欠かせません。

2−6:禁煙する

タバコに含まれているニコチンやタールには、歯茎の血管を収縮させたり免疫力を低下させたりと、口の中に多くの影響がでやすいです。

 

特にタバコが原因で、細菌の数が増殖してインプラント周囲炎を引き起こしやすくなります。

 

また、タバコのヤニは、インプラントの被せ物や歯茎の表面にこびりついて、黒色や黄色の汚れが目立つようになります。

2−7:健康であること

健康であることは、キレイなインプラントを長く保つ秘訣でもあります。

 

例えば、糖尿病の持病がある方は、口の中が乾きやすくなる他に、歯茎の溝から出てくる液に多くの糖を含んでいて、歯周病を引き起こすリスクが高い状態です。

 

「歯周病のリスクが高い」「インプラント周囲炎のリスクも高い」ということになり、トラブルが起きやすいです。

 

健康な方は、リスクが低い少ないぶん、トラブルが起きる可能性も低くなり、長く良い状態でインプラントを使い続けることが可能です。

 

もちろん、持病がある方でも、しっかりと病気をコントロールすることができれば大きなトラブルもなくインプラントを長期的に使用することはできます。

3インプラントを美しいまま使い続けよう!

インプラント自体が、変色することはありません。

インプラントに取り付けている被せ物や周辺の歯茎が変色する場合があります。

 

インプラントの変色を防ぐには、次の7つの条件がポイントになります。

 

・変色しない被せ物を選ぶ

・ジルコニアインプラントを選択する

・歯科医師の実績や技術が豊富

・セルフケア

・定期的なプロケア

・禁煙する

・健康であること

 

インプラントは、歯を失った部分を補う治療の中でも見た目や機能が優れている治療法で、しっかりとケアをすれば、美しい見た目のまま長期間に渡って使い続けることが可能です。

 

変色を気にせず食事を楽しめるインプラントで、美しい口元を手に入れましょう。

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