【オールオン4の注意点】よくあるトラブルと予防法

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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・総入れ歯がガタガタして使えない

・歯を全て失うことになってしまった

 

などという状況にある方は、オールオン4という治療法ができる可能性があります。

 

しかし、オールオン4はインプラント治療の中でも特殊で、限られた歯科医院でしかできない治療法です。

 

実績や経験がない歯科医院でオールオン4をしてしまうと、トラブルの原因になり後悔する可能性もあります。

 

そこで今回は、オールオン4でのトラブルと予防法について解説していきます。

目次

1 オールオン4で起きやすいトラブル

オールオン4は、上の顎や下の顎に1本も歯がない状態のところに、4本のインプラントを埋めて見た目や機能を回復させる方法です。

 

今までは上下どちらかの歯を全て失った場合、8本〜10本のインプラントを埋めるのが一般的でした。

 

しかしその場合には、傷口の治りが遅く広範囲にメスを入れる必要があり、体に大きなダメージを与えやすいです。

 

一方でオールオン4は、手術範囲が狭くでき体への負担が少ないのが特徴です。

 

とはいえ、オールオン4は完璧な治療法ではなく、場合によってはトラブルを起こすケースも少なくありません。

 

オールオン4の治療でトラブルが起きやすいのは、次の4つの時期になります。

 

・術前

・術中

・仮歯の装着

・術後

 

次からは、この4つの時期にどんなトラブルが起きるのかについて、詳しく解説していきます。

2 術前のトラブル「オールオン4ができない」

オールオン4ができないケースは、次の通りです。

2−1:全身疾患がある

持病によっては、インプラント治療ができない場合があります。

 

特に、重度糖尿病や高血圧などの持病がある方は、インプラント治療ができないケースも少なくありません。

 

重度糖尿病は、歯周病になるリスクが高く、インプラント周囲炎になる可能性も高いからです。

 

また、高血圧の状態でインプラントをした場合には、麻酔や手術の刺激によって急激に血圧が上下して、脳梗塞や心筋梗塞を発症する危険性があります。

2−2:ヘビースモーカー

1日の喫煙の回数が多い方は、オールオン4ができない可能性が高いです。

 

タバコに含まれる有害物質には、歯茎の血液の循環を妨げて、免疫力の低下を引き起こします。

 

特にニコチンやタールといった有害物質は、歯周病を誘発させるリスクやインプラントが安定せずに抜け落ちてしまうリスクがあります。

 

喫煙は、インプラントが長持ちしない確率が高く、禁煙ができない場合はインプラント治療を断られる歯科医院も少なくありません。

2−3:薬の服用

インプラントは、顎の骨を支えにしている治療です。

 

骨の再生や破壊に影響が出るような薬を服用している場合は、インプラント治療が難しくなります。

 

他にも、血液をサラサラにする薬を服用している方は、手術時の出血が止まりにくく傷口の治りが遅い傾向があります。

 

傷口の治りが遅いと、細菌感染を引き起こしてインプラントが骨に固定せずに抜けてしまうケースも少なくありません。

 

そのため、服用している薬によっては、オールオン4ができないと判断されます。

2−4:設備・技術不足

設備・技術不足は、歯科医院側の問題になります。

 

例えば、一般的なインプラント治療では、歯が生えている方向に沿ってインプラントを埋めていくのが基本です。

 

オールオン4では、骨が足りない部分を避けて斜めにインプラントを入れる場合があります。

 

その時には、インプラントを入れる周辺の血管や神経の位置を、正確に把握しているかが重要です。

 

そういった口の状態を把握するには、CTが必須になります。

CTは骨の厚みや量、神経の位置など、さまざまな部分を立体的に確認できる機器です。

 

しかしCTは、高額な機器で設置していない歯科医院もあり、オールオン4を行っていないことがあります。

 

また、オールオン4は、4本のインプラントをどの角度で入れるか、負荷のかけ方などの知識や技術が必要です。

 

総入れ歯のように歯茎を支えとして噛み合わせのバランスを調整するのと、インプラントを支えにして噛み合わせを調整していくのでは、また別の知識や技術力が必要不可欠になります。

 

そのため、今まで通っていた歯科医院でオールオン4をしたいと思っても、設備や歯科医師の問題で治療を断られるケースも珍しくありません。

2−5:治療費が高額になりやすい

インプラント治療は、保険適応外になります。

 

歯を失った本数に対して近い数のインプラントを入れる従来の方法と比べると、オールオン4の治療費は、安いと言われています。

 

しかし、一般的なインプラント治療で使用するインプラントとは違う形の物を使ったり、手術方法が違ったりするため、大幅に費用が安くなるわけではありません。

 

また、費用は安くて片側100万円〜と設定している歯科医院がある一方で、片側600万円〜と設定しているところもあります。

 

この費用の差は、使用するインプラントメーカーやインプラントの上に取り付ける被せ物の種類が原因です。

 

例えば、ハイブリットセラミックの材質を使った場合は、プラスチックとセラミックを混ぜた被せ物になるので、少し費用が安く抑えられます。

 

プラスチックは、加工がしやすい特徴がありますが、水分を吸収して着色や汚れが付きやすくなる欠点があります。

 

一方で、セラミックだけを使用した被せ物の場合には、費用が高額になりやすいです。

 

しかしその分、自分の理想とする歯の白さを追求でき、美しい見た目にできるのが特徴です。

3 オールオン4術中のトラブル

オールオン4の術中には、次のようなトラブルが起きる可能性があります。

3−1:インプラントが骨に固定しない

今まで総入れ歯を使っていた方や虫歯、歯周病が原因で歯を失う方の骨は、柔らかいケースが多いです。

 

柔らかい骨にインプラントを入れても、すぐに固定できません。

例えば、柔らかい土の中に木を植えても、すぐに木は倒れてしまいます。

 

それと同じで、柔らかい骨の中にインプラントを入れてもしっかりと固定されずにグラグラと動いて、抜け落ちてしまう可能性があります。

3−2:血管や神経の損傷

インプラントを入れる時には、専用のドリルで骨に穴を空けていきます。

安易にドリルを進めてしまうと、血管や神経を傷つけてしまう恐れがあります。

 

その結果、血管を傷つけて大量出血をしたり、口の一部に麻痺が残ってしまったりする事故が起きることもあります。

3−3:インプラント手術のレベルが低い

インプラント手術では、手術を行う歯科医師だけでなく、器具の受け渡しをするアシスタント、麻酔をした後の全身管理をする麻酔科医などのチームで取り組むのがほとんどです。

 

オールオン4の場合には、手術当日に仮歯が入ることもあり、歯科技工士も手術に立ち会うケースも少なくありません。

 

しかし、治療に関わる人が多ければそれだけ人件費がかかります。

 

歯科医院によっては、人件費を節約するために手術時に人を少ない状態で行う場合があります。

 

その結果、手術がスムーズにいかずインプラント事故を起こす原因になります。

4 仮歯時期のトラブル

オールオン4では、インプラント手術をした当日に仮歯が入るのが特徴です。

そのため、仮歯を付けている期間は、次のようなトラブルが起きやすいです。

4−1:仮歯が壊れる

手術後は仮歯を装着するので、しっかりと噛めるようになります。

 

とはいえ、噛めるようになったからといって、固い食べ物を食べると仮歯が壊れてしまいます。

 

仮歯が壊れると、インプラントの固定力が弱まり骨と結合しづらくなります。

なぜなら仮歯には、ギブスの役割があるからです。

 

例えば、腕を骨折した時には、骨がくっつくようにギブスで固定させた状態にします。

仮歯は、骨とインプラントを固定させるためのギブスと同じ大事な役割があります。

4−2:時間差で腫れや痛みが出る

オールオン4は、骨を足す処置を極力避けて行うので、痛みや腫れが出にくいと言われています。

 

しかし、人によっては凸凹した骨の形を整えるボーンリダクション(骨切除)の処置が必要になります。

 

骨を削った部分は、傷口を直そうと細胞が集中するため、痛みや腫れが出やすいです。

 

また、人によって手術当日は症状が出ずに2、3日後に痛みや腫れが出る可能性があります。

4−3:インプラントが緩くなる

「ゆるむ」とは、インプラントが「動く」ことを意味しています。

 

インプラントを入れてから500ミクロン〜0.5ミリ動くと、骨と結合しないと言われています。

 

仮歯が入ったことで顔の筋肉が正常に動くようになり、予想以上の力が仮歯にかかってしまうことがあります。

 

そうなると、過度な力がインプラントにかかりゆるんでしまい、骨と結合せずに抜け落ちる可能性が高いです。

5 術後のトラブル

インプラントは、入れたら終わりではありません。

歯が入った後に何もせずにいると、次のようなトラブルが起きる可能性があります。

5−1:インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、インプラント周辺の骨を溶かしていく病気のことです。

 

骨を溶かす原因は細菌で、口の中に歯垢といった汚れが多く残っていると、細菌が繁殖してインプラント周囲炎を引き起こす可能性が高くなります。

 

特にインプラント周囲は、細菌からの抵抗力が弱く、感染すると重症化しやすいです。

 

細菌感染した範囲が広く、感染部位を取り除くのが難しいと判断された場合には、インプラントを撤去することがあります。

5−2:スクリューのゆるみ・破折

オールオン4では、インプラントに被せ物を装着する時にスクリュー固定をするのが一般的です。

 

スクリュー固定は、インプラントと被せ物をネジで止める方法のことです。

 

スクリュー固定は、過度な力がかかった時にネジがゆるんでインプラントにダメージがかかるのを防ぐ役割があります。

 

スクリューがゆるんでいることに気づくのは難しく、そのままの状態で生活していると細菌が侵入したり、ネジが折れたりする原因になります。

5−3:インプラントの破折

インプラントが折れる原因は、主に次の2つのパターンがあります。

 

・規定外のインプラントを使用していた

・噛み合わせのコントロールができていない

 

・規定外のインプラントを使用していた

規定外のインプラントとは、世界的にメジャーでない、実績数が少ないインプラントのことです。

 

インプラントが一般的な相場より格安でできる医院は、粗悪な材質のインプラントを使用している場合があります。

 

インプラントの材質が悪いため、耐久性がなく折れてしまうことも少なくないでしょう。

 

・噛み合わせのコントロールができていない

 

オールオン4は、4本のインプラントで繋がった被せ物を支えています。

 

一部分だけに過度な力がかかるような噛み合わせになっていると、インプラントが力に耐えきれずに折れてしまう恐れがあります。

6 オールオン4のトラブルを防ぐ「4つの方法」

トラブルを防いで治療を成功させるためには、次の4つの方法が効果的です。

6−1:術前の予防法「健康である、病気をコントロールする」

オールオン4ができるかは、口だけでなく全身的な健康状態も重要です。

 

持病もなく健康な状態であれば、問題なくインプラント治療ができるケースがほとんどです。

 

また、持病があっても自身でしっかりと管理しコントロールできていれば治療可能ですが、自己判断するのは危険です。

 

持病があり薬を服用しているときは、内科の担当医と相談して治療を進めていくのが大切になります。

6−2:術中の予防法「設備や治療の体制が整っている歯科医院を見つける」

手術中のインプラント事故を防ぐには、歯科医院の設備や体制が大切です。

 

・口の状態を立体的に把握できるCT機器

・オペ室の完備

・十分な人数で手術に挑んでいる

 

など、手術をするのに十分な環境が整っている歯科医院を選ぶようにしましょう。

 

現在では、多くの歯科医院でホームページがあります。

 

どんな設備があるのかオールオン4の症例があるのかなどを事前に確認しておきましょう。

6−3:仮歯の時の予防法「固い食べ物は食べない」

仮歯を付けた後は、固い食べ物は食べないようにしましょう。

 

現在では、技術の進歩によってインプラントの質が上がり、骨とくっつく期間を短くできるインプラントも存在します。

 

とはいえ、骨折した部分が治るまでに時間がかかるように、骨とインプラントがしっかりとくっつくには時間がかかります。

 

担当医の指示によっても変わりますが、手術後2ヶ月は食事内容に気をつけて、安静に過ごすようにしましょう。

6−4:手術後の予防法「定期的に検診をしながら口内コントロールをする」

オールオン4を行い見た目や機能を回復できても、すぐにだめになってしまっては意味がありません。

 

トラブルなくインプラントを長く使い続けるには、毎日の歯磨きと定期的な検診は欠かせません。

 

歯科医院でのケアは、毎日の歯磨きでは取りきれない汚れを落とすことができ、清潔な状態を維持できる効果があります。

 

また、定期的にスクリューの状態を確認し、適切な時期にパーツを変えることでトラブルが起きるリスクが低くなります。

7 トラブルを最小にして安全に「オールオン4」を受けよう

オールオン4は、見た目と噛む機能を短期間で回復させる特殊なインプラント治療法です。

 

そのため、全ての歯科医院でできる治療ではありません。

また、全ての方が対象の治療法でもありません。

 

特殊な治療法だからこそ、歯科医院を選ぶのが大切になります。

 

トラブルが起きて治療を後悔しても、今までかけてきた時間は戻ってきません。

 

この歯科医院でオールオン4をしたい!と思える信頼できる医院で治療を受けるようにしましょう。

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