これまでは虫歯や歯周病、外傷などの原因で歯を失ってしまった場合の治療法は、ブリッジや入れ歯が一般的でした。ところが、近年では機能面や見た目の面からインプラントを選択する方が増えています。

インプラントは優れた治療法ではありますが、全てのケースに適しているわけではありません。場合によっては、他の治療法の方が適している可能性もあります。

この記事では、後悔しないために知っておきたい6つのことや、歯科医院を選ぶポイントについて解説します。

インプラン トとは、抜歯が必要になるなど歯根がない場合に行われる治療法で、人工歯根をアゴに埋込み、失った歯を補います。

インプラントの主なメリットは下記の通りです。

・健康な歯を削る必要がなく、負担も最小限におさえられる

・歯を支える力は本来の歯と変わらない

・天然の歯と変わらない感覚・機能・見た目が得られる

・入れ歯と違い違和感がない

従来の治療法と比べてメリットの多いインプラントですが、完璧な治療法ではありません。インプラント後に後悔しないためには、おさえておくべき点が6つあります。

トラブルを防ぐためには、インプラントを受ける前に下記の6つのポイントを確認しておくとよいでしょう。

虫歯などが原因で、抜歯をしてインプラントを入れる場合、本当に抜歯が必要かどうか確認しましょう。歯科医師に抜歯をすすめられたけれど、実は歯を抜く必要はなかったというケースがあります。

インプラントは本来の歯に近い感覚の人工歯ですが、やはり天然の歯にはかないません。可能な限り歯を残し、歯の神経を消毒する根管治療を受けるとよいでしょう。

ただし「歯がグラグラしている」「歯が修復できない状態で折れている」のどちらかに当てはまる場合は、抜歯が必要です。

・歯がグラグラしている

重度の歯周病により、治療しても歯のグラつきを治せない場合は、抜歯が必要です。

・歯が修復できない状態で折れている

残っている健康な歯に負担をかけないために、抜歯が必要です。肉眼では、歯の状態を正しく判断できないため、CTやマイクロスコープで確認します。

もし、上記2点にあてはまらないのに、抜歯してインプラントをするようすすめられた場合は、セカンドオピニオンを受けて、抜歯の必要性を確認するのも方法のひとつです。

インプラントは、ブリッジや入れ歯と違い、外科手術が必要な治療です。人工歯根をあごの骨に埋めるため、局所麻酔を使用し、手術をします。麻酔の効果により、手術中は痛みをほぼ感じませんが、手術後に痛みや腫れ、内出血、発熱が起きる場合があります。

さらに、インプラントにより下顎管や上顎洞、鼻腔に穴が開く、神経を傷つけてしまい麻痺が起こる、大量に出血するといったリスクも考えられます。

インプラント手術では、人工歯根をあごの骨に埋め込み、骨と人工歯根がくっつくことで土台が安定します。しかし、まれに体質により骨とインプラントがくっつかずに安定しない人がいます。

このような場合は、インプラント以外の治療法を検討しなければいけません。虫歯をはじめとする歯の異変を長期間そのままにしていると、周辺の骨の状態が回復しにくく、インプラントが失敗するリスクが高まります。

ブリッジや入れ歯での治療は健康保険が適用されますが、インプラントは自由診療のため適用されません。インプラントを受ける際は、高額の治療費がかかるものとして、リサーチや準備をしておきましょう。

また、自由診療のため、歯科医院によって治療費用が異なります。インプラントの材質や歯科医院のあるエリアなど、さまざまな要因で決まります。

しかし、治療費用だけで歯科医院を選ぶのはおすすめしません。安い歯科医院のなかには、インプラントの経験に乏しいなど、適切な治療ができないところも含まれているからです。

いくつかの歯科医院に相談したり、ネットでリサーチしたりして、無理のない治療費用で適切な治療をしてくれる歯科医院を探しましょう。

インプラント治療は、あごの骨に人工歯根を埋め、定着するのを待って次の段階に進むため、入れ歯やブリッジと比べて、治療期間が長くかかります。

あごの骨の状態に応じて手術するので、CTスキャンなどの検査は必須。かみ合わせの確認なども合わせると、歯の状態や口内環境などによりますが、トータル３ヶ月～１年ほどかかります。

歯が欠けた状態をなるべく短くしたい場合は、仮歯に対応している歯科医院で治療を受けるのも方法のひとつです。

手術が完了した後も、定期的なメンテナンスは必須です。メンテナンスを怠ると、インプラント歯周病などが原因で、せっかく入れたインプラントが抜け落ちてしまう可能性があります。

歯磨きはもちろん、歯間ブラシやデンタルフロスを使った日常的なお手入れは欠かせません。さらに、数ヶ月に１回のペースで歯科医院に通い、口腔内のメンテナンスをしてもらうとよいでしょう。しっかりケアすることで、インプラントを長持ちさせられます。

インプラント治療を成功させるには、適切な歯科医院を選ぶのが重要です。インプラント治療を受ける歯科医院とは、治療期間はもちろん治療後のメンテナンスでも関わることになるので、しっかりとよい歯科医院を見極めましょう。

歯科医院を選ぶ際は、次の4点をチェックしましょう。

インプラントは高度な技術が要求される手術なので、歯科医師の技術によって結果に大きな差が出る可能性があります。歯科医院を選ぶ際には、担当する歯科医師の保有資格や所属学会を確認しましょう。

「日本口腔インプラント学会」が独自に定める資格である「インプラント専門医」「インプラント指導医」は、多くの審査基準をクリアしないと取得できません。取得をしている医師は、一定レベルの知識やスキルを持っているので、歯科医院を選ぶ際の判断基準のひとつになります。

さらに、インプラント治療の実績数も重要なポイントです。実績が多ければ、さまざまな症例に触れているため、より適切な治療ができる可能性が高いでしょう。

歯科医院のホームページに、資格や所属学会、インプラント治療実績などが掲載されている場合も多いので、事前にチェックしておくのをおすすめします。

納得してインプラント治療を受けるには、治療前の丁寧なカウンセリングや説明が不可欠です。不安や疑問をヒアリングしたうえで、メリット・デメリットやリスク、インプラント以外の治療法の提示など、丁寧に説明してくれる歯科医院がよいでしょう。

さらに、治療費用や期間、保証期間など、インプラント治療を検討するうえで必要な情報を、しっかり伝えてくれるかも重要です。インプラント治療は自由診療のため、歯科医院によって条件等が大きく異なります。トラブルを防ぐためには、必要な情報を確実に伝え、確認しながら話を進めるクリニックを選びましょう。

安全かつ適切なインプラント治療をするには、院内環境が非常に重要です。

インプラントは、口腔内の状況を把握することが大切なので、検査設備の充実度が治療の質につながります。口腔内スキャナーや3DCTなど、口のなかの状態を立体的に検査できる機器を使用している歯科医院がよいでしょう。

また、インプラント治療では外科手術をするので、感染対策や衛生管理が徹底しているかも確認が必要です。

インプラント体とは、インプラントに使用する材料のことです。インプラント体の種類は非常に多く、さまざまな材質や価格帯のものがあります。

インプラント体の品質は、長く適切にインプラントを維持するにあたり非常に重要です。あまりにも安い治療費で、インプラント治療を行っている歯科医師は、低品質なインプラント体を使用しているケースがあるので、要注意です。

また、症例に合わせて使い分けられるよう複数のインプラント材を取り扱っているか、インプラント材の選定理由の説明があるかも重要なポイントです。

インプラント治療は、天然の歯に近い感覚で、他の歯への影響が少ないなど、多くのメリットがある治療法です。しかし、全ての症例に適しているわけではなく、場合によっては他の治療法の方がよい場合もあります。

インプラント治療を受ける前に、本当に抜歯しなければいけないのか、手術のリスクについてなど、しっかり確認しておくことで、後悔のない治療ができます。

また、スムーズに治療をすすめるには、歯科医院選びが重要です。カウンセリングの丁寧さや検査設備などをチェックし、信頼して任せられる歯科医院を選びましょう。