【治療前に知ってほしい!】オールオンフォー(All-on-4)でよくあるトラブルと対応方法

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

オールオンフォー(All-on-4)は、総入れ歯の代替方法としておすすめの治療方法の一つです。しかしオールオンフォーは、インプラントを埋め込む外科手術を伴いますので、リスクやトラブルが気になるところです。

 

そこで今回は、治療前に知っておきたい、オールオンフォーのトラブルを「手術前」「手術中」「仮歯の時期」「オールオンフォーを装着以降」5つの観点でまとめました。オールオンフォーを検討している方は、ぜひ治療前に参考にしてください。

目次

(1)まずはオールオンフォーの特徴を理解しよう

上顎か下顎、もしくはすべての歯を失ってしまった人の選択肢には、総入れ歯という選択肢があります。

 

しかし総入れ歯は、たとえ品質の高い製品であったとしても、「使いにくい」「経年劣化で作り直すと手間とコストが増える」「周囲に入れ歯であることが知られてしまう」といったデメリットがしばしば顕著な問題として生じてしまいます。

 

特に「食べ物が噛みにくい」というのは、生活の質を著しく妨げてしまう総入れ歯における大きなデメリットの一つです。

 

そんな方におすすめなのが、「オールオンフォー(All-on-4)」。これは、4本のインプラント(人工歯根)を外科手術で埋め込み、そこに入れ歯を装着して固定することで、非常に安定感のある噛み心地を実現する方法として知られています。

 

総入れ歯が必要なレベルの方が、失った分だけインプラントを埋め込むのは、身体に大きな負担をかけてしまいますが、オールオン4なら、上顎・下顎につき、それぞれたった4本のインプラントで済みますので、総入れ歯の代替案として検討する価値があるといえます。

 

メリット ・総入れ歯をしっかり固定できるため、噛み心地や装着感が高まる

・見た目がよい

・埋め込むインプラントの数を少なく抑えることができる

デメリット ・外科手術を伴う

・一般の総入れ歯よりも高額になる

・持病や骨の状態次第では対応できない場合がある

・わずかに残っている歯は抜かなくてはならない

よくあるトラブル ・手術前のトラブル

・手術中のトラブル

・仮歯中のトラブル

・メンテナンスに関するトラブル

 

では、オールオンフォーのトラブルとは、具体的にどんなものなのでしょうか。これからオールオンフォーの施術を検討している方や、すでにインプラントを埋め込んで仮歯を装着している方のために、詳しく解説していきます。

(2)オールオンフォーの手術前トラブル

(2-1)何らかの理由で手術ができない

オールオンフォーはインプラントを埋め込む外科手術を伴いますので、「このままでは手術に失敗したり、手術後にトラブルが起こる可能性が高い」と判断された場合、手術自体を拒否される場合があります。

 

重度の糖尿病 糖尿病は抵抗力や免疫力を下げてしまうため、歯周病になりやすく、インプラント手術が失敗するリスクが増大します。
1日10本以上吸っている喫煙者 喫煙習慣を持つ方も、歯科医院によってはインプラント手術を拒否する可能性があります。タバコに含まれるニコチンなどによって血流が悪くなり、免疫力が下がってしまうからです。
飲み薬の問題 インプラントは骨の代謝がしっかりしていないと、うまく接合できません。骨の代謝に関わる薬を服用している方は、インプラントに失敗するリスクが増大します。

(2-2)医療施設や技術に差がある

現在のところオールオンフォーは、広く一般普及化している歯科技術というわけではありません。

 

インプラントの埋め込み自体は、おそらく多くの歯科医院が問題なく対応することはできるかもしれませんが、総入れ歯の装着や噛み合わせの調整など、オールオンフォーは相応の経験と技術が必要です。

 

もしもオールオンフォーを検討しているなら、まずはその歯科医院がオールオンフォーについてどれだけの知見があり、また技術を持っているのかをよく確認しておきましょう。

 

オールオンフォーに対応できるという前提で他の治療を勧めるのと、そもそもオールオンフォーに対応できないがために他の治療を勧めるのとでは、意味合いが違います。

 

もしも相談した際にオールオンフォー以外の方法を勧められた場合は、オールオンフォーに実績のある歯科医院にセカンドオピニオンを聞いてみてください。

(2-3)費用的な問題

オールオンフォーは、総入れ歯の代替方法として非常におすすめできますが、自由診療が適用されるため、費用は高額になります。決して「気軽に検討できる」方法とはいえないのが現状です。

 

しかもオールオンフォーの費用相場は、あくまで相場であって、患者一人ひとり異なる骨の状態や、歯科医院の提示する金額によっては、1,000万円を超えてしまう例も実際にあるようです。

(3)オールオンフォーの手術中のトラブル

(3-1)インプラントの固定ができない

骨が柔らかい方だと、インプラントが骨と接合できず、抜け落ちてしまうケースがあります。骨が柔らかい理由は人によって事情は様々ですが、不健康な生活を長く続けている方にしばしば多くみられるそうです。

 

自分の顎の歯が、本当にインプラントの埋入に適しているのか。まずは歯科医師にしっかり検査をしてもらい、不安なら他の歯科医院にセカンドオピニオンを求めてみることをおすすめします。歯科医院によっては、利益を優先するあまり、手術を強行する可能性があるからです。

(3-2)神経や血管を傷つけるリスク

顎の骨には、重要な神経や血管が通っています。インプラント手術で神経を傷つけると、顔が麻痺してしまうリスクがありますし、太い血管を万が一にでも傷つけると、激しい出血を伴うことも……。

 

実際、出血多量で患者が窒息死してしまった医療事故も報告されています。しかしご安心ください。設備の整った歯科医院は、精密診査機器で細かく調べていき、インプラントを埋入しても問題がないかどうかをチェックします。

 

とはいえ、「100%リスクがない」ということは断言できませんので、オールオンフォーを検討する際は、神経や血管を傷つけてしまうリスクが常にあることを留意しておきましょう。

(4)オールオンフォーの仮歯中のトラブル

(4-1)仮歯の破折

オールオンフォーのトラブルの中でも特に気を付けたいのが、仮歯の破折(はせつ)です。

 

仮歯とはいうなれば、インプラントを正常な位置に固定し、骨との接合をサポートするためのギプス。

 

仮歯が破折すれば、インプラントを骨の接合が妨げられ、最悪の場合、抜け落ちてしまうことも……。

 

近年のインプラント素材は、4~6週ほどで骨との接合ができるというものもあるようですが、インプラントが接合して安定するまでには、「最低でも2か月はかかる」と想定するのが一般的です。

 

その2か月の間に、仮歯に負担をかけてしまうと、破折する可能性が高まります。ありがちなのは、「硬いものを食べる」というケース。

 

これまで使いにくい総入れ歯だった人からすれば、オールオンフォーの仮歯は、比べ物にならないくらいに噛みやすいと感じるはずです。そのため、つい調子に乗りすぎて、硬い食べ物を食べてしまい、仮歯を壊してしまうという方も決して少なくありません。

 

また、「睡眠中に歯ぎしりをする」「仕事中に歯を食いしばることが多い」という方も、オールオンフォーの仮歯を壊してしまうことが多いといわれています。そのような場合は、マウスピースを睡眠中や日頃から装着するようにして対応しましょう。

(4-2)術後の痛みや腫れ、または感染症の疑い

歯肉の切開を伴うオールオンフォーの手術では、誰でも麻酔が切れると術後の痛みや腫れが生じます。

 

歯科医院が処方した薬を服用すれば、痛みや腫れはすぐに治まりますのでご安心ください。2~3日で済む人もいれば、完全に痛みや腫れが引くまで1~2週間かかる人もいます。

 

ただし、それ以上長引くようであれば、感染症の疑いがあります。すぐにかかりつけの歯科医師に報告して処置してもらいましょう。

(4-3)インプラントのゆるみや破損

埋入したインプラントは、とても繊細です。0.5ミリ~500ミクロン動けば、インプラントがうまく接合しないといわれています。

 

どうしてインプラントの接合に失敗してしまうのでしょうか。手術で考えられる理由はいくつか考えられます。

 

ドリルで骨がオーバーヒートした インプラントを埋入するために穴を空けるドリルが摩擦熱を起こし、骨をやけど状態にさせてしまうことがあります。
理想の位置にインプラントを埋入できなかった どんなに腕のいいインプラント技術者でも、100%成功するという保証はありません。理想の角度や位置にインプラントを埋入できなかった場合、インプラントがゆるんだり、グラついてしまうことがあります。

 

(5)メンテナンスに関するトラブル

(5-1)インプラント周囲炎

インプラントが接合し、仮歯を入れて、それからついに本歯を装着。「無事にオールオンフォーが成功した」と言いたいところですが、油断は禁物。本歯が入ってから、およそ5年後以降で、トラブルが多くなるといわれています。

 

そのトラブルの一つが、インプラント特有の病気、「インプラント周囲炎」です。インプラント周囲炎は、埋入したインプラントの周辺組織が細菌感染などで炎症を起こし、最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまいます。

 

インプラント周囲炎は、「メンテナンスが行き届いていない」「ブラシの入りにくい隙間に食べかすや細菌が溜まっている」といったことが原因で発生します。

 

ですから、オールオンフォーを長持ちさせるためにも、定期的に歯科医院で検診やメンテナンスをしてもらうことをおすすめします。

(5-2)スクリューのゆるみや破損

オールオンフォーを長期的に使用していると、インプラントのネジがゆるむ、あるいはスクリューが破折してしまうこともあります。

 

もともと人工物を埋め込んでいるため、不自然な方向に力が加わったり、歯ぎしりなどで負荷をかけすぎたりすると、ネジに負担がかかってしまうからです。

 

スポーツやボディビルディングなど、無意識に歯を食いしばる習慣のある方は、とくに注意しましょう。マウスピースを装着して、負荷を軽減するように工夫することが大切です。

 

またそれに加えて、インプラントには世界中に1000をゆうに超えるメーカーがあり、耐久度や品質に差があるという点にも留意しておく必要があります。

 

「安ければ品質が悪い」「高ければ耐用年数に定評がある」というわけではありませんが、インプラントメーカーの信頼性は重要な指標です。

 

現代はネット検索で誰でも情報にアクセスできる時代ですので、気になる方は、その歯科医院の使うインプラントのメーカーについて調べてみることをおすすめします。

(6)まとめ

これまで色々とオールオンフォーで起こりうるトラブルやリスクについて解説してきました。

 

結局大切なのは、何かトラブルが起きたときでも、その歯科医師と歩みながら解決していけるかということ。インプラントを埋め込む以上は、誰でも何らかの術中・術後のリスクを避けることはできません。

 

それを理解した上で、セカンドオピニオンを活用しながら、信頼できる歯科医師を見つけてみてください。

 

手術前トラブル ・持病や喫煙習慣などが理由で手術ができない

・医療施設や技術に差がある

・費用的な問題

手術中のトラブル ・骨が柔らかくてインプラントの固定ができない

・神経や血管を傷つけるリスク

仮歯中のトラブル ・仮歯の破折

・術後の痛みや腫れ、または感染症の疑い

・インプラントのゆるみや破損

メンテナンスに関するトラブル ・インプラント周囲炎

・スクリューのゆるみや破損

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