- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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・高齢で外科手術をするのが不安
・高齢者が本当にインプラントをして大丈夫なの?
などとインプラント治療をしたいという気持ちがあっても、治療に対する不安がある方や心配している家族の方もいると思います。
そこでこの記事では、「高齢者でもインプラントができるのか?」「治療を受けるときの注意点」などについて解説していきます。
インプラント治療をするのを迷っている高齢の方や、そのご家族の方は、この記事を読んでインプラント治療への不安を減らしてください。
目次
- 1インプラントの適正年齢は?
- 2高齢者がインプラントをするときの「5つの注意点」
- 2−1:持病や薬の管理
- 2−2:知識や技術のある歯科医院を選ぶ
- 2−3:歯科医院の設備
- 2−4:通院できなくなった後のサポートがあるか
- 2−5:体力をつける
- 3インプラント治療は健康寿命を伸ばす可能性がある
- 3−1:健康寿命とは?
- 4高齢でもインプラント治療はできる
1インプラントの適正年齢は?
インプラント治療がふさわしい年齢は、あるのでしょうか?
インプラントは、顎の骨の成長が完了している20歳前後の大人であれば治療を受けることが可能で、年齢制限はありません。
高齢という年齢を理由にインプラントができないことはないのです。
下の表は、平成28年 歯科疾患実態調査 でインプラント治療を選択した割合を年齢別に表したものです。
調査の結果、65歳〜69歳の年代は、他の年代に比べてインプラント治療を選んでいることがわかります。
その次に多い年代が、70歳〜74歳の年代です。
つまり、インプラントは若い人だけの治療ではなく、高齢の方にも選ばれている治療法でもあります。
2高齢者がインプラントをするときの「5つの注意点」
多くの高齢の方がインプラントを選んでいるとはいえ、治療をするには次のような注意点があります。
2−1:持病や薬の管理
持病がなく薬も服用していない健康的な方は、インプラント治療をすぐに始められるケースがほとんどです。
しかし、高齢の方の場合は、持病があり薬を服用している方が多くいます。
持病の状態や薬の種類や服用量などによっては、インプラントができないことがあります。
例えば、糖尿病は歯周病になりやすかったり、傷口が治りにくく細菌感染を引き起こしたりするリスクがあります。
インプラントは虫歯にはなりませんが、インプラント周囲炎という病気にはなります。
インプラント周囲炎は、インプラントを支えている周りの骨が溶けてしまう病気です。
糖尿病の数値が高い状態で治療をしてしまうと、インプラントが骨とくっつかずに失敗したり、インプラント周囲炎を起こしたりすることも少なくありません。
また、服用中の薬の種類にも注意が必要です。
例えば、骨粗しょう症で使用されるBP製剤(ビスホスホネート製剤)という薬は、顎の骨を壊死させるリスクがあります。
この場合には、薬の一時的な中断の有無や患者さんの情報などを担当の内科医と歯科医が共有することで、インプラント治療ができるケースがほとんどです。
インプラントができる状態にするためにまずは、患者さん自身が持病をコントロールし、薬の管理をしっかりと行いましょう。
2−2:知識や技術のある歯科医院を選ぶ
高齢の方は、顎の骨が痩せていることが多く、インプラント手術が難しくなるケースも少なくありません。
そのため、骨造成や難症例に対応している歯科医院を選ぶようにしましょう。
骨造成とは、骨を増やす手術のことです。
インプラントは顎の骨の中に埋めて固定するので、骨の量や厚さが十分にあるのかが重要になります。
骨造成にはさまざまな処置方法があり、高齢の方の場合は身体への負担が少ない処置方法を提案してくれる歯科医院が理想です。
また、今まで総入れ歯を使用していて骨が広範囲に痩せている場合には、All-on-4(オールオンフォー)というインプラント手術を提案されることがあります。
オールオンフォーとは、2本〜4本のインプラントを埋めた上に、繋がった被せ物を取り付ける治療法です。
オールオンフォーは
・インプラントの数が少なく費用を抑えることができる
・骨造成をしなくても良い(場合によってはすることもある)
などのメリットがある治療法です。
ただ、オールオンフォーは歯科医師の高度な技術や知識が必須で、治療ができる歯科医院が限られています。
そのため、難しい手術や処置などができる歯科医院なのかを確認してから、治療を受けるのが安心です。
2−3:歯科医院の設備
高齢の方は、設備が充実している歯科医院を選ぶのがオススメです。
・オペ室が完備していて、衛生面が整っている環境。
・生体情報モニターを完備している
・トラブルが起きたときに近隣の内科と提携している
などの設備項目をチェックしておきましょう。
特に高血圧の疾患がある方は、生体情報モニターが完備しているかを確認してください。
手術中に血圧が上がって、目眩や嘔吐などの不調が起きることがあります。
そのため、リアルタイムで血圧や心拍が確認できる生体情報モニターがあると安心です。
他にも、手術時には麻酔専門医が在中している歯科医院もあります。
安全にインプラントができるような体制が整っているかを事前にチェックしましょう。
2−4:通院できなくなった後のサポートがあるか
高齢の方は、通院できなくなったときのことを考えておくのも大切です。
インプラントは、毎日の歯ブラシ以外にも定期的なメンテナンスが必要です。
定期的なメンテナンスは、インプラントを長持ちさせるためには欠かせません。
しかし、突然の事故や怪我などがきっかけで寝たきりになって、通院できなくなるケースがあります。
そのため、インプラント治療をした医院で訪問歯科を行っているかを知っておきましょう。
訪問歯科とは、歯科医師や歯科衛生士が自宅に伺い、ケアや調整などを行うことです。
もし寝たきりになったときに、歯科医院のサポートがあればインプラントを長持ちさせることができます。
元気で快適に過ごすためにインプラントを選ぶことも大切ですが、「もしものこと(寝たきり)」まで考えて治療に取り組んでいる歯科医院なのか確認しましょう。
2−5:体力をつける
インプラントは、外科手術をするので体力が必要になります。
手術時間は、お口の状態や処置内容によって違いますが、インプラントの本数が多く骨造成といった処置をする場合には手術時間が長くなりやすいです。
手術時間が長くなるほど体力を消耗しやすく、傷口を治すのにもエネルギーは必要です。
そのため、なるべく手術に耐えられる体力をつけておくことがオススメです。
3 インプラントは健康寿命を伸ばす可能性がある
インプラント治療は、健康寿命を伸ばす可能性があります。
3−1:健康寿命とは?
健康寿命とは、寝たきりや介護の必要がなく普通に日常生活を送れることです。
この健康寿命と噛む力には密接な関係があり、インプラントはこの噛む力を維持できる治療法です。
次の表は、「咀嚼能力(噛む力)が弱い人」と「咀嚼能力が強い人」の健康寿命の差を表しています。
この結果から、どの年代でも咀嚼能力の強い方の健康寿命が伸びていることがわかります。
インプラントは、天然歯のようにしっかりと噛むことができるため、咀嚼能力を落とさず維持できます。
さらにインプラントでは、次のような効果が期待できます。
・噛むことが脳への刺激になり認知症の予防になる
・温度を感じられて食事を楽しめる
・食材をしっかりとかみ砕けて消化器官への負担が少ない
他にもインプラントでしっかりと噛めることは、いろんな食品をまんべんなく摂取できます。
つまり、食事の栄養バランスが良くなり、健康寿命を伸ばしている理由のひとつと考えられています。
4高齢者でもインプラント治療はできる
高齢の方でもインプラント治療は可能です。
ただ、高齢の方がインプラント治療を受けるときには、次の5つのことに注意が必要です。
・持病や薬の管理
・知識や技術のある歯科医院を選ぶ
・歯科医院の設備
・通院できなくなった後のサポートがあるか
・体力をつける
また、インプラントは天然歯と同じようにしっかりと噛むことができ、健康寿命を伸ばすことにも繋がります。
どんなインプラント治療が合っているのかは、お口の状態や生活スタイルなどによって変わってきます。
将来のことも考えながら担当医と治療法について、しっかりと話し合うようにしましょう。