歯周病を引き起こす意外な病気3選

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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歯周病の原因のひとつとして、他の病気の影響があげられます。しかし、病気によっては歯周病との関連が知られていない場合もあります。そのため、いつの間にか歯周病が進行し、歯を失ってしまうケースもあるでしょう。

 

この記事では、歯周病を引き起こす意外な病気について解説します。

目次

1. 歯周病

1‐1. 歯周病とは

歯周病とは、歯周病菌に感染することで歯の周りの組織に炎症が起きる病気です。歯を失う一番の原因は、虫歯ではなく歯周病です。また30代以上の人のうち8割が歯周病だといわれています。

 

初期の歯周病は痛みなどの自覚症状はほとんどありませんが、しだいに出血や膿などがでるようになり、歯を支えるあごの骨を徐々に溶かしてしまいます。

 

あごの骨が溶けることにより、歯を支えきれなくなり、歯のぐらつきが生じ、最終的には、歯が抜けてしまう場合も少なくありません。

 

また、歯が抜けるだけではなく、歯周病菌や菌が排出する毒素が血流で全身に運ばれることにより、糖尿病や心臓病、肺炎など他の病気を引き起こす場合もあるでしょう。

1‐2. 歯周病の原因

歯周病の主な原因は、歯磨きなどのケアが不充分で、歯や歯ぐきに「歯垢」と歯垢が硬くなった「歯石」が蓄積することです。歯垢や歯石には細菌が多く生息し、細菌が歯ぐきに感染すると炎症を引き起こします。

 

歯垢と歯石以外の歯周病の原因としては、他の病気の影響も考えられます。歯周病を引き起こす意外な病気として知られているのが「関節リウマチ」「骨粗しょう症」「ダウン症候群」の3つです。それぞれ解説していきます。

2. 関節リウマチ

関節リウマチと歯周病は、一見全く無関係な病気に思えますが、実はよく似ており、深い関係があると判明しています。関節リウマチの概要や歯周病との関係など、詳しく解説します。

2-1. 関節リウマチとは

関節リウマチとは、免疫システムに異常が生じ、軟骨の働きを助け関節の動きを滑らかにする「滑膜(かつまく)」という組織が異常増殖し、手足をはじめとする関節に炎症が起きる病気です。

 

日本国内の患者数は70万人以上といわれ、中高年の女性患者が多い病気です。発症しやすい年齢は40~60代、男性と比べ女性の患者数は約4倍だといわれています。

 

主な症状は関節の痛みや腫れで、特に起床時に関節がこわばる感じがします。病状が進行すると軟骨や骨が壊れ、関節が変形したり、機能しなくなったりしてしまいます。

 

また、関節部分以外の症状として、全身のだるさや微熱、食欲不振などの全身の不調、皮膚や肺、眼などの症状が出る場合もあります。

 

手足の関節に発生するケースが多いですが、症状の重さやどの部位に症状が出るかは個人差が大きいです。あごの関節に起きると、口を開けるときの痛みや、口がうまく開かない開口障害の原因となります。

 

さらに、全身の関節の症状が進行していく場合もあり、発症する場所によっては脊髄に負荷がかかり、手足の麻痺や呼吸のしにくさといった症状が出ることもあるでしょう。

2-2. 関節リウマチの原因

関節リウマチの原因は、まだはっきりとわかっていません。しかし、遺伝や喫煙などの生活習慣、歯周病などの環境的な要因、細菌・ウイルスの感染が関係すると考えられています。

 

これらの要因によって、免疫機能に異常が生じ、自分の身体の一部である滑膜を敵として認識し、炎症を起こすさまざまな化学物質を分泌し、関節リウマチを引き起こします。

2-3. 関節リウマチと歯周病の関係

かつては関節リウマチの症状により手や指が動かしにくく、歯磨きなどのケアが充分にできないことにより、歯周病にかかりやすいと考えられていました。

 

しかし、研究を重ねた結果、関節リウマチの治療に使用する免疫抑制薬の作用による細菌への抵抗力の低下なども影響していることがわかりました。

 

また、歯周病は細菌感染によって起きますが、細菌に感染すると、免疫のバランスが崩れて、関節リウマチを引き起こす場合があります。歯周病と関節リウマチは、医学的によく似た病気だといわれており、歯周病治療をすることで、関節リウマチが改善するケースが多く報告されています。

 

このことから、関節リウマチにかかっている場合は健康な人以上に、歯周病治療や歯磨きなどのケア、禁煙などの歯周病対策をする必要があるでしょう。

3. 骨粗しょう症

骨粗しょう症は、骨の量が減ることで骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。細菌の感染によって起こる歯周病とは、全く異なる病気のような印象がありますが、実は歯周病の原因の1つです。

 

骨粗しょう症の概要や歯周病との関係をご紹介します。

3-1. 骨粗しょう症とは

骨粗しょう症とは、骨の量が減少して弱くなり、骨折しやすくなる病気です。骨は新たに骨がつくられる「骨形成」と骨が溶けて壊れる「骨吸収」からなるサイクルを繰り返しています。このサイクルを「骨代謝」と呼びます。

 

通常であれば、骨代謝を繰り返すことで骨の量や強さを維持できます。患者の8割以上が女性と言われており、とくに60歳以上の女性が多く発症しています。骨粗しょう症の患者は、日本国内で1000万人以上いるとされていて、高齢化によってさらに増える傾向にあります。

 

骨粗しょう症になると、軽い転倒やくしゃみなどちょっとしたきっかけで骨折してしまいます。痛みなどの自覚症状がないため、骨折して初めて病気に気がつくケースが多いでしょう。

 

骨粗しょう症によって、直接命が危険にさらされることはほとんどありません。しかし、骨折をきっかけに、そのまま要介護や寝たきりとなり、その後の生活に大きな影響を与える場合があります。

3-2. 骨粗しょう症の原因

骨粗しょう症の主な原因は、女性の閉経後のホルモンバランスの変化、加齢、お酒の飲みすぎなどの生活習慣の乱れ、過度なダイエット、薬の影響などによる、骨代謝の乱れです。

 

骨密度は20歳ころにピークを迎え、その後は年齢を重ねるにつれ低下します。特に女性の場合は、閉経により骨吸収をおさえる作用のある「エストロゲン」の分泌が減り、骨密度が大きく低下するのです。

3-3. 骨粗しょう症と歯周病の関係

研究の結果、骨粗しょう症の人は歯周病が進行している傾向にあることがわかりました。

 

骨粗しょう症は骨の量が減る病気なので、歯を支えるあごの骨の量も減少します。歯周病が進行するとあごの骨が溶けてしまいますが、骨粗しょう症の場合、あごの骨の量が少ない分、歯がぐらつきやすく、進行が早い傾向にあります。

 

また、エストロゲンは歯周組織の炎症を防ぐ働きがあるので、エストロゲンの分泌量が少ない骨粗しょう症の患者は、歯周病のリスクが高い状態だといえるでしょう。

 

さらに、歯周病により歯を失うと、かむ力が弱まり、食べ物の消化吸収に影響します。その結果、カルシウムなどの栄養が不足し、骨粗鬆症が悪化することも少なくありません。

 

そのため、骨粗しょう症と歯周病は、同時に対策することが重要です。禁煙やカルシウムの多い食事、歯磨きなど、日ごろから気をつけるようにしましょう。

4. ダウン症

染色体異常による病気として知られるダウン症ですが、ダウン症患者の9割以上が歯周病にかかると言われており、歯周病によって歯を失う人も少なくありません。

 

ダウン症の概要や歯周病との関係など詳しく解説します。

4-1. ダウン症とは

ダウン症は、染色体異常による疾患です。「染色体」とは、人間の細胞の中にある遺伝子情報が入った物質を指します。胎児の身体の形状や身体機能などは、染色体の持つ遺伝子情報によって決まります。

 

通常のケースでは、胎児は1つの細胞のなかに1~23番までの染色体を2本ずつ、合計46本持って誕生します。しかし、ダウン症の胎児は、21番目の染色体が3本ある状態で誕生します。染色体異常による病気としては患者数が多く、日本国内で5万人以上いると言われています。

 

主な症状は、筋肉の発達の遅れや話す力の遅れです。知的障害を持つ患者も多いですが、程度の個人差が大きく、自立した生活をしている人も少なくありません。

 

ダウン症の合併症として、先天性の心疾患や白血病、十二指腸閉鎖など消化管が正常につくられない症状、難聴、白内障などがあげられます。

 

さまざまな症状や合併症が現れるため、以前は子供のうちに亡くなる患者が多い病気でした。現在は、医学の発展により、平均寿命は約60歳ともいわれています。

4-2. ダウン症の原因

ダウン症の90〜95%は、母親から受け継いだ染色体と父親から受け継いだ染色体が新しい個体をつくるときに、不均等に分離してしまい、子供の21番目の染色体が3本になることで発症します。この場合、両親の染色体は正常なケースがほとんどです。

 

その他、父親または母親の21番染色体が他の染色体にくっついてしまう、正常な21番染色体をもつ細胞と染色体異常を起こした細胞の両方が混ざってつくられてしまうといった原因があります。

 

遺伝が関係する場合もありますが、関係しないケースが圧倒的多数です。また、母親が高齢であるほど発症する可能性が高いですが、若い母親の場合でもダウン症となるリスクはあります。

4-3. ダウン症と歯周病の関係

ダウン症の患者は、発達の遅れにより口の中のケアが充分にできない、歯の根が短い・歯が小さいなど歯の形の異常がある、免疫力が低く歯周病菌に感染しやすいなど、歯周病のリスク要因を多く持っています。歯周病になりやすく、症状の進行が速いのが特徴です。

 

そのため、10代で歯周病にかかり、20~30代で重度の歯周病に進行し、歯を失ってしまうケースも少なくありません。歯医者を嫌がる場合もあるので、なるべく早いうちから定期健診やメンテナンスを受け、慣れておくとよいでしょう。

 

歯や舌の形状が通常と異なる、口のなかの感覚が過敏、心疾患があるためストレスの大きい処置はリスクが高いといった特徴があるので、しっかり配慮してくれる歯医者を選ぶのをおすすめします。

5. 病気による歯周病のリスクを知って、適切な対策を!

関節リウマチや骨粗しょう症、ダウン症にかかっていると、歯周病のリスクが高まり、最悪の場合、歯を失ってしまう可能性があります。また、歯周病が発症することで、病気に悪影響が及ぶ場合も少なくありません。

 

病気の場合は、健康な人以上に歯周病対策が必要です。信頼できる歯科医師の診療を受け、大切な歯を守りましょう。

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