- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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歯を失う原因として最も多いのが歯周病です。歯の健康のためには、歯周病予防が欠かせません。歯周病に「なりやすい人」と「なりにくい人」がおり、なりやすい人はしっかりブラッシングしていても歯周病のリスクが高く、なりにくい人は特に気にしなくても歯周病のリスクは低いものです。
この記事では、歯周病になりやすい人の特徴や歯周病を予防する方法をご紹介します。しっかりお手入れして、歯周病のリスクを軽減しましょう。
目次
- 1.歯周病の原因&症状とは
- 2.あてはまったら要注意!歯周病になりやすい人の特徴9選
- 2-1.歯磨きが充分ではない
- 2-2.歯並びが悪い
- 2-3.歯ぎしりや食いしばりなどの噛み癖
- 2-4.たばこを吸う習慣がある
- 2-5.口呼吸が多い
- 2-6.歯科医院で定期的なメンテナンスをしていない
- 2-7.糖尿病にかかっている
- 2-8.降圧剤・抗てんかん薬・免疫抑制剤などの服用
- 2-9.親が歯周病にかかっている
- 3.歯周病のリスクを軽減する方法とは
- 3-1.正しいブラッシングをする
- 3-2.歯科医院で定期メンテナンスをする
- 3-3.歯並びを矯正する
- 3-4.ナイトガードを使う
- 3-5.生活習慣を改善する
- 4.歯周病になりやすい場合は、正しい対策で歯を守りましょう
1.歯周病の原因&症状とは
歯周病とは、歯の周りの歯茎に細菌が感染し、炎症が起きる病気です。歯と歯茎の間のすきまなどに歯垢をはじめとする汚れが溜まると細菌が付着しやすくなり、炎症により赤みや腫れが生じます。
最初、痛みはほとんどありませんが、進行するにつれ出血したり膿が出たりといった症状が出ます。重度になると歯の周りの歯茎や歯を支えるあごの骨が溶け、歯がぐらついてしまい、最後には歯が抜けてしまいます。
歯を失う一番の原因は、虫歯ではなく歯周病です。大切な歯を守るためには、歯周病対策が不可欠と言えるでしょう。
2.あてはまったら要注意!歯周病になりやすい人の特徴9選
歯周病になりやすい人の主な特徴は、下記の9つです。
2-1.歯磨きが充分ではない
歯周病の主な原因である歯垢を取り除くには、正しいブラッシングで歯磨きをすることが大切です。
また、夜に歯磨きをせずに寝るのはなるべく避けましょう。睡眠中は起きている時よりも唾液の量が大幅に減り、口のなかが乾燥し、歯周病菌が活動しやすい状態になります。
歯磨きをしないと歯垢や食べかすが口の中に残ったまま寝てしまい、細菌が増加し、歯周病になる危険性が高まります。朝と昼にしっかりブラッシングをしていたとしても、夜に歯磨きをしないと、歯周病になりやすくなります。特にお酒を飲んだ後は、面倒くさくなり、歯磨きをしないまま寝てしまいがちなので要注意です。
2-2.歯並びが悪い
歯並びが悪かったとしても、直接的に歯周病を引き起こすわけではありません。しかし、歯並びが乱れていると、でこぼこがあるためブラッシングが難しく、磨き残しが多くなります。それに伴い、歯垢や食べかすなどが残ってしまい、歯周病菌が繁殖してしまいやすいのです。特に、歯と歯の間や歯と歯茎の境目は、汚れが溜まりやすいので気をつけましょう。
また、歯並びは年を重ねるにつれて悪くなる傾向があります。若い時は整っていたとしても、50歳頃から歯の間に隙間ができてしまう場合は多く、歯周病のリスクが高まります。
2-3.歯ぎしりや食いしばりなどの噛み癖
歯ぎしりや食いしばりなどの噛み癖があると、歯に過剰な力がかかり続けます。そのままにしておくと、歯や歯茎、歯茎を支えているあごの骨などの組織にダメージが蓄積し、歯周病が悪化するリスクが上がります。
歯は横方向の力に弱く、歯ぎしりのなかでも歯を横にスライドさせるギシギシ音の鳴るタイプの歯ぎしりをしていると、悪影響が出やすいと言われています。
歯ぎしりや食いしばりなどの噛み癖の多くは、無意識の行動なので、家族や友人からの指摘で気がつく方が多いそうです。
2-4.たばこを吸う習慣がある
たばこの煙には、数千もの化学物質が含まれており、そのうちの200~300は有害物質だと言われています。日本臨床歯周病学会のデータによると、1日10本以上たばこを吸う人は吸わない人と比較して歯周病リスクが5.4倍に、10年以上たばこを吸っている人は4.3倍に上昇し、重症化しやすくなると報告されています。また、本人がたばこを吸う場合だけでなく、受動喫煙でも歯周病の危険性はあがります。
たばこの煙には、歯茎の血流を悪化させる「一酸化炭素」や、毛細血管を収縮させ免疫機能を低下させる作用のある「ニコチン」が含まれています。
そのため、たばこを吸うと歯茎に必要な酸素や栄養が充分に届かず、細菌に対する抵抗力も弱まり、歯周病のリスクが高まります。また、たばこに含まれる「タール」が歯にこびりつき、歯垢が溜まりやすくなるのも、歯周病のリスクを高めます。
たばこを吸っていると、見た目上は歯肉の腫れや出血がおさまるため、歯周病に気がつきにくく、知らず知らずのうちに進行している可能性もあるでしょう。さらに、歯周病治療による回復も遅くなる傾向にあります。
2-5.口呼吸が多い
唾液には、殺菌消毒作用があり、歯周病の原因となる細菌が繁殖するのをおさえる効果が期待できます。口呼吸をしていると、唾液の分泌量が減少し、口の中が乾燥。白血球の機能が低下し、細菌が繁殖しやすい環境になり、歯周病のリスクが高まります。
また口呼吸は、鼻毛や鼻粘膜といったフィルターの役割をする部位を通さずに空気を取り込む呼吸法です。鼻呼吸よりも空気中の細菌やウイルスが体内に侵入しやすくなり、免疫力低下の原因となります。
歯周病の悪化以外にも、虫歯や口内炎、ヘルペスといった口の中の病気につながる可能性があるので注意しましょう。
口呼吸は無意識で行っている場合が多く、特に鼻の調子が悪い方は口呼吸になりやすい傾向にあります。
2-6.歯科医院で定期的なメンテナンスをしていない
しっかり歯磨きをしているつもりでも、歯垢を完璧に落とすのは難しいものです。きれいにブラッシングしたとしても、歯ブラシのみでは60%、デンタルフロスを使っても85%の歯垢しか落とせないと言われています。
さらに残った歯垢は歯石へと変化します。歯石の表面はでこぼこしているため、汚れが溜まりやすく、細菌が繁殖しやすい環境です。歯石は固いため、通常のブラッシングで除去するのは難しく、歯科医院での専用器具を使ったクリーニングが必要となります。
歯科医院で定期的なメンテナンスをしていないと、口の中を清潔に保てず、歯周病の原因となる細菌が増えやすい環境になってしまいます。そのため、歯周病にかかったり、進行が早まったりしやすくなるでしょう。
2-7.糖尿病にかかっている
糖尿病が原因で起こる症状のひとつに、歯周病があります。糖尿病になると血液中の糖分の量が多くなる影響で、唾液の分泌量が減少。唾液の殺菌・消毒作用が低下して、歯周病のリスクが高まります。また、糖尿病によって抵抗力が低下することで、歯周病菌に感染しやすくなるでしょう。
また、糖尿病と歯周病は深く関係しており、歯周病になることで糖尿病が悪化しやすくなり、悪循環に陥る可能性があります。
2-8.降圧剤・抗てんかん薬・免疫抑制剤などの服用
高血圧の治療薬である降圧剤には「カルシウム拮抗剤」という成分が含まれているものが少なくありません。カルシウム拮抗剤には、歯肉の組織が増える「歯肉増殖」という副作用があります。
歯肉増殖が起きると、歯と歯の間を中心に歯茎の腫れや出血が見られるようになります。その結果、歯磨きをしても充分に汚れを落とせない部分が増え、細菌が繁殖し、歯周病になりやすくなります。
降圧剤以外にも、抗てんかん薬や免疫抑制剤のなかには、歯肉増殖を副作用に持つ薬があります。
2-9.親が歯周病にかかっている
歯周病自体は遺伝しない病気ですが、歯周病になりやすい要因は遺伝する可能性が高いと言われています。
主な遺伝的要因として、免疫力と糖尿病があります。免疫力が低いと歯周病のリスクが高まります。遺伝的に免疫力が低いと、その分歯周病になりやすいと言えるでしょう。また、歯周病を引き起こす場合のある糖尿病も、遺伝的な病気です。
このように、歯周病は遺伝と無関係ではありません。親が重度の歯周病の場合は、注意が必要です。
3.歯周病のリスクを軽減する方法とは
歯周病になりやすい方でも、しっかり対策をすればリスクを軽減できます。主な方法をご紹介します。
3-1.正しいブラッシングをする
毎日のブラッシングにより歯垢や汚れを取り除くのは、歯周病を防ぐために非常に大切です。毎日2~3回ほど歯磨きをするのはもちろん、正しいブラッシング方法を身につけるとよいでしょう。
歯科医院での歯磨き指導では、歯垢を染める染色液を使って磨き残しが多い場所を指摘してもらえるなど、正しいブラッシング方法を丁寧に教えてもらえます。
3-2.歯科医院で定期メンテナンスをする
毎日歯磨きをしていても、歯と歯の間などに磨き残しがある場合は少なくありません。歯科医院での定期メンテナンスを受けることで、歯垢や汚れ、さらには歯磨きでは除去できない歯石も取り除けます。清潔な状態を保つことで、歯周病のリスクを軽減できるでしょう。
また、もし歯周病になっていたとしても、定期メンテナンスでこまめに歯科医院に通っていれば、早期発見・早期治療ができ、重症化する前に対策できます。
3-3.歯並びを矯正する
歯並びによる歯周病リスクの根本的な解決方法は、矯正治療により歯並びを整えることです。しかし、矯正治療はお金も時間もかかるため、難しい場合もあるでしょう。
そういった場合は、歯科医院で歯並びに合わせたブラッシング指導をしてもらうのをおすすめします。
3-4.ナイトガードを使う
歯ぎしりや食いしばりは無意識の行動である場合がほとんどなので、自分で治すのは難しいかもしれません。「ナイトガード」と呼ばれる夜に装着するマウスピースを使用することで、歯や歯茎、あごの骨へのダメージを軽減できます。
3-5.生活習慣を改善する
しっかりブラッシングしても、生活習慣が乱れていると歯周病のリスクが高まります。時間を決めずにだらだら食べ続けたり、間食をよくしていたり、コーヒーや甘い飲み物を飲んだりしていると、口の中が常に汚れている状態になります。そのため、細菌が繁殖しやすくなり、歯周病の原因となるので要注意です。
また、歯周病のリスクを高める喫煙は控えましょう。その他、睡眠不足やストレス、肥満なども歯周病の危険性を高めるため、生活習慣の見直しが有効です。
4.歯周病になりやすい場合は、正しい対策で歯を守りましょう
体質や生活習慣によって、歯周病になりやすいかどうかは異なります。たとえ歯周病のリスクが高い要因があっても、しっかり対策することでリスクは軽減できるでしょう。
具体的には、正しいブラッシングをする、歯科医院で定期メンテナンスをするといった方法があります。
もし、歯周病になりやすい特徴があるのなら、歯科医院で相談して、歯周病の健診をしてもらったり、アドバイスをしてもらったりすると、歯周病の予防や改善につながります。