- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラントをしたいと思っても、治療を断られたことはありませんか?
インプラントは、失った歯のどこの部分にもできますが、治療が難しいとされている部位があります。
それが、上あごです。
全体の中でも特に上あごは、インプラントが難しいと言われています。
しかし、上あごにインプラントをするのは不可能ではありません。
難しい上あごのインプラントを成功させている患者さんは、多く存在します。
そこでこの記事では、上あごのインプラントが難しい理由や、治療を成功させるポイントなどについて解説していきます。
・上あごのインプラントを断られた
・これからインプラントをしたいと考えている
といった方は、是非この記事を参考にしてください。
目次
- 1上顎の前歯のインプラントが難しい理由
- 1−1:あごの骨が薄くて、少ない
- 1−2:見た目への配慮が必要
- 2上顎の奥歯のインプラントが難しい理由
- 2−1:あごの骨が薄くて、柔らかい
- 2−2:上顎洞の存在
- 3上顎のインプラントを成功させる「4つのポイント」
- 3−1:歯科医師に骨造成や歯肉移植の技術がある
- 3−2:CTやガイドシステムを取り入れている
- 3−3:抜歯をする前に治療計画を立てる
- 3−4:衛生面が整っている
- 4インプラントが難しい部位は歯医者選びが大切
1上顎の前歯のインプラントが難しい理由
上顎は、前歯と奥歯のどちらもインプラントが難しいと言われています。
次からは、前歯のインプラントが難しい理由を解説していきます。
1−1:あごの骨が薄くて、少ない
もともと前歯は、下のあごに比べて上あごの骨は薄くて、少ない方がほとんどです。
インプラントは、あごの骨の中に埋めて固定させる治療法で、骨の厚みや量などが必要になります。
また、インプラントを考えている人は、次のような状態になっていることが多いです。
・前歯のない期間が長く、さらに骨が痩せている
・歯周病や虫歯で前歯周辺の骨が溶けている
こういった状態では、さらに骨の量は減っているため、インプラントを固定する難易度が高くなります。
1−2:見た目への配慮が必要
前歯は、顔の印象を大きく左右すると言われています。
そのため、前歯のインプラントは噛む機能だけでなく、見た目の配慮が重要です。
例えば、インプラントを入れる位置や角度が数ミリずれただけで、隣の歯と左右対称にならず、違和感のある見た目になります。
また、前歯は治療後に歯茎が下がりやすい傾向があります。
そういった治療後の歯茎の変化を予測しながら、インプラントを入れたり歯茎を調整したりする必要があるので、前歯は難しい部位のひとつと言われてます。
2上顎の奥歯のインプラントが難しい理由
ここからは、上あごの奥歯のインプラントが難しい理由を解説していきます。
2−1:あごの骨が薄くて、柔らかい
上あごの奥歯は、歯を失うと骨の減るスピードが早いです。
なぜなら上あごの骨は、下の骨に比べて海綿骨(かいめんこつ)という柔らかい骨が多いからです。
柔らかい骨はインプラントが固定しづらく、骨の量や高さが必要になります。
しかし、インプラントを考えている人は、前歯と同様に骨が痩せている状態のことが多いです。
つまり、上顎の奥歯は、骨の質や量など条件が悪い状態でインプラントをする必要があり、治療の難易度が高いです。
2−2:上顎洞の存在
上あごには、目の下から鼻の周辺にかけて上顎洞という空洞があります。
この空洞は、奥歯の上のほうに繋がっているので、上あごの骨は薄い人がほとんどです。
上顎洞はシュナイダー膜という膜で覆われていて、中が空洞になっています。
インプラント手術時にこのシュナイダー膜を傷つけてしまうと、感染症を引き起こす可能性が高いです。
例えば、外科手術では、インプラントを入れるためにドリルで穴を開けていきます。
このドリルでシュナイダー膜を破ると、上顎洞炎を引き起こすことがあります。
上顎洞炎は、空洞の中が炎症を起こしてる状態です。
鼻に違和感が出たり、痛みや腫れたりといったトラブルの原因になります。
そのため、シュナイダー膜を傷つけない歯科医師の技術力が必須で、奥歯はインプラントの難しい部位と言われています。
3上顎のインプラントを成功させる「4つのポイント」
難しい上顎のインプラントを成功させるには、次の4つのポイントをおさえておきましょう。
・歯科医師に骨造成や歯肉移植の技術がある
・CTやガイドシステムを取り入れている
・抜歯をする前に治療計画を立てる
・衛生面が整っている
それぞれについて、説明していきます。
3−1:歯科医師に骨造成や歯肉移植の技術がある
上あごのインプラントでは、骨造成の処置を追加でするケースがほとんどです。
骨造成とは、骨を増やす処置のことで、いろんな手法があります。
特に、上あごの骨が足りないときには、「サイナスリフト」や「ソケットリフト」という骨造成をすることが多いです。
この2つの治療法は高度な技術が必要で、限られた歯医者でしかできません。
そのため、奥歯のインプラントは、サイナスリフトやソケットリフトといった、骨造成の経験豊富な歯医者での治療がおすすめです。
一方で、前歯のインプラントは、見た目も重要です。
インプラントを入れることだけでなく、歯茎へのアプローチがないと見た目が悪くなりやすいです。
例えば、骨造成をして骨の量だけを増やしてしまうと、歯茎が下がってしまうことがあります。
前歯の歯茎は、薄くて伸びにくい性質があり、インプラントの金属の一部が見える原因になります。
また、骨だけ増やしても歯茎のボリュームがなければ、凹んだ歯茎の形になり見た目が悪くなります。
歯茎へのアプローチ方法は、歯肉移植が一般的です。
歯肉移植とは、他の部分(主に上あごの裏側)から歯茎を切り取って、足りない部分に移植する方法です。
歯茎にボリュームをつけることで、
・インプラントの金属の部分が歯茎から透けない
・歯茎の形がキレイになる
・治療後に歯茎が下がりにくい
といったメリットがあり、自然な見た目に仕上がります。
前歯のインプラントでは、骨造成や歯肉移植などの技術があり、見た目にこだわりを持って治療をしている歯医者で治療を受けるのがおすすめです。
3−2:CTやガイドシステムを取り入れている
難しいとされる部位では、事前の診査・診断が治療の成功を決めるとも言われています。正確に口の状態を把握するのに欠かせない機器のひとつが、CTです。
CTは、あごの骨の厚みや幅を立体的に見ることができる機器です。
その他にもCTでは、上顎洞の位置を正確に確認でき、上顎洞炎を防ぐことにも繋がります。
ガイドシステムとは、コンピュータ上でシミュレーションしたオペの流れを、実際の手術に反映させる治療のことです。
別名、ガイデッドサージェリーとも呼ばれています。
このシステムでは、専用のコンピュータでインプラントを埋める位置や角度を決めることができます。
シミュレーションで問題がなければ、ガイドといって、インプラントの大きさや位置、角度などを設計している装置を作成します。
このガイドを口にはめて手術をするので、インプラントを入れる位置や角度がずれる心配はほとんどありません。
その結果、正確性や安全性の高いインプラント治療が可能になります。
このように、設備やシステムを取り入れている歯医者では、難しい部位でもインプラントを成功させることができます。
3−3:抜歯をする前に治療計画を立てる
「この歯は抜歯をするしかありません、その後の治療法は抜歯をしてから考えましょう。」という歯医者は、おすすめできません。
なぜなら、歯を抜いてしまうと、骨は急速に痩せていくからです。
また同時に、歯にあった歯根膜もなくなるので、歯茎への血流が止まってしまいます。
つまり、抜歯によって周辺の組織が壊されて歯茎の位置が下がったり、歪な形になったりします。
そうなると、最終的な見た目の仕上がりにも大きな影響がでやすいです。
骨や歯茎に問題が出ても、骨造成や歯肉移植をすれば問題ないと、思う方もいるかもしれません。
しかし、骨の量や歯茎の位置を元の状態にするのに距離が大きいほど、再生時間がかかってしまい、治療期間も長くなりやすいです。
そのため、抜歯をしない状態で治療法を決めていく歯医者が安心です。
ただ、強い痛みや腫れがでている場合には、すぐに抜歯が必要なケースもあります。
その場合にも、あごの骨や歯茎のダメージがこれ以上進まないうちに、治療計画を担当医と決めていくのが良いでしょう。
3−4:衛生面が整っている
インプラントは、外科手術が必要です。
インプラント手術をする環境が不衛生な状態では、感染症を引き起こしてインプラントが失敗に終わることも少なくありません。
・オペ専用の部屋がある
・消毒や滅菌を徹底している
・インプラント手術では、滅菌済みのガウンやグローブを使用している
といった、衛生環境が整っている歯医者なのかを事前に確認しておきましょう。
4インプラントが難しい部位は歯医者選びが大切
インプラントが難しい部位は、上あごの前歯と奥歯になります。
上あごは全体的に骨の量や厚みが少なく、インプラントを固定させるのが難しいからです。
特に、前歯は噛む機能のほかに、見た目の仕上がりにこだわらないと患者さんが満足する結果にはなりません。
そういった難しい部位のインプラントを成功させるには、次のような条件を満たしている歯医者がおすすめです。
・歯科医師に骨造成や歯肉移植の技術がある
・CTやガイドシステムを取り入れている
・抜歯をする前に治療計画を立てる
・衛生面が整っている
難しい部位のインプラント治療は、歯医者選びが大切です。
信頼できる歯医者を見つけて、安全にインプラント治療をしましょう。