オールオン4の寿命はどれくらい?長持ちさせる方法は?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

「オールオン4」は、最小4本のインプラントで最大12本の人工歯を支えられる、比較的新しいインプラント治療です。従来のインプラント治療よりも治療の負担がおさえられるなどのメリットがあり、徐々にオールオン4を受ける患者が増えてきています。

 

治療を受ける際に気になるのが、オールオン4の寿命です。費用や時間をかけて治療するのであれば、なるべく長く使いたいものです。

 

この記事では、オールオン4の寿命や長持ちさせる方法について解説します。

目次

1.オールオン4とは

オールオン4は、奥のインプラントを斜めにあごの骨に埋め込み、各インプラントのかかる不可を分散することで、最小4本のインプラントで最大12本の人工歯を支えられるインプラント治療です。

 

これまで自分の歯があまり残っていない場合は、失った歯の本数だけインプラントを埋め込む必要がありました。そのため、手術時間が長時間におよび、手術後の腫れなどの身体的負担が大きく、治療費用も高額でした。

 

オールオン4は、埋め込むインプラントの本数が少ないため手術時間・治療費がおさえられ、さらに状態によっては最短1日で人工歯を装着できます。

2.オールオン4の寿命はどのくらい?

オールオン4の寿命は、基本的には他のインプラント治療と変わりません。一般的には、インプラントを入れてから10年経過してもまだ使用できる確率は、90%以上だといわれています。場合によっては、一般的なインプラントと同じく、20年・30年と使い続けられる可能性があるでしょう。

 

ただし、他のインプラント治療と同じくオールオン4の寿命も、口の中の衛生状態・メンテナンスができているか・生活習慣などで大きく左右されます。

 

オールオン4の場合、最小4本のインプラントで人工歯を支えるので、1本でも使えなくなると、他のインプラントに大きな負担がかかります。そのため、1本でもインプラントが寿命を迎えると、除去して再治療しなければいけません。

 

また、かぶせものは、インプラントより寿命が短い場合が多いといわれています。かぶせものが先に寿命を迎えた場合、つくり直す必要があります。

 

オールオン4のかぶせものは、奥歯からすり減っていく場合が多く、噛み合わせのバランスが崩れやすいので、定期的チェック・メンテナンスは必須です。

3.オールオン4を長持ちさせる方法

オールオン4の寿命は、他のインプラント治療と同様、メンテナンスや患者の健康状態などによって異なります。長持ちさせる方法は以下の通りです。

3-1.日ごろのメンテナンスを徹底する

インプラントを入れると、天然の歯とは違い歯周病にならないと思われがちですが、インプラント周辺の組織が歯周病のような状態になる「インプラント周囲炎」になる可能性があります。

 

インプラント周囲炎は、インプラント周辺の組織が細菌に感染することにより起き、歯周病と同じく、歯茎の腫れ・出血・膿などの症状が出て、次第にインプラントを支えるあごの骨を溶かします。最悪の場合、インプラントが抜け落ちてしまう恐ろしい病気です。

 

インプラントは人工物なので免疫機能が機能せず、細菌への抵抗力が低いため、インプラント周囲炎の進行速度は歯周病の約10倍といわれています。

 

また、初期は出血などの自覚症状が少なく、あごの骨が薄くなっても天然の歯と比べてぐらつきが少ないため、異変に気がつきにくいのが特徴です。気がつくころには重症化しているケースも少なくありません。

 

インプラント周囲炎を防ぐには、歯周病と同じく、日ごろのケアで歯垢を溜めないようにすることが大切です。毎日丁寧にブラッシングするのはもちろん、歯間ブラシやデンタルフロスで、歯と歯の間など汚れが付着しやすい部分を重点的にきれいにしましょう。

3-2.歯科クリニックのメンテナンスを受ける

定期的に歯科クリニックの検診を受け、インプラントや歯茎などの歯周組織、かぶせものの状態をチェックすることで、インプラント周囲炎やかぶせものの破損などの異変に早期に気づき、対策が可能です。

 

また、歯垢が固くなった歯石は通常のブラッシングでは取り除けないので、歯科クリニックで専用の器具を使用した「スケーリング」を受ける必要があります。歯石にも歯垢と同じく、細菌が多く生息しているため、付着したままだとインプラント周囲炎のリスクが高まります。

 

メンテナンスの頻度は、口の中の状態やインプラント治療からどのくらい経過しているかによりますが、数ヶ月~1年に1回が目安です。

3-3.噛み合わせを整える

噛み合わせが悪いと、特定の歯に噛む力が集中して人工歯がすり減って破損しやすくなる、特定の場所に歯垢が蓄積してインプラント周囲炎のリスクが高まるといったデメリットがあります。また、かぶせものの素材によっては、周囲にある天然の歯にダメージを与えかねません。

 

治療直後は、バランスのよい噛み合わせであっても、両隣の歯が動くなど口の中の環境が変化することにより、噛み合わせが悪化する場合もあります。定期メンテナンスで噛み合わせをチェックしてもらい、もし痛みなど不具合を感じたらすぐに歯科クリニックに相談するようにしましょう。

3-4.歯ぎしりや食いしばりの対策をする

歯ぎしりや食いしばりといった噛み癖があると、特定の歯に負担が大きくかかり、オールオン4の寿命が縮む場合があります。

 

インプラントはあごの骨に直接埋め込まれており、天然の歯とは違い「歯根膜(しこんまく)」がありません。歯根膜はあごの骨と歯の間にある膜でクッションのような役割を果たしているため、インプラントは歯ぎしりや食いしばりによる衝撃をダイレクトに受けてしまいます。

 

そのため、インプラントやかぶせものに大きな力が加わり、ねじのゆるみや破損の原因となるのです。

歯ぎしりや食いしばりは無意識の行動なので、自分でおさえるのは難しいといわれています。歯科クリニックに相談し、マウスピースなどでダメージから守りましょう。

3-5.たばこをやめる

たばこは、オールオン4の寿命を縮める要因の1つです。たばこにはニコチンをはじめとする有害物質が多数含まれており、白血球の働きを妨げ免疫機能を低下させたり、ニコチンの血管収縮作用によって歯肉の血流を悪化させたりします。

 

その結果、インプラント周囲炎のリスクが高まり、悪化を促進します。オールオン4を受けた後に喫煙すると、インプラント周囲炎などが原因で、インプラントが抜け落ちる可能性が大きくなります。

 

歯科クリニックによっては、一定期間の禁煙期間を設けている場合もあります。しかし、できれば完全に禁煙した方が、オールオン4を長持ちさせられるでしょう。

3-6.生活習慣を整える

インプラント周囲炎の主な原因は、歯垢のなかに生息する細菌です。歯垢は生活習慣の乱れによって、付着しやすくなります。

 

例えば、甘いものを食べすぎると糖分によってプラークが増えやすくなる、睡眠不足・運動不足・ストレスによって免疫力が低下し細菌に感染しやすくなるといった場合が考えられます。

 

生活習慣の乱れによりインプラント周囲炎のリスクが高まり、オールオン4の寿命も縮んでしまう可能性が高いので、治療を機に生活習慣を見直しましょう。

3-7.全身疾患を治療する

糖尿病・高血圧・心臓病などの全身疾患は、歯肉やあごの骨の状態に影響するため、オールオン4の寿命とも深い関りがあります。

 

状態によっては、全身疾患の担当医と歯科医師が連携して治療にあたる必要があるので、持病がある場合は診察時に必ず相談しましょう。

4.オールオン4を長持ちさせる歯科クリニックの選び方

オールオン4を長持ちさせるためには、メンテナンスなどの対策は必須ですが、歯科クリニック選びも重要です。歯科クリニック選びのポイントを以下にまとめました。

4-1.オールオン4の症例実績が豊富か

オールオン4はインプラント治療のなかでも、比較的新しい治療法のため、対応できる歯科クリニックが限られています。また、治療難易度も高めなので、歯科医師の技術によって寿命が左右されやすい傾向にあります。

ホームページなどで、オールオン4の症例実績がどれくらいあるのかチェックすることで、腕の良い歯科医師に出会える可能性が高まるでしょう。

4-2.設備が整っているか

オールオン4に適した状態であるか見極め、的確な位置にインプラントを埋め込むには、高精度な検査が不可欠です。

 

口の中の状態を立体的に把握できるCTや細部の状態を的確に知るための歯科用顕微鏡を導入しているクリニックであれば、質の高い治療を受けられ、オールオン4が長持ちする可能性が高まります。

4-3.高品質なインプラントやかぶせものの素材を使えるか

高品質なインプラントやかぶせものの素材を使用すれば、それだけオールオン4が長持ちする可能性は高まります。

 

世界的に知名度の高いメーカーのインプラントであれば安全性が高く、寿命も長くなります。また、かぶせものはレジンのものよりもセラミックのものの方が、すり減りにくく長持ちするといわれています。

 

極端に治療費が安い場合、低品質なインプラントやかぶせものを使用している場合もあり、寿命が短くなる可能性があるので、注意が必要です。

4-4.歯科クリニックの保証制度を確認

万が一の場合に備え、多くの歯科クリニックでは、オールオン4の治療から一定期間、再治療が無料または低価格で受けられる「保証制度」を設けています。

 

もちろん、オールオン4にトラブルが起きず長持ちするのが一番良いのですが、いざというときの安全・安心を守るために、保証制度は非常に重要といえるでしょう。

 

保証期間は約5~10年に設定されている場合が多いですが、歯科クリニックによって、かぶせものの保証の有無や保証期間・保証開始のタイミング・保障費用・保証回数などが異なります。

 

さらに、決められた定期メンテナンスを受けていないと保証の対象外となる場合がほとんどです。

 

長く使い続けるために、治療前に保証内容をしっかり把握しておくのをおすすめします。

5.オールオン4はポイントをおさえれば長持ちさせられる!

オールオン4は、残っている歯の本数が少なくてもインプラントを入れられる画期的な治療法です。寿命は通常のインプラントとほぼ同じで、90%以上が治療から10年後も使用できます。

 

オールオン4の寿命は、口内環境などに大きく左右されるので、日ごろのお手入れや歯科クリニックの定期メンテナンスをしっかり行いましょう。

 

また、歯科クリニックを選ぶ際は、歯科医師の経験症例数や設備、保証内容などをチェックするのをおすすめします。

 

オールオン4は、手入れなどに気をつけることにより長年使い続けられます。歯科医師のアドバイスを守って長持ちさせましょう。

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