インプラント治療。何歳から始められる?適正年齢はいつ?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療を検討する際に、適正年齢が気になる方は多いのではないでしょうか。特に若い人は、周りに同年代でインプラント治療を受けている人が少なく、不安に感じるかもしれません。

 

この記事では、何歳から始められるかなど、インプラント治療と年齢の関係について解説します。

目次

1.インプラント治療の適正年齢とは

インプ ラント治療の適正年齢の目安は、下記の通りです。

1-1.インプラント治療の開始は20歳前後が目安

インプラント治療に適した年齢は、一般的には20歳前後からとされています。

 

インプラントはあごの骨に人工歯根であるインプラントを埋め込み、人工歯を装着して失った歯を補う治療法です。天然の歯であれば、あごの成長などの骨格の変化に合わせて、自然に適した生え方になりますが、インプラントはそういった変化に対応できません。

 

そのため、あごの骨が成長している途中でインプラントを入れてしまうと、歯並びや見た目に影響してしまうケースがあります。

 

16歳頃には親知らずを除く永久歯が生え揃いますが、その後もあごの骨の成長は進みます。歯科医師の診察を受け、あごの骨の成長が止まっているかを見極めてもらい、インプラントの開始時期を決めましょう。

 

もし、インプラント治療をスタートできない場合は、隣の健康な歯を利用して、入れ歯や仮歯を装着して一時的に対処します。

1-2.インプラント治療に年齢の上限はない

インプラント治療に年齢の上限はありません。しかし、インプラント治療は、歯ぐきを切開してあごの骨を削る外科手術が必要なため、身体への負担が大きい治療法です。全身疾患などで体力が衰えていて治療に耐えられない場合は、インプラント治療は適さないと判断されます。

 

近い将来、身の回りのことができなくなる可能性が高い場合も、治療後のメンテナンスが難しいため、インプラントには適さないでしょう。

 

そのため、70歳以上の人がインプラント治療を受ける際は、全身の健康状態をチェックし、慎重に判断します。

2.若い人がインプラント治療をしなければいけない場合

虫 歯や歯周病の影響で、歯を失うリスクが本格的に高まるのは50代からです。そのため、インプラント治療を受ける年齢層は、高齢者が中心です。

 

20代をはじめ若い年齢でインプラント治療をする人は少ないのですが、どのようなときに必要となるのでしょうか。代表的な理由を紹介します。

2-1.神経が壊死するほど虫歯が進行している場合

若い人であっても、虫歯を治療しないと、歯の神経が虫歯菌に侵され壊死する場合があります。

 

歯の神経が壊死した後も放置すると、虫歯が歯の周辺の組織にまで広がり「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」になる可能性があります。根尖性歯周炎は、根の先端に膿が溜まり、炎症によりあごの骨が少しずつ溶けてしまう病気です。

 

治療をしても根尖性歯周炎が治らなければ、周囲への感染を防ぐため抜歯せざるを得ず、インプラント治療が必要になる場合もあります。

2-2.重度の歯周病の場合

若い人であっても、歯磨きの習慣がない場合などは、重度の歯周病となり歯を失うリスクがあります。

 

歯を磨かないと歯垢が溜まった状態が続き、歯垢に潜む歯周病菌が毒素を出し、歯ぐきに炎症が起きて歯周病を発症します。歯周病が進行すると、歯を支えているあごの骨が徐々に溶け、歯がグラついて、最終的には抜け落ちてしまいます。

 

また、進行した歯周病を放置すると、あごの骨の破壊が進むため、予防のために歯を抜く場合もあります。

2-3.事故による外傷で歯を失った場合

若い人が歯を失う原因として多いのは、交通事故やスポーツ中の事故による外傷です。交通事故やスポーツ中の事故で大きな衝撃が加わって、歯が割れたり折れたりする場合があります。歯根まで破損するケースがあります。歯根が破損すると歯を残すのが難しく、抜歯となる場合も少なくありません。

 

ちなみに、外傷で歯を失った場合は虫歯や歯周病で歯を失うケースと比べ、あごの骨の状態がよく、インプラント成功率が高いといわれています。

3.若い人がインプラント治療をするメリット

歯を 失ったときに補う方法としては、インプラント以外にも入れ歯やブリッジなどがあります。若い人がインプラント治療を選択する主なメリットを紹介します。

3-1.健康な歯への影響が少ない

ブリッジは、両隣の歯を削って人工歯を橋のように架ける治療のため、健康な歯に負担を与えるリスクがあります。部分入れ歯も、健康な歯に金具で固定するので、負担がかかります。

 

負担が蓄積した結果、健康な歯にトラブルが起き、歯の寿命が短くなり、歯を失う結果になりかねません。歯が一本欠けると、数年~数十年後に他の歯も失われるリスクが高まるでしょう。

 

インプラントであれば、あご骨にインプラント体を埋め込むため、周囲の歯にほとんど影響を与えることなく人工歯を装着でき、結果的に周囲の歯を長持ちさせられます。

3-2.インプラントの成功率が高い

若い人はあごの骨量が多く、インプラント体をしっかりと支えられる場合がほとんどです。そのため、手術がスムーズに進み、成功率も高いといわれています。

 

また、中高年と比べて体力・回復力が優れているため、外科手術による傷が治りやすく、感染症にかかりにくい傾向にあります。

さらに、インプラント体とあごの骨が結合しやすく、短期間で治療が完了する場合が多いでしょう。

入れ歯やブリッジを入れて歯を補い、年数が経ってからインプラントを入れるよりも、早めに治療を受ける方がリスクを軽減できる可能性が高いといえます。

3-3.見た目の違和感が少ない

インプラントは、インプラントをあごの骨に埋め込み人工歯を装着するため、入れ歯やブリッジと比べて、自然な見た目に仕上がります。人工歯の材質を高品質なものにすれば、天然の歯との違いはほぼわかりません。

 

保険適用の入れ歯やブリッジの場合、銀歯や金具が見える、人工歯が経年劣化して変色するなど、人工歯であると気づかれやすいというデメリットがあります。

 

若い人は周囲に入れ歯やブリッジを入れている人が少なく、見た目が気になる場合も多いでしょう。違和感を軽減できるインプラントを選ぶメリットは、大きいといえます。

4.若い人がインプラント治療をするデメリット

若い時のインプラント治療には多くのメリットがありますが、デメリットも少なくありません。代表的なものを紹介します。

4-1.治療費が高い

保険適用の入れ歯やブリッジであれば、治療費の自己負担分は高額な治療費はかかりません。

 

しかし、インプラント治療は基本的に保険適用外のため、全額自己負担となります。保険適用の入れ歯やブリッジと比べると、費用の負担は非常に大きくなります。

 

特に若い世代にとっては、金銭面の負担が大きい治療法といえるでしょう。

4-2.治療期間が長い

インプラント治療は、あご骨に埋め込んだインプラント体がくっつくのを待って、人工歯を装着する治療法です。手術自体は1日で終わるものの、待機期間があり、治療期間は4ヶ月~1年ほどです。

 

インプラント治療と同じく歯を補う治療であるブリッジ・入れ歯の治療期間の目安は1~2週間です。比較すると、インプラントの治療期間は長いといえます。仕事などで忙しい若い人にとっては、デメリットとなるかもしれません。

4-3.定期メンテナンスに通い続ける必要がある

インプラント治療は、適切な治療・メンテナンスをすれば、治療後10年経過しても9割以上が使えるほど寿命の長い治療法です。なかには、数十年以上にわたり使用できるケースもあります。

 

しかし、定期メンテナンスを怠ると、歯周病に似た病気である「インプラント周囲炎」によりインプラントが抜け落ちる、インプラントや人工歯が破損するなどのトラブルが起き、インプラントの寿命が短くなるリスクがあります。

 

インプラントを長持ちさせるには、毎日の歯磨きでしっかり汚れを落とすのはもちろん、数ヶ月から半年に1回のペースで定期メンテナンスに通い、歯のクリーニングや口の中のチェックなどをしてもらう必要があります。

 

また、多くのインプラントメーカーは、万が一インプラントが使えなくなった場合に保証期間中であれば無償または低価格で再治療が受けられる保証制度を設けています。一般的に保証を適用するには、定期メンテナンスを欠かさず受けていることが条件となっており、怠っている場合は全額自己負担になるので注意が必要です。

 

上記の理由から、インプラント治療を受けるのであれば、定期メンテナンスは必須です。しかし、若い人は、結婚・出産・転職などにより生活スタイルが変化する機会が多く、忙しくなりがちなので、定期メンテナンスに通い続けるのが大変だと感じる人が多いかもしれません。

5.インプラント治療は20歳くらいから。若い時に始めるメリットは大きい

重度の虫歯や歯周病。事故による外傷により、若くしてインプラント治療が必要となる場合もあります。

 

インプラント治療は、あごの骨にインプラントを埋め込む治療なので、あごの骨の成長が止まるまで適用できません。およそ20歳前後であごの骨の成長が終わりますが、個人差があるため、歯科医師の診察により、インプラント治療の開始時期を決めます。

 

若い時にインプラント治療をするメリットとして、健康な他の歯への影響が少ない、成功率が高い、見た目に違和感がないなどがあげられます。

 

ただし、金銭面や治療時間、定期メンテナンスに通う手間などのデメリットがあるので、注意が必要です。歯科医師に相談し、インプラント治療を適用できるかどうか、メリット・デメリットなどの説明を受け、しっかり検討しましょう。

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