インプラント治療は「生命保険」の対象になりますか?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラント治療を受けたいと思っても、ネックになるのが高額の治療費だという方は少なくありません。

日本国内で治療する場合、その治療費は歯1本あたり30万から40万円、上下ともにオールオン4で治療すると400万から500万程度が相場です。

入れ歯治療やブリッジ治療よりも寿命が長く、自分の歯のような感覚で噛めるなどのメリットが多く、魅力的なインプラントではありますが、高額な治療費のため、インプラント治療を選択肢から外す人もいるかもしれません。

 

そんなインプラントの治療費が、加入している「生命保険」の対象になるのかどうかを考えたことはあるでしょうか。

少しでも生命保険からの給付金が支払われれば、負担の軽減となり、インプラント治療が治療の選択肢となってくるかもしれません。

 

今回はインプラント治療が生命保険の給付金の支払い対象になるのかどうか、まとめました。

目次

1.インプラント治療費はなぜ高額なのか

インプラント治療費はなぜ高額なのかを考えたことがあるでしょうか。

その高額である理由の1つに、インプラント治療が「自由診療」であるからというものがあります。

自由診療とは、国民皆保険制度、つまり健康保険が適用されない診療のこと。

健康保険は疾病や負傷の治療が対象で、年齢にもよりますが、治療にかかる医療費の2〜3割の自己負担だけで治療を受けられるというものです。

歯科治療においても、虫歯治療や歯周病治療など、歯の機能の回復を目的とした治療においては、健康保険が適用されます。

 

しかし、インプラント治療の場合、疾病や負傷の治療というよりは審美性の向上を意味合いが強いという認識のため、この健康保険が適用されず、自由診療とされています。

同じように歯を失った際の治療である、入れ歯治療やブリッジ治療は、使用する材質にもよりますが、健康保険が適用される保険診療になることがあります。

 

また、インプラント治療は他の治療と比べ、技術の習得が難しく、期間も費用もかかります。

常に最新の知識を身につける必要もあり、より専門的な知識、技術が必要であるとともに、最新機器なども必要であることから、自由診療とされているのです。

1-1.健康保険が適用とされる場合もある

インプラント治療は、基本的に健康保険適用となりませんが、以下の場合、適用される場合もあります。

 

・先天性疾患により、顎の骨の1/3以上が連続して欠損しているケース

・先天的な理由により、顎の骨が形成不全であるケース

・後天的な理由(腫瘍や顎骨骨髄炎、事故など)により、顎の骨の1/3以上が連続して欠損しているケース

・骨移植によって顎骨が再建されたケース

 

これらのケースであると主治医から診断を受け、かつ保険診療でインプラント治療をするための条件をクリアした病院での治療である場合、インプラント治療に健康保険が適用されます。

2.インプラント治療に「生命保険」の対象であるか

インプラント治療は自由診療であるため、その治療のほとんどに健康保険が適用されないと分かりました。

では、各個人で契約をしている「生命保険」はどうでしょうか。

2-1.生命保険とは

生命保険とは、個人が保険料を負担し、契約者が死亡した際や指定された高度障害になった時に、保険金を受け取ることができる保険です。

健康保険のように必ず契約しなければならないというものではなく、その契約の有無、またどの保険会社と契約するか、どのような内容で契約するかは各個人に委ねられています。

 

その生命保険には、病気や怪我で治療、入院することになった際に備え、医療保障を特約としてつけられる場合があります。

医療保障の特約をつけていれば、病気や怪我の際の治療費や入院費を給付金として支給してもらえるというものです。

また、生命保険でなく、医療保障のみに特化した医療保険に加入していれば、同じく給付金が受け取れます。

ただし、この給付金を受け取るには、さまざまな条件があり、その条件に当てはまっていなければ給付金が受け取れません。

2-2.インプラント治療は生命保険の対象?

インプラント治療を受けた場合、給付金を受け取る条件に当てはまるかどうか気になるところですね。

インプラント治療は外科手術も伴うため、その手術においては医療保障の対象(手術給付金の対象)となるのでは?と思われる方もいるかもしれません。

しかし、実際は残念ながら、インプラント治療は全過程において、どの生命保険会社の医療保障においても対象外です。

 

医療保障の対象となるためには、「医科診療報酬点数表」というものに、手術料が算定されていなければいけないという決まりがあります。

インプラント治療の場合、この医科診療報酬点数表に、手術料が算定されていないのです。

 

ただし、健康保険が適用となる先天的・後天的な疾患や理由によるインプラント治療(歯の機能回復を目的とした治療)であれば、治療費が給付金の対象になるケースも、中にはあります。

その治療内容によっても異なりますし、契約している生命保険の内容によっても異なるため、治療を受ける際に医師や保険会社へ確認が必要です。

 

2-2-1.先進医療特約の対象になる?

生命保険の医療保障の中には、先進医療特約といって、厚生労働大臣が認めた高度の医療技術を用いた療養に対し、その技術料と同額を給付金と受け取ることができる特約があります。

インプラント治療は高度な手術も伴うため、先進医療ではないかと考える方もいるでしょう。

実際、インプラント治療は2012年の3月31日まで、その一部が先進医療として認められていました。

その一部とは先天的・後天的な疾患や理由によるインプラント治療(歯の機能回復を目的とした治療)のこと。

しかし、この治療は2012年4月以降、健康保険が適用されることになりました。

そのため、先進医療からは外されているので、先進医療特約の対象にはなりません。

 

この歯の機能回復のためのインプラント治療だけでなく、先進医療として認定されている治療も、日々の医療技術の発展により、保険を契約した時には先進医療であっても、実際に給付を受けたいと思ったときには先進医療ではなくなっているというものもあるので注意が必要です。

 

2-2-2.入院給付金が支払い対象になることも

インプラント治療においては、治療費が生命保険のいかなる保障に対しても対象とならないことが分かりました。

ただし、病気や怪我の治療を目的としたインプラント治療で入院した場合には、入院給付金が支払い対象になることもあります。

しかし、この場合もあくまで審美的目的のインプラント治療ではなく、健康保険が適用となる先天性、後天性の疾病治療のためのインプラント治療であることが前提となります。

それプラス、生命保険の医療特約として入院保障をつけている場合において、給付金が受け取れるということです。

自分のインプラント治療が入院給付金の支払い対象になるかどうかは、加入している保険会社に確認してみてください。

3.インプラント治療は医療費控除の対象となる

健康保険は適応外、生命保険の給付も対象外であることから、治療費の負担が心配で、インプラント治療を諦めたり、ためらったりする人がいるかもしれません。

そんな中知っておきたいのが、医療費控除です。

医療費控除とは、自身や生計を一にする配偶者・その他の親族のために医療費を支払った場合、その支払った医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けられるというもの。

 

確定申告が必要ではありますが、申告をすれば1年間でインプラント治療のほか、病院等で支払った医療費の合計額から、保険金等で補填された金額と10万円(もしくは総所得金額が200万未満の方は総所得金額の5%)を差し引いた額が所得税から控除されます。

最大、200万円まで控除されます。

会社員等ですでに所得税を納めている場合には還付金として、治療費の一部を受け取ることができ、自営業やフリーランスの方は納める所得税が軽減されます。

 

このような制度もうまく利用しながら、メリットの多いインプラント治療を治療方法の選択肢として加えるのもいいでしょう。

4.インプラント治療は生命保険の対象外!しかし費用よりも将来的なメリットでの選択を

インプラント治療は健康保険も適用されない自由診療であり、生命保険の給付も対象とならないことが分かりました。

そのため、治療を受けたいと思っても、費用面での患者の負担は大きいことから、インプラント治療を選択肢から外してしまう方もいるかもしれません。

 

しかし、歯は一生涯使う、大切な自分の体の一部です。

治療費だけでなく、長い目で見たときに自分にとってメリットの多い治療法は何か考えることが大切だと言えます。

 

将来できる限り後悔しないよう、医療費控除等も活用し、医師と相談しながら、自分に合った治療法を選んでいきましょう。

この記事が気に入ったら「評価」ボタンを押してください!

★★★★★

評価する