インプラント治療後に「圧迫感」を感じます。対処法は?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療後に、口の中の圧迫感が気になるケースは少なくありません。ものを噛んだり話したりするのに支障がなくても、違和感が続くのはストレスになります。なるべく早く解消したいという方が多いのではないでしょうか。

 

この記事では、インプラント治療後の圧迫感の原因や対処法、圧迫感が出るのを予防する方法について解説します。インプラント治療後に快適に過ごせるよう、ぜひ参考にしてください。

目次

1.インプラント治療後の圧迫感って?いつまで続くの?

インプラント治療後、口の中に圧迫感が出る場合があります。具体的には、歯ぐきが締め付けられるような感覚や歯と歯の間にものが挟まったような感覚が生じ、場合によっては痛みも伴います。

 

インプラント治療後の圧迫感は、全ての人にあらわれるわけではありません。しかし、インプラント治療では外科処置を行うため治療箇所の負担が大きく、圧迫感が出る可能性は充分あります。

 

インプラント治療後の痛みは早くて2~3日、長くても2週間くらいで解消するケースがほとんどです。圧迫感についても、同じくらいの期間で解消する場合が多いでしょう。

2.インプラント治療後の圧迫感の原因とは

インプラント治療後の圧迫感の主な原因は下記の通りです。

2-1.手術によって腫れている

インプラント治療は、歯ぐきを切開してあごの骨に穴を開け、インプラント体を埋め込んで人工歯を装着するという流れで行います。外科処置を伴うため、手術後は歯肉が腫れて、圧迫感や痛みが出る場合があります。

 

手術による炎症が原因なので、ほとんどの場合、時間が経つにつれ圧迫感は軽減されます。

2-2.インプラントに周囲の組織が慣れていない

インプラントを入れた直後は、歯肉など周囲の組織がまだインプラントに慣れていません。周囲の組織がインプラントになじむまで、圧迫感が出る場合があります。特に長期間にわたり歯がない状態が続いていた場合、それまで空いていたスペースに急に人工歯を入れるため、慣れるまで時間がかかるケースがあります。時間の経過とともに、自然に圧迫感はなくなっていきます。

2-3.インプラントのネジが締まり過ぎている

インプラントの上部構造である人工歯を固定する方法は、大きくわけて2つあります。1つは、連結用のパーツである「アバットメント」にネジ状のスクリューで固定する方法で、もう1つは、歯科用のセメントで接着する方法です。

 

スクリューで固定する場合、ネジが締まりすぎると、圧迫感が出る可能性があります。また、セメント固定の場合は使用しているセメントがあふれることで、圧迫感が生じます。

2-4.かみ合わせが悪い

かみ合わせに問題があると、インプラント体や歯ぐきなど周囲の組織に大きな負担がかかります。過度の負荷がかかり続けると、圧迫感を引き起こす可能性があります。

 

インプラント治療をした直後だけではなく、人工歯がすり減ってかみ合わせが乱れた場合も圧迫感が出ることがあります。

2-5.インプラント体が適切に埋め込まれていない

インプラント体を埋め込んだ位置・深さ・角度が不適切だと、周囲の組織や神経が圧迫されることがあります。この場合は、治療後時間が経過しても圧迫感や違和感がなくなりません。特に痛みを伴う場合は、埋め込んだ位置が適切ではない可能性が高いでしょう。

2-6.インプラント周囲炎が発症している

インプラント周囲炎とは、歯肉などインプラントの周りの組織が、歯周病菌に感染して炎症を起こす病気です。歯ぐきの腫れが原因で圧迫感を感じる場合があります。

 

インプラント周囲炎が悪化すると、歯ぐきの腫れだけではなく、出血・膿が見られるようになります。炎症が進行することで、歯ぐきやあごの骨が破壊され、インプラント体を充分に支えられなくなり、ぐらつきや脱落の原因にもなるので、早めの対処が必要です。

3.インプラント治療後の圧迫感への対処法

イ ンプラント治療後の圧迫感には、さまざまな原因があります。インプラントや歯肉に異常が出ている可能性もあるため、まずはインプラント手術を受けた歯科クリニックに相談しましょう。

 

歯科クリニックで行う主な対処法は下記の通りです。

3-1.痛み止めや炎症をおさえる薬を服薬する

インプラント手術による炎症が原因で圧迫感や痛みを感じる場合、痛み止めや炎症をおさえる薬によって症状を軽減できます。

 

服薬しているのにもかかわらず圧迫感がある場合でも、薬を変更するなど何らかの対策ができるので、歯科医師に相談しましょう。

3-2.インプラントのネジを緩める

スクリューで固定している場合、締めつけを緩めることで圧迫感がなくなる場合が少なくありません。歯科医師の診察を受け、緩めてもらいましょう。

 

また、セメント固定の場合も歯科医師に調整してもらうことで、解決する可能性が高いと考えられます。

3-3.かみ合わせを調整する

かみ合わせが原因で圧迫感がある場合、歯科医師に調整してもらうと、圧迫感を解消できます。

 

かみ合わせが悪いまま放置することによる悪影響は、圧迫感だけではありません。インプラントの周りの健康な歯の位置が動いてしまい、歯並びやかみ合わせが悪化するといったリスクがあります。

3-4.再手術する

インプラント体が適切に埋め込まれていない場合、すでに埋め込んだインプラント体を取り除いて、正しい位置に埋め込む再手術が必要になる可能性があります。

 

再手術には、外科手術を伴うため患者の負担が大きい、新しく埋め込んだインプラント体とあごの骨が結合するまで時間がかかるといったデメリットがあります。

 

インプラント治療を受けたクリニックの保証制度を利用して、再手術を無料またはリーズナブルに受けられる場合もあるので、まずは歯科医師に相談しましょう。

3-5.インプラント周囲炎を治療する

インプラント周囲炎を治療し、歯肉の炎症を鎮めることで圧迫感がなくなるケースがあります。

 

軽度のインプラント周囲炎の治療法は、歯科クリニックでの歯垢や歯石の除去、薬剤を使用した消毒・洗浄などです。重症化すると、歯ぐきを切開して奥の方にある歯石を取り除く手術が必要になります。

 

治療により炎症がおさまっても破壊された歯肉やあごの骨は回復せず、インプラントを維持できなくなる可能性があるので、早めの治療が大切です。

4.インプラント治療後の注意点

イン プラント手術後は圧迫感を予防するために、下記のような点に注意しましょう。

4-1.インプラントを指や舌で刺激しない

インプラントを入れた場所に違和感を覚え、指や舌で触って状態を確かめる人も少なくありません。しかし、指や舌で刺激を与えることにより、圧迫感や痛みが強まるリスクがあります。

 

なるべく刺激を与えないよう、触るのは控えましょう。特に手術当日は、非常にデリケートな状態なので、要注意です。指や舌に付着している細菌が治療箇所に感染して、傷口が悪化してしまうこともあります。

4-2.食べ物に気をつける

炎症の悪化による圧迫感を防ぐために、治療後の食べ物に注意しましょう。手術後数日は、辛いものや熱いものは避け、よく煮たうどん・雑炊・ヨーグルトなど、柔らかく刺激の少ない食べ物を選びましょう。

4-3.飲酒を避ける

アルコールは血行を促進する作用があり、炎症を悪化させ圧迫感の原因となる可能性があります。さらに痛みや出血の引き金にもなりかねません。手術後2~3日はお酒を飲まない方が無難です。

4-4.運動や湯船での入浴は控える

飲酒と同じく、運動や湯船での入浴も血行を促進し、圧迫感を引き起こす可能性があります。手術当日は安静に過ごし、散歩などの軽い運動も控えましょう。

 

入浴は、湯船に浸からずシャワーにとどめるのがおすすめです。サウナも血行を促進するので、避けて下さい。

4-5.歯磨きなど日々の手入れをしっかりする

インプラント周囲炎などにより歯ぐきが炎症を起こすと、圧迫感の原因となります。炎症を引き起こす細菌が増殖しないよう、歯磨きなどのデンタルケアをしっかりしましょう。

 

毎日正しく歯を磨く、デンタルフロスや歯間ブラシなどで通常のブラッシングでは落ちにくい汚れも落とすといった点を意識すると清潔な状態を保てます。

4-6.定期メンテナンスに通う

定期メンテナンスに通っていれば、歯周病やかみ合わせの乱れといった口の中の圧迫感につながる異常を早く見つけて対処できます。

 

クリーニングによって細菌が多く潜む歯垢や歯石を取り除けるため、歯周病などの感染症のリスクを軽減できます。特に歯石は、通常の歯磨きで落とすのは難しいので、プロの手で除去してもらいましょう。

 

また、再手術する場合などに利用できる保証制度を使うためにも、定期メンテナンスは重要です。保証制度の利用条件として、歯科医師の指示通りに定期メンテナンスを受けていることを定めているケースが多いためです。

 

インプラント体を正しい位置に埋め込み治すための再手術にも利用でき、費用を大幅に節約できます。

5.インプラント治療後の圧迫感の対処法はさまざま!まずは歯科医師に相談しよう

インプラント治療後に、歯ぐきが締めつけられるような圧迫感を感じる場合があります。圧迫感の原因は、手術によって腫れが出ている・インプラントに周囲の組織が慣れていない・インプラントのネジが締まりすぎているなどさまざまです。

 

主な対処法は、痛み止めや炎症をおさえる薬を服用する・インプラントのネジを緩める・かみ合わせを調整するなどです。

 

また、インプラントを指や舌で刺激しない、食べ物に気をつけるなどの注意点を守ることで、圧迫感が出るのを予防できます。

 

治療から時間が経過することで圧迫感がなくなるケースもありますが、数週間経過しても改善しない場合は歯科医師に相談しましょう。

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