インプラント専門の「歯科衛生士」の役割とは?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラント治療を行っている歯科医院には、インプラント専門の歯科衛生士が在籍していることがあります。

インプラント専門の歯科衛生士は、どんな点が一般的な歯科衛生士と異なるのでしょうか。

今回はインプラント専門の歯科衛生士は、インプラント治療においてどのような役割をする方なのか紹介していきます。

目次

1.インプラント専門歯科衛生士とは?

インプラント専門歯科衛生士は、その名の通りインプラント治療を受ける患者の口腔ケア等に特化した専門の歯科衛生士のことです。

一般的な歯科衛生士とはどのような点が異なるのか、またどのような役割があるのかみていきましょう。

1-1.歯科衛生士とインプラント専門歯科衛生士の違い

一般的な歯科衛生士は、歯科治療をする歯科医師の補助や歯科予防医療を行います。

また、歯科医院の感染症対策や医療廃棄物の処理なども担っています。

国家資格である「歯科衛生士免許」を持っていれば、これらの仕事に携わります。

 

これに対し、インプラント専門歯科衛生士は、インプラント治療をする患者の口腔ケアやトラブルの予防等を専門的に行います。

インプラント治療の介助およびメンテナンスなど、治療前から術後、メンテナンスまでの患者のケアを任されます。

インプラント専門の歯科衛生士になるには、「歯科衛生士免許」を持っていることが必須なので、一般的な歯科衛生士の仕事も行いますが、それに加え、インプラント治療を受ける患者の健康維持や相談なども含め、サポートを行います。

 

また、インプラント治療、手術を行う歯科医師のサポートも行います。

インプラント治療は医師の高い技術力はもちろん、知識や経験などが大きく影響する、高度な治療です。

その医師をサポートするためには、歯科衛生士もインプラント治療に関する知識や技術を習得しておかなければいけません。

1-2.インプラント専門の歯科衛生士の役割

インプラント治療において、インプラント専門の歯科衛生士は包括的に患者の健康管理、治療の進行状況を管理するという役割を持っています。

具体的にどのような役割なのでしょうか。

 

1-2-1.インプラント治療前後の予防管理

インプラント治療前から治療後まで、定期的に患者の口腔内環境のメンテナンスを行います。

メンテナンスをしっかり行うことで、インプラント治療をスムーズに進めたり、治療後のトラブルを予防したりできます。

特に治療後のメンテナンスはとても重要です。

少しのトラブルがインプラントの寿命を縮める原因になったり、その他の疾患へつながったりすることもあります。

インプラント専門歯科衛生士は、そうした治療前後の口腔トラブルを防ぐための徹底したメンテナンスを担っています。

 

1-2-2.ブラッシング・生活指導

患者に対し、正しいブラッシング方法やフロスを使ったケアの仕方などの指導を行います。

インプラント治療中に虫歯や歯周病を患うと、そこで治療をストップさせなければいけない場合もあります。

虫歯や歯周病を防ぐには日々の患者自身の口腔ケアが大切です。

また、インプラント治療前後の食生活や禁煙などの生活指導も行います。

インプラント治療は、治療前後の生活では気をつけなければいけないことがたくさんあります。

その点を患者自身が理解、そして実践できるよう、医師とも連携しながら指導していくことがインプラント専門衛生士の役割でもあります。

 

1-2-3.インプラント周囲炎の予防と早期発見

インプラント治療において最も怖い病気が、治療後のインプラント周囲炎だと考える医師も少なくありません。

インプラント周囲炎とは、インプラント治療したところの周囲の歯茎が腫れたり、歯茎から出血したりなどの歯周病のような症状を引き起こす病気です。

症状は歯周病と似ていますが、歯周病とは違って完治が難しいため、厄介な病気だと言われています。

インプラント周囲炎が進行すると、最悪せっかく埋め込む手術を行ったインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。

 

そうならないためにも、インプラント周囲炎の予防するためのメンテナンスを行うとともに、少しでも予兆があれば早期発見をし、進行しないようにすることもインプラント専門の歯科衛生士の役割です。

 

1-2-4.治療計画の進行状況を管理

基本的にはインプラントの治療計画は歯科医師が立てますが、インプラント専門歯科衛生士もインプラントに関してはスペシャリスト。

しっかりとした知識を持っているため、医師と連携しながら治療計画通りにスムーズに進められる方法を考えます。

また、その治療の進行状況を管理し、何かトラブルがあれば対処をしていきます。

 

1-2-5.患者への情報提供

インプラント治療を受ける上で、患者が治療に対し、正しい知識を持つことはとても重要です。

患者はブラッシングなどの口腔ケアや生活面で気をつけなければいけないことも多いですし、手術等において不安なところも多いでしょう。

そのような不安点に対し、正しい知識、正しい方法を情報提供していくことも、インプラント専門の歯科衛生士の大切な役割です。

2.インプラント専門の歯科衛生士になるには

日本のインプラントに関する学会6団体のうち、インプラント専門の歯科衛生士の資格を認定しているのは4団体あります。

・公益社団法人日本口腔インプラント学会

・一般社団法人国際口腔インプラント学会

・一般社団法人日本先進インプラント医療学会

・公益社団法人日本歯科先端技術研究所

 

上記の学会が主催する認定資格の条件を満たし、合格すればインプラント専門の歯科衛生士として認定されます。

2-1.試験の難易度

学会によって試験内容は違いますが、難易度に大きな差はありません。

ただし、どの学会の試験も難易度はとても高く、簡単には取得できません。

それだけに、インプラント専門歯科衛生士は、スペシャリストであるということがわかるでしょう。

2-2.受験資格・申込条件

インプラント専門歯科衛生士の試験を受けるには、さまざまな条件があります。

これも学会によって異なりますが、どの学会においても必須なのが、歯科衛生士の免許を持っていることです。

もともと歯科衛生士であることは必須条件となります。

 

そのほか、インプラント治療の介助やメンテナンスに携わってきた経験があることを必須条件としている学会も多いです。

つまりインプラント治療を行なっている歯科医院で、治療のサポートの経験を詰んだ歯科衛生士でなければ、試験を受けることができません。

書類審査等で、症例等を提出しなければならない場合もあります。

つまり、インプラント専門の歯科衛生士は経験豊富な歯科衛生士でなければ、なれないということです。

この点は患者にとって、安心につながる点でしょう。

2-3.資格の更新制度

全ての学会ではありませんが、資格が更新制である学会もあります。

日本で会員数が最も多い日本口腔インプラント学会の資格は、5年ごとに更新審査があります。

そのほかの学会でも、資格取得後も学会へ定期的に出席が必須だったり、教育講座を受講しなければいけなかったりする場合も多いです。

インプラントはまだまだ設備や技術等は発展途中。

新しいことを学び続け、インプラント治療に対する知識をアップデートしていく必要があるからです。

 

基本的にインプラント治療を行う歯科医師には、特別なライセンスは不要です。

歯科医師であり、歯科医院にインプラント治療に必要な設備が整ってさえすれば、誰でもインプラント治療を行うことはできます。

歯科医師がインプラントに対し、どの程度の経験があるのか、正しい知識を持っているのかは見えにくく、判断するのは難しいため、インプラント治療を受ける患者側としては少し不安な点がありますね。

 

その点、専門の歯科衛生士の資格は、治療をサポートする歯科衛生士がインプラント治療に対する知識を、しっかりと持っていることの証明となります。

そしてそんな専門的なスタッフを採用している歯科医院は、インプラント治療に力を入れている歯科医院だと判断もできます。

安心してインプラントを受けたいと思う患者にとって、専門の歯科衛生士の資格を持っている衛生士が在籍している点は、治療を受ける歯科医院を選ぶ際の大きなポイントとなるでしょう。

3.インプラント専門の歯科衛生士はインプラント治療における心強いサポーター!

インプラント専門の歯科衛生士は、インプラント治療を受ける患者のケアや情報提供などを行う、心強いサポーターです。

インプラント治療が成功するよう、患者の健康管理と長期的なメンテナンスを専門的な知識を持って行います。

一般的な歯科衛生士よりも、基本的な水準以上の知識とスキルを持ち合わせ、インプラント治療に詳しい衛生士です。

インプラント専門歯科衛生士の資格取得はそのスキルの証明。

歯科医師と連携しながら、常に最新の知識をアップデートしながら、治療にあたってくれます。

インプラント治療を少しでも安心感を持って受けたいという方は、専門の歯科衛生士がいるかどうかで歯科医院を選ぶのもいいかもしれません。

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