インプラント(人工歯)を飲み込んでしまった!対処法は?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラント治療を終えたあと、インプラントをつけて問題なく生活していたものの、ふとしたタイミングで、人工歯が外れてしまい、思わず飲み込んでしまった!という場合、どうすればいいでしょうか。

できれば起きてほしくないことではありますが、インプラントの上部構造である人工歯が外れてしまうことはゼロではありませんし、口内のことなので、つい飲み込む可能性もゼロではありません。

 

いざという時にどのような対処をとったらいいのか、また外れてしまう原因などについて紹介します。

目次

1.インプラント(人工歯)を飲み込んでしまったら

「インプラントの人工歯が外れてしまって、飲み込んでしまった・・・」

いざそのような状況になったら、どうしたらいいのか不安ですよね。

どのような対処をするといいでしょうか。

1-1.インプラントを飲み込んでしまった時の対処

人工歯を飲み込んでしまったと言っても、不意に飲み込んでしまうこともあれば、いつの間にか取れていて飲み込んだかどうか分からないという場合があるでしょう。

そんな時は、まずは落ち着いて、残ったインプラントの状態と自分の状態を確認してから、対処を行いましょう。

 

1-1-1.飲み込んだ部分を確認

まず外れた個所を確認し、外れたのは人工歯だけなのか、その他のアバットメントやインプラント体は残っているかどうか確認しましょう。

もし他の部品も外れていたら、それらの部品も飲み込んでしまっていないか、飲み込んだ可能性があるかどうかを確認します。

 

人工歯は大きさも比較的大きいですし、前歯部分や人工歯以外の部品であれば尖った部分もあるため、飲み込んだ際は喉や食道、胃などに違和感がある場合があります。

痛みや胃のむかつきなどがないか、自分の状態を確認してから、内科や消化器内科を受診しレントゲン等で状態を確認してください。

 

1-1-2.吐き出せないか試みる

呼吸困難等がなければ、自分で吐き出す対処を行なってもいいでしょう。

気が焦ってしまいがちですが、落ち着いて冷静になり、吐き出す対処を試みます。

 

<吐き出し方>

まず、胸と腹部を少し圧迫するために腰を折った状態になります。

このとき、椅子に座っていても、立っていても大丈夫です。

その後、口を開けて深呼吸し、腹式呼吸を行います。

 

口を閉じて、手で腹部を押すなど、腹部を圧迫します。

そして口を開けて、吐き出してみましょう。

吐き気があるのであれば、その吐き気を利用して吐き出すのがいいでしょう。

 

吐き出せない場合は、そのまま受診しましょう。

吐き出せたとしても、喉や気道などに違和感がある場合は受診してください。

1-2.こんな時はすぐに受診を

息苦しく、咳き込んでしまって止まらない、息がしづらい、喉に引っ掛かりを感じた時には救急車を呼ぶなどし、すぐに救急外来を受診してください。

人工歯が気管に入ってしまった可能性があります。

 

このように誤って何かが気管に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」と言います。

誤嚥の場合、ただちに内科を受診し、処置する必要があります。

そのまま放置をすると、人工歯に付着していた口内細菌などによって、「誤嚥性肺炎」を引き起こす可能性があるからです。

受診時には飲み込んでしまったものが人工歯であることを伝えます。

 

歯科医院でも対処はできますが、胃の中まで入り込んでしまった場合や、息苦しい場合の処置などは内科や消化器内科の方が安心です。

1-3.飲み込んだ人工歯はどうなる?

飲み込んだ人工歯は基本的には2~3日、長くかかっても1週間前後で便と共に排出されます。

その間に胃の痛み、腹痛などがあれば内科に相談しましょう。

 

飲み込んでしまい、人工歯がない状態だと、生活にも不便ですね。

内科での受診が落ち着いてからでもよいので、歯科医院も受診しましょう。

人工歯を改めて作成するなど、対処を取ってもらってください。

2.受診後どのような処置をされる?

インプラント(人工歯)を飲み込んでしまい、医療機関を受診したら、どのような処置がされるのでしょうか。

 

まず、医療機関ではレントゲン撮影を行い、どの場所に人工波があるのかを確認することが多いです。

胃に入っている場合は胃腸科での処置が必要になります。

人工歯の大きさがそこまで大きくなければ、自然に排泄されるのを待つ場合もあります。

人工歯が大きい場合は、手術をすることもあるでしょう。

 

人工歯が気道に入ってしまった場合は、まずは気道の確保を行い、レントゲン等で人工歯の位置を確認します。

内視鏡等で確認することもあります。

胃に入った時と違い、気道に入った場合は自然に出てはこないので、手術などの医療処置が必要となります。

3.インプラント(人工歯)はなぜ外れる?

そんな状況はどんなことが原因で起こる可能性があるのでしょうか。

人工歯が外れる原因について知っておきましょう。

3-1.インプラント(人工歯)が外れる原因

インプラントが外れる原因には次のようなものがあります。

 

・装着ミス

人工歯が適切に取り付けられていないなど、ミスがある場合は外れやすくなっているかもしれません。

装着した状態に違和感がある、グラグラとしているなど、気になることがあれば歯科医師に正しく装着できているか確認してもらってください。

 

・人工歯の劣化

インプラント治療に使われる人工歯は、寿命が長いものとは言われていますが、材質や耐久性には限界もあるので、時間経過に伴い劣化することもあります。

そのため、部分的に欠けた、割れたなどが原因で、人工歯根と人工歯を繋いでいたアバットメントから外れることがあります。

 

・歯ぎしりなどの癖

人工歯は丈夫に作られてはいるものの、長期間過剰な負荷をかけ続けると、人工歯の安定性が失われることがあります。

歯ぎしりや噛み締めの癖がある方は、定期メンテナンスの際に医師に相談しておくといいでしょう。

 

・アバットメントのネジの緩み

人工歯根と人工歯は、アバットメントと言われる部品で繋がれています。

アバットメントはネジ状の形をしており、時間が経つとそのネジが緩んでしまうことがあります。

定期メンテナンス時に締めなおすことが多いですが、メンテナンスを受けるのを忘れていたり、メンテナンスまでの期間が長くなってしまったりした場合は要注意です。

 

・口腔内環境の変化

インプラント治療後、口腔内の環境が変わると、人工歯が不安定になることがあります。

例えば歯周病に似たインプラント周囲炎にかかり、歯茎に炎症が起こってインプラント体自体がぐらついたり、人工歯周囲の組織が弱くなることで人工歯が安定しなくなったりという場合です。

その結果、不安定になった人工歯が外れてしまうことがあります。

定期的に歯科医院を受診し、インプラントのメンテナンスとともに、口腔ケアを受けることが予防となります。

 

・外部からの衝撃

事故などで口周りに衝撃を受けた場合、人工歯が破損することがあります。

その場合も、破損部分から人工歯が外れてしまうこともあるでしょう。

3-2.インプラント(人工歯)が外れるのを予防するには

人工歯が外れてしまうと、気を付けていてもタイミングによっては飲み込んでしまうことはあるでしょう。

ご飯を食べている時、寝ている時などに外れると、自分の意志とは反して飲み込んでしまうかもしれません。

 

飲み込みを防ぐには、まず人工歯が外れるのを予防することが大切です。

人工歯が外れる原因についてみてきましたが、人工歯は簡単には外れることはありません。

様々な要因が重なって外れてしまうのです。

 

その外れる要因が起こらないようにするために1番大切なのは、歯科医院で定期的なメンテナンスを受けることです。

メンテナンスでネジ等の緩み具合を見てもらったり、人工歯の状態を確認してもらったりすると、事前に外れる原因をいくつか予防できるでしょう。

また、人工歯に違和感があったり、ぐらつきを感じたりしたときにはすぐに歯科医院を受診してください。

メンテナンスでの受診日まで待っていると、その間に外れてしまうことがあるかもしれません。

何よりインプラントで快適に食べ物食べたり、話したり生活自体に支障が出てくることでしょう。

早めに診てもらうと安心です。

4.インプラント(人工歯)を飲み込んでしまったら受診を!早めの対処で安心

インプラント(人工歯)を飲み込んでしまったら、まずは慌てず状況を整理しましょう。

息苦しかったり、痛みがあったりする場合や、飲み込んだものを吐き出せそうになければ、すぐに医療機関を受診します。

受診する科は内科や消化器内科などがいいでしょう。

 

いつの間にか飲み込んでしまい、特に体に異常はないケースでは、数日から1週間程度で便と一緒に人工歯が出てきます。

その場合はインプラント治療を受けた歯科医院で、飲み込んでしまったことを伝え、その後の対処をしてもらいましょう。

どちらにせよ、人工歯が取れた状態であれば早めの対処が必要です。

飲み込んだ後に症状がなくても、放置することなく、受診すると安心できますよ。

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