インプラントに「チタン」が使われるのはなぜ?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラント治療に使われる部品は、「チタン」という金属の材料が使われることが多いです。

チタンは強度がとても高く、かつ軽量で対腐食性に優れた特性を持っています。

自動車産業や航空宇宙産業などにも用いられることの多いチタンですが、金属アレルギーを持つ方にとっては、治療に金属を使うことに対して、不安になる方もいるでしょう。

なぜインプラント治療には、金属の1種である「チタン」が使われることが多いのでしょうか。

今回は、インプラント治療におけるチタンの安全性とともに、チタンが多く使われる理由について紹介していきます。

目次

1.「チタン」とは

チタンという金属は、丈夫で軽く、腐食しづらい金属です。

また、さらに次のような特性を持っています。

1-1.生体親和性の高い金属

チタンは、生体親和性の高い金属です。

生体親和性とは、体内で安定した状態を維持し、生体組織との相互作用において、有害な影響が少ないことを指します。

また、生体内で分解もされず、炎症や免疫反応を起こしません。

つまり、チタンは私たちの体と相性がよく、体内に埋め込むものの材料としても安心して使える金属です。

 

金属アレルギーの方は、金属が体に触れたり、体内に入り込んだりすることでアレルギー症状が出ます。

歯科の治療の中でも、金属部品を使った治療をすると金属アレルギーの症状が出るという方もいます。

例えば、銀を使った銀歯治療などです。

しかし、チタンの場合は生体親和性が高いため、金属アレルギーを引き起こすリスクはほぼゼロに近いと言われています。

1-2.昔から人工関節に使われている素材

チタンの生体親和性を利用し、昔から人工関節や心臓のペースメーカーの部品などに使われてきた材料です。

昔から医療現場で活用されており、関節や心臓近くに埋め込んだ際にも問題がなかったことからも、人体にとって安全な材料だと言えます。

2.インプラントに「チタン」が使われる理由

チタンは生体親和性が高く、昔から人体へ入れる部品の材料として使われてきたことが分かりました。

安全性の高いと言われるチタンですが、インプラントに使われる理由としては、どのような理由があるでしょうか。

2-1.金属アレルギーの症状が出るリスクがほとんどない

インプラントに使われる理由として、第一に挙げられるのが、金属アレルギーの心配がほとんどないことです。

体に異物として認識されにくい材料であるためです。

 

銀歯治療で金属のアレルギー症状が出た方も、チタン製のインプラントを使えば症状が出るリスクは限りなくゼロに近いと言えます。

2-2.骨と強く結合する

また、チタンは骨と強く結合するという特性を持っています。

インプラント治療では、インプラント体と呼ばれる人工歯根を顎骨に埋め込みます。

その後、インプラント体と顎骨の結合を待ちます。

 

このインプラント体にチタンが使われることが多いのですが、チタンが顎骨に埋め込まれると、周りに新しい骨組織が取り憑いてくるのです。

その後、チタンの表面の細かい部分までに骨組織が入り込み、しっかりと結合されます。

このインプラント体と顎骨の結合がしっかりしてこそ、人工歯を自分の歯のように使うことができます。

 

顎骨と結合しやすいという点においても、チタンはインプラント治療にぴったりの材料と言えるでしょう。

2-3.軽くて丈夫で、かつ錆びにくい

強度があり、軽く、そして錆びにくいという金属であることも、インプラント治療にチタンが使われる理由の1つです。

一般的なその他の金属は空気に触れると金属イオンが溶け出すことがありますが、チタンの場合は酸化皮膜を形成し、金属イオンが溶け出すことがありません。

金属イオンが溶け出すことが金属アレルギーを引き起こす要因になることが多いですが、チタンであればその心配は不要です。

3.チタン以外のインプラント材料

インプラントの材料にはチタンが多く使われていますが、実は他の材料が使われていることもあります。

その理由の一つが金属アレルギーです。

チタンは金属アレルギーを引き起こしにくい金属ではありますが、ごく稀にアレルギー症状を引き起こしてしまう場合があります。

 

その際には以下のような材料が使われることがあります。

3-1.ジルコニア

ジルコニアもチタンと同じく生体親和性が高い材料です。

人工ダイヤモンドとも呼ばれるほど、非常に硬く、丈夫。

強度に優れているので、奥歯のインプラントの材料として適しています。

ただし、現在日本ではジルコニア製のインプラント体は承認されていません。

 

主に人工歯や、人工歯とインプラント体をつなぐ部品“アバットメント”に用いられる材料です。

3-2.オールセラミック・ハイブリッドセラミック

オールセラミック・ハイブリッドセラミックは、非金属の材料です。

オールセラミックには金属だけでなく、プラスティックも使っていません。

ハイブリッドセラミックはプラスティックが混じり合っている材料で、安価なのが特徴です。

 

ただし、これらのセラミックは、インプラント体には向いておらず、主に人工歯に用いられます。

4.インプラント治療で金属アレルギーを発症しないために

インプラント治療で金属アレルギーが発症するのを、できる限り避けるためにはどのようにするといいでしょうか。

4-1.純度の高いチタンで治療を受ける

チタンは金属アレルギーのでにくい材料ではありますが、絶対にアレルギー症状を引き起こさないかというと、その可能性は完全にゼロではありません。

その理由としては、100%純チタンを使ってインプラントの部品を作ることは難しいからです。

チタンの純度はインプラントを製造している、インプラントメーカーによって異なります。

安価なインプラントの部品には、特に純度が低く、他の材料が混合されていることが多いです。

そのため、できる限り純度の高いチタンを使ったインプラント材料での治療を行なってくれる歯科医院を選びましょう。

 

特に金属アレルギーが心配な場合は、治療前にどのようなチタンを使っているか、質問してみるのもいいかもしれません。

4-2.事前にパットテストを受ける

インプラント治療前に予めパッチテストを行い、金属アレルギーの反応が出るかどうか、確かめてみるのもいいでしょう。

自分に金属アレルギーがあるのかどうか確かめてから治療を受ければ、少し安心できるかもしれません。

4-3.もし金属アレルギー症状が出たら

インプラント治療後、次のような金属アレルギーの症状が出たら、医師に相談をします。

 

・全身の赤い腫れ

・全身の痛み

・全身のかゆみ

・口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)・・・口腔内の粘膜や舌の表面に白い斑点などが現れる

・掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)・・・手のひらや足の裏などに水疱や膿疱ができる

 

これらの症状が現れた場合には、顎骨に埋め込んだインプラント体を取り除かなければいけません。

また、それぞれの症状に合った対処が必要となります。

 

症状を放置しておくと、悪化する可能性があるので、インプラント体を埋め込んだあと、少しでも体に異変を感じたら、すぐに医師に相談してください。

5.インプラント治療にはチタンが使われることが多い!純度の高いチタンを使ったインプラント治療を受けよう

インプラント治療の多くに用いられる金属材料のチタン。

チタンは昔から人工関節やペースメーカーに用いられていた材料なので、体内に使うことには安心の材料です。

生体親和性も高く、アレルギー症状が出るリスクも極めて低く、かつ丈夫で錆びにくいことから、口内に使うインプラントの素材にはぴったりの材料と言えるでしょう。

しかし、絶対にアレルギー症状が出ないというわけではありません。

チタンには純度というものがあり、チタンの純度が低く、他の材料が混じっていれば、それが原因でアレルギー症状などが出る可能性があります。

できる限り純度の高いチタンを使ったインプラントで、治療を受けられるよう、材料について歯科医院で相談してみましょう。

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