インプラントをする時の「プロビジョナルレストレーション」とは?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

インプラント治療において、仮歯は非常に大切な役割を担っています。仮歯は見た目や噛む機能を補うためのものだと思われがちですが、実は「プロビジョナルレストレーション」と呼ばれる最終的な人工歯を調整する目的で使われる仮歯もあります。

 

この記事では、インプラントにおける仮歯の役割とプロビジョナルレストレーションの概要、メリット・デメリットを解説します。

目次

1.インプラント治療における仮歯の役割とは

プロビジョナルレストレーションはインプラ ント治療 で使用する仮歯の一種です。プロビジョナルレストレーションについて説明する前に、インプラント治療における仮歯について解説します。

 

1‐1.仮歯とは

インプラント治療では、あご骨に「インプラント体」と呼ばれる歯根の代わりとなるパーツを埋め込みます。あごの骨とインプラント体がしっかり結合しないと、最終的な人工歯を装着できません。

 

しかし、あご骨とインプラント体が結合するまで3〜6ヶ月ほどかかり、歯がないままにしておくとさまざまな不具合が生じます。

 

そこで、最終的な人工歯を装着するまでの間、仮歯を装着します。仮歯は調整しやすいよう、一般的に「レジン」と呼ばれるプラスチックでつくります。

 

仮歯を入れるタイミングは、インプラントを埋め込んだ箇所が安定する手術から1週間後が目安です。

1‐2.仮歯の主な役割

インプラント治療時に装着する仮歯の主な役割を紹介します。

 

(1)歯並びのゆがみを防ぐ

インプラント手術後に歯がない状態が続くと、両隣の歯が動きスペースを埋めてしまう可能性があります。その結果、最終的な人工歯が装着できなくなるかもしれません。

 

そこまで大きな変化ではなくても、歯並びにゆがみが出て噛み合わせなどの問題が発生するリスクがあります。仮歯をつけてスペースを埋めることで、歯並びのゆがみを防げます。

 

(2)患部を細菌感染から守る

人間の口の中には、常に約1,000億~6,000億もの細菌がいるといわれています。インプラント体が細菌に感染すると、炎症が起き、あご骨との結合がスムーズに進みません。また、痛みや膿などの症状が出る可能性もあります。

 

仮歯を装着することでふたのように機能し、口の中にいる細菌が手術箇所に侵入するリスクを軽減できます。

 

(3)噛む機能を補う

歯が一本でも欠けていると、噛みにくくなり、ものを食べる際に支障がでてしまいます。仮歯を入れることで、安定して噛めるようになります。

 

(4)見た目を補う

歯が欠けていたり、インプラントの金属のパーツが見えたりすると、見た目が損なわれてしまいます。特に前歯のインプラントの場合、人目につきやすく、食事や会話の際に気になる人も多いでしょう。

 

仮歯を装着することで、違和感のない見た目になります。

 

(5)インプラントに慣れる

インプラント体は、主に「チタン」という金属でできています。チタンは人間の身体になじみやすい素材です。

 

しかし、やはり人体にとっては異物なので、あごの骨と完全に結合するまでは、デリケートな状態が続きます。いきなり陶器の一種である「セラミック」のような硬い素材でできた人工歯を入れると、強い振動が伝わり、骨の状態に悪影響を及ぼし、インプラント体が抜け落ちるリスクがあります。

 

仮歯はセラミックより柔らかいレジンでできているため、振動が弱く、インプラント体への影響をおさえられます。そのため、最終的な人工歯を入れるまでに、骨をインプラント体が入った状態に慣れさせることができます。

2.プロビジョナルレストレーションとは

プロビジョナルレストレーションは、インプラント治療において、最終的な人工歯をつくる前に使用する仮歯です。

 

プロビジョナルレストレーションは、「プロ(pro)=前もって」「ビジョナル(visional)=完成した姿を描く」という意味通り、最終的に装着する仮歯を想定してつくります

 

通常の仮歯は、「テンポラリーレストレーション」と呼ばれ、あくまで一時的に歯を補うためのものです。

 

しかし、プロビジョナルレストレーションには歯を補うだけではなく、最終的な人工歯をより精度の高いものに調整するため、噛み合わせや舌・頬の粘膜とのバランス、見た目などを確認するという役割があります。

 

そのため、一時的に使用するための仮歯と比べてつくりが精巧なのが特徴です。最終的な仮歯の形状・サイズを再現するために、CADCAMシステムを使用して細部までつくりこむ場合も少なくありません。

 

細かな調整を繰り返すケースも多く、テンポラリーレストレーションよりも試用期間が長期化する傾向にあります。

3.プロビジョナルレストレーションをつくるメリットとは

プロビジョナルレストレーションをつくる主なメリットを紹介します。

3-1.適切な噛み合わせに調整できる

プロビジョナルレストレーションを装着することで、人工歯の形状やサイズを細かく調整し、より患者の口に合った噛み合わせに調整できます。

 

噛み合わせは、噛む機能はもちろん全身の健康にも影響を与える重要なものです。また、噛み合わせが乱れていると、噛む力による負荷がかかりすぎて、インプラントの破損や歯周病とよく似た病気である「インプラント周囲炎」などのトラブルを起こすリスクがあります。

 

最終的な人工歯とほぼ同じようにつくったプロビジョナルレストレーションを使って微調整を繰り返すことで、しっかりフィットする人工歯を実現できます。

 

 

3-2.歯肉の形を調節できる

歯肉はインプラント側に押し寄せるため、そのままだと歯ぐきのラインと最終的な人工歯のバランスが崩れてしまいます。

 

プロビジョナルレストレーションによって、歯ぐきのラインを調節することで、バランスのよい見た目となります。さらに、歯ぐきのラインとインプラント周囲炎・歯周病は深く関係するため、インプラントの寿命を伸ばす効果も期待できます。

 

前歯のインプラントなど見た目の美しさを重視する場合や、インプラント前に歯周病にかかっていたといった場合は、プロビジョナルレストレーションを使うメリットは大きいといえるでしょう。

3-3.治療後に口の中を清潔に保ちやすい

プロビジョナルレストレーションを装着して調整し、口の中にフィットする人工歯をつくることで、汚れがつきにくくブラッシングなどのケアをしやすい形状に整えられます。

 

口の中を清潔に保つことで、歯周病菌をはじめとする細菌の増殖を防ぎ、インプラント周囲炎や天然歯周辺の歯周病、天然歯の虫歯といったトラブルを予防できます。

 

特にインプラント周囲炎は、インプラントを失う主な原因のひとつです。プロビジョナルレストレーションの使用は、口の中の衛生状態を整えることにより、インプラントの寿命を伸ばす効果的な方法といえるでしょう。

3-4.周りの歯と見た目のバランスを取りやすい

日ごろあまり意識しませんが、歯の形は人それぞれ個性があります。また、何十年にもわたり使い続けることで、すり減って特徴的な形になっている場合も少なくありません。

 

模型のような整った形の人工歯を入れると、天然歯との差が大きく、見た目の違和感が出てしまう可能性があります。プロビジョナルレストレーションを入れてバランスを調整することで、自然で美しい口元に整えられます。

3-5.最終的な人工歯と比べて調整しやすい

セラミックなどでできた最終的な人工歯は形を1回つくると、多少削って調節することはできますが、足りない部分につけたすなど大幅な変更は基本的にできません。

 

削った部分を戻したい場合は、人工歯をつくり直す必要があり、時間がかかってしまいます。

 

プロビジョナルレストレーションは加工しやすいレジンでできているため、削ったり足したりしながら、ベストな形・大きさを見極められます。

3-6.破損などのトラブルを防げる

プロビジョナルレストレーションが欠けたり割れたりする場合は、そのまま人工歯を装着してもすぐに破損してしまうかもしれません。

 

プロビジョナルレストレーションを装着した結果をもとに、人工歯の形状や素材など当初の予定から変更することで、より長持ちするものをつくれる可能性があります。

4.プロビジョナルレストレーションをつくるデメリットとは

プロ ビジョナルレストレーションを使うことで人工歯の見た目や機能性を高められますが、下記のようなデメリットもあります。

 

 

4-1.費用がかかる

プロビジョナルレストレーションは、他のインプラント関連の治療と同じく、保険適用になりません。そのため全額自己負担となり、病院によって価格は異なります。

 

ただし、歯科クリニックによっては質の高い人工歯をつくるために、インプラント治療の料金に含めているケースもあります。事前に、歯科クリニックから見積りを出してもらうと安心です。

4-2.治療期間が長引く

形状やサイズ、噛み合わせなどを細かく調整する分、プロビジョナルレストレーションを使用すると一般的な仮歯よりも、最終的な人工歯を入れるまで時間がかかる可能性があります。

 

しかし、より精度の高い人工歯をつくることで、インプラントを安心して長く使えるため、長い治療期間をかける価値は充分あります。

4-3.全ての歯科クリニックで対応しているわけではない

近年、プロビジョナルレストレーションを実施する歯科クリニックは増加傾向にありますが、対応していない場合も少なくありません。希望する場合は、事前に実施している歯科クリニックを調べて相談するとスムーズです。

5.プロビジョナルレストレーションでより安心・快適に使える人工歯をつくろう!

インプラント手術後、インプラント体とあごの骨が充分に結合するまでの3ヶ月~半年間は、欠損した歯の見た目や機能を一時的に補うために仮歯を入れなければいけません。

 

仮歯には、最終的な人工歯の噛み合わせや見た目などを高い精度で調整する役割も持つプロビジョナルレストレーションと呼ばれるものもあります。

 

プロビジョナルレストレーションには、適切な噛み合わせに調整できる・歯肉の形を調節できる・治療後に口の中を清潔に保ちやすいなどのメリットがあります。

 

ただし、費用がかかる・治療期間が長引くといったデメリットもあるので要注意です。興味がある方は、まずは歯科医師に相談してみましょう。

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