オールオン4で失敗するのはどんな時?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

一般的なインプラント治療では、1本のインプラント体で1つの人工歯を支えます。「オールオン4」は、最小4本のインプラント体で片あご全ての人工歯を支える治療法です。

 

入れるインプラント体が少ない分、身体へのダメージが少なく、費用の節約にもなります。しかし、失敗してしまう場合もあります。

 

この記事では、オールオン4の代表的な失敗事例と失敗の理由、対策について解説します。オールオン4を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

目次

1.オールオン4ってそもそもどんな治療?

失敗について解説する前に、オールオン4がどんな治療法かおさらいします。

 

オールオン4は、上下どちらかのあご全体の人工歯を最小4本のインプラント体で支える治療法です。天然歯をほとんど失った場合でも、少ない本数のインプラント体で噛む機能や見た目を回復でき、手術当日に仮歯を装着することも可能です。ただし、あごの骨の状態などによって、必要なインプラント体の本数が4本より多くなる場合もあります。

 

失った歯の本数分通常のインプラントを入れるよりも、手術による心身の負担が少なく、手術時間も短め、さらに治療費も節約できるといったメリットがあります。

 

また、埋め込むインプラント体の本数が少ないため、あごの骨が薄く通常のインプラント治療が難しい患者でも、骨をつくる処置などをせずに治療できる場合があります。

 

オールオン4は、全ての人工歯がつながっていて、総入れ歯のような見た目です。しかし、歯の粘膜で支える総入れ歯とは異なり、インプラント体で完全に固定するため、噛む力が強く、ズレる心配もありません。

 

取り外さずに使うので、自分の歯と同じように歯磨きをして手入れします。

2.オールオン4のよくある失敗を紹介

オールオン4の代表的な失敗事例を6つ紹介します。

2-1.神経や血管が傷ついた

計画通りの位置・深さ・角度でインプラント体を埋め込まないと、神経や血管を傷つけてしまう場合があります。その結果、傷つけた場所の感覚が鈍くなる・麻痺する・しびれや痛みが出るといった症状があらわれる場合があります。

2-2.インプラント体とあごの骨が結合しない

インプラント体とあごの骨が結合しないとインプラント体が安定せずぐらつき、最悪の場合はインプラント体が抜け落ちてしまいます。

 

インプラント体とあごの骨の結合が上手くいかない主な原因は、下記の通りです。

 

・歯科医師の技術

インプラント体を埋め込む位置が不適切である、埋め込んだ位置・深さ・角度が予定と異なるといった場合は、結合が上手く進みません。

 

また、ドリルであごの骨に穴を開ける際は、摩擦熱によって骨にダメージを与えないよう水を注入するといった方法で冷やしながら処置します。冷却が不充分だと骨が火傷のような状態になり、インプラントとの結合が進まない場合があります。

 

・骨の量が足りない

骨粗しょう症や歯周病などが原因で、あご骨の量が足りないまたは密度が低い場合は、インプラントと骨の結合に支障が出ます。骨をつくるサイクルが乱れている場合も、結合しにくいでしょう。

 

・全身の状態

糖尿患者や喫煙者は、インプラント体とあごの骨の結合が上手く進まない可能性があります。血流が滞っている場合が多く、傷の治りや骨の再生などが遅い傾向にあります。

 

・口の中の衛生状態が悪い

インプラント手術後に歯磨きが不充分な状態が続くと、口の中に汚れがたまり、細菌が増殖して感染リスクが高まります。

 

インプラントを入れた場所が感染を起こすと炎症により、インプラント体とあごの骨の結合に影響を及ぼす場合があります。

2-3.見た目に違和感がある

オールオン4は全ての歯を人工歯で補うため、1本ずつインプラントをするのとは違い、周りの天然歯と色が合わないリスクは基本的にありません。

 

しかし、あまり白い色にしすぎると笑った時に歯の白さが浮いて、違和感が出てしまいます。自然な白さになるよう調整しましょう。

2-4.インプラント周囲炎になった

「インプラント周囲炎」とは、インプラントの周りの組織が歯周病菌に感染することで発症する病気です。

 

歯周病とよく似た病気で、初期は軽い炎症が起きる程度で自覚症状はほぼありませんが、重症化すると、歯肉やあごの骨が破壊されます。その結果、インプラント体を支えるために必要な骨量を維持できなくなり、ぐらつきや脱落の原因となります。

 

インプラント周囲炎は、インプラントが使えなくなる主な原因の1つなので注意しましょう。

2-5.インプラントが壊れた

噛み合わせやかみ癖などでインプラントに過剰な力がかかると、インプラント体や人工歯に大きなダメージが加わり破損の原因となります。

 

オールオン4は、4本のインプラント体で総入れ歯のような上部構造を支える治療法です。特定の部分だけに強い負荷が加わると、破損するリスクが高まります。

2-6.鼻の下がくぼんだ

総入れ歯や大きい部分入れ歯を使っていた人が、オールオン4を入れると鼻の下がくぼんだと感じる場合があります。

 

原因は、入れ歯とオールオン4の構造の違いです。入れ歯は歯ぐきをすっぽり覆う構造ですが、オールオン4は取り外せないので手入れのしやすさを考え、歯ぐきの部分の面積が狭い構造になっています。

 

入れ歯であれば鼻の下にあたる部分にまで入れ歯があるので膨らんで見えますが、オールオン4にはありません。オールオン4の場合も、骨を削るなどの調整によって、鼻の下のくぼみを解消できます。

 

しかし、骨を多く削ることになるため、使用できるインプラントが限られるなどの弊害もあります。事前に歯科医師とよく相談し、治療方針を決めましょう。

3.オールオン4の失敗を防ぐ方法とは

オールオン4の失敗を防ぐ主な方法を紹介します。しっかり対策して、安全・快適にインプラントを使い続けましょう。

3-1.オールオン4の経験が豊富な歯科医師を選ぶ

手術中のミスや結合が上手くいくかどうかの見極めなど、歯科医師の技術・知識が原因で失敗するケースもあります。

 

経験豊富な歯科医師であれば、技術力があり事前にリスクを察知できるため、失敗しにくいといえるでしょう。また、人工歯の色など見た目に関する相談にも丁寧に乗ってもらえます。

 

オールオン4は、一般的なインプラントと比べて歴史が浅い治療法で、難易度が高めだといわれています。鼻の下のくぼみといったオールオン4ならではの注意点もあります。できるだけ、オールオン4の治療を多く経験している歯科医師を選ぶと安心です。

3-2.機器や設備が整った歯科クリニックを選ぶ

オールオン4はたった4本のインプラント体で、片方のあごの全ての歯を支えなければいけません。そのため、埋め込む位置・角度・深さの少しの違いで全体のバランスが大きく変わってしまいます。

 

通常のインプラント治療以上に、正確な治療のための機器や設備が充実している歯科クリニックを選ぶことが大切です。

 

・歯科用3DCT

あごの骨の厚みや血管・神経の位置などを立体的に把握することで、インプラントを埋め込む位置を高精度で見極められます。

 

・サージカルガイド

「サージカルガイド」とは、インプラント体を計画通りの場所に埋め込むために使用する、プラスチック製の装置のことです。ドリルを固定する穴が開いており、予定した場所からずれるリスクをおさえられます。インプラント手術時の歯ぐきの切開が最小限で済むので、感染リスクを軽減できるのも大きなメリットです。

 

・インプラント専用の手術室

インプラントは外科手術を伴うため、清潔な空気を保つ設備がある専用の手術室での処置が望ましいといわれています。治療箇所が細菌感染を起こすと、インプラント体とあごの骨の結合に支障が出ます。専用の手術室を使うことで、感染リスクを軽減できます。

3-3.定期メンテナンスを欠かさない

インプラントを長持ちさせるには、定期メンテナンスが不可欠です。定期メンテナンスでは、健診や歯のクリーニングを行います。

 

健診では、インプラント周囲炎や噛み合わせの乱れ、インプラントの破損といったトラブルがないか確認します。もしトラブルがあったとしても、早めに発見することで簡単な処置で済む場合も少なくありません。

 

歯のクリーニングでは、歯科衛生士などの専門家が、専用の器具を使って歯垢や歯石を取り除きます。特に歯石は非常に硬く、通常の歯磨きで取り除くのは難しいため、歯科クリニックでのクリーニングが効果的です。歯垢と歯石を除去することで細菌の増殖をおさえられ、インプラント周囲炎や天然歯の虫歯を予防できます。

 

また、万が一再治療が必要になった場合に「保証制度」を利用するには、定期メンテナンスをしているかどうかが重要です。保証制度とは、患者の負担を軽減するために、治療から一定期間は条件を満たせば無料またはリーズナブルな価格で、再治療を受けられる制度です。定期メンテナンスに通うことを条件としているケースが多いので、歯科医師の指示に従って通いましょう。

3-4.毎日しっかり手入れする

定期メンテナンスで歯のクリーニングを受けるだけでは、細菌の増殖を防げません。毎日の手入れをしっかりすることが、インプラント周囲炎を防ぐうえで非常に重要です。

 

力を入れすぎず小刻みに歯ブラシを動かし、磨き残しのないようブラッシングしましょう。また、歯間ブラシやデンタルフロスを使って、歯と歯の間の汚れを落とすのもおすすめです。

 

歯磨きの仕方などメンテナンスの注意点はたくさんあるので、オールオン4の治療を受けた歯科クリニックで、手入れ方法のアドバイスを受けると効果的な手入れができます。

3-5タバコをやめる

タバコには、血液の流れを妨げる「ニコチン」という成分が含まれています。血流が滞ると、細胞に酸素や栄養が充分に届かず、インプラント体やあごの骨の結合が上手く進まない場合があります。また手術後の傷の治りが遅くなり、細菌感染のリスク増にもつながります。

 

オールオン4にすると決めた時点で禁煙するのがベストです。難しい場合は、タバコの本数を減らすなどの方法もあるので、歯科医師に相談しましょう。

4.しっかり対策してオールオン4を成功させよう!

オールオン4は、最低4本のインプラント体で、上または下のあご全ての人工歯を支える治療法です。

 

しかし、残念ながらオールオン4による治療に失敗してしまうケースも少なくありません。失敗事例として、神経や血管が傷ついた・インプラント体とあごの骨が結合しない・見た目に違和感があるなどがあげられます。

 

歯科クリニック選びや治療後のメンテナンスといった対策によって、失敗を防げるので、しっかり対策しましょう。

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