- この記事の監修者
-
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/
近年注目が高まっているインプラント治療。
「興味はあるけれど、自分の年齢では受けられるのだろうか。」という疑問をお持ちの方はいないでしょうか。
インプラント治療には、実は年齢制限はあります。
ただ、年齢だけが条件ではなく、年齢制限を超えている方も治療が可能な場合もあります。
一体、その年齢制限とは何歳から何歳までであるのか、また治療を受けることのできる条件というものはどのようなものなのでしょうか。
目次
- 1.インプラント治療の年齢制限
- 1-1.インプラント治療ができるのはいつから?
- 1-2.インプラント治療ができるのはいつまで?
- 2.年齢が高くなるとインプラント治療にどんなリスクがある?
- 2-1. 体力がなく外科手術が難しい場合がある
- 2-2.細菌感染を起こしやすい
- 2-3.インプラント体と顎骨の結合がされにくい
- 2-4.口腔内の状態が良くない場合がある
- 2-5.インプラント治療が受けられない病気になることも
- 3.年齢だけではない!インプラント治療が制限される状態とは
- 3-1.顎骨が不足している
- 3-2.持病がある
- 3-3.他の薬を服用している
- 3-4.口内の状態が悪い
- 3-5.妊娠している
- 3-6.喫煙習慣がある
- 4.インプラント治療を考えたら早めの相談を!
1.インプラント治療の年齢制限
インプラント治療は、失った歯の代わりに顎骨に人工歯根であるインプラント体を埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療です。
まず、インプラント体を埋め込む外科治療が必要です。
その外科治療が受けられるかどうかが、治療ができる・できないの判断基準となります。
1-1.インプラント治療ができるのはいつから?
一般的にインプラント治療が可能になるのは、20歳以上と言われています。
20歳というのは、数年前まで成人年齢でした。
この20歳くらいになると、多くの人は「成長期」と呼ばれる時期が終わっています。
成長期には顎が成長したり、親知らずが生えてきたりなど、口内に変化があります。
そのため、治療を行ったとしても、治療後に思ったような歯並びや見た目にならなかったなど、様々な影響が出ることがあるのです。
このことから、成長が完了した20歳以上を目安に、治療を始めるのが理想的と言えます。
それまでは仮歯や部分入れ歯等で対処することが多いです。
1-2.インプラント治療ができるのはいつまで?
20歳以上で始められるインプラント治療ですが、では反対に年齢の上限はあるのでしょうか。
インプラント治療の上限の年齢制限としては、一般的に70歳くらいと言われることがあります。
上限の年齢として決まっているわけではないのですが、先述したようにインプラント治療は外科手術を伴う治療です。
この外科手術が受けられるかどうかが、治療が可能になるかどうかの基準となります。
70歳以上の場合、外科手術に顎や身体が耐えられないリスクが上がってしまったり、手術自体が難しい状態になったりすることがあります。
とはいえ、年齢はあくまで年齢ですので、患者さん個人の体調、顎の状態、持病の有無などにも左右されます。
年齢制限とは言っても、年齢だけが治療ができない条件ではありません。
70歳以上でも健康状態や顎骨に問題がなければ治療を受けることはできますし、反対に70歳以下でも治療が受けられないケースはいくつもあります。
2.年齢が高くなるとインプラント治療にどんなリスクがある?
インプラント治療が受けられる年齢は、目安として20~70歳だと分かりました。
しかし、70歳以上など高齢になっても、インプラント治療を受けたいと考える方もいるでしょう。
インプラント治療を受ける際に高齢であった場合、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。
2-1. 体力がなく外科手術が難しい場合がある
インプラント治療の外科手術は、一般的にインプラント1本につき30分程度と言われています。
本数が多くなると手術時間も長くなります。
患者さんは手術を受けているだけとはいえ、身体には負担がかかります。
それに耐えられる体力が必要ですが、一般的に高齢になると、その体力も衰えてくるため、リスクとなることがあるのです。
2-2.細菌感染を起こしやすい
高齢になると、免疫力が低下しやすく、そのせいで細菌感染を起こしやすいというリスクもあります。
インプラント治療だけでなく、外科手術を行う際には細菌感染には細心の注意を払わなければなりません。
歯茎を切開し、顎骨を削る手術を行うインプラント治療は、治療する際に細菌感染が起こってしまうと、手術の失敗に繋がります。
2-3.インプラント体と顎骨の結合がされにくい
インプラント体を埋め込む手術を行った後は、顎骨と結合するのを待ちます。
しっかりと結合しないと、埋め込んだインプラント体が抜け落ちてしまうことがあります。
しかし、高齢になると、この結合に時間がかかったり、うまく結合できなかったりすることがあるのです。
うまく結合しなかった場合には、顎骨の状態を診ながら再手術を行うか、インプラント治療以外の治療を行うかの、どちらかを選択しなければなりません。
2-4.口腔内の状態が良くない場合がある
高齢になると、口腔内の状態が良くない、または良い状態に保ちにくいという方もいます。
例えば歯周病にかかっていれば、それをしっかりと治療し、良い状態を保たないとインプラント治療が難しいです。
インプラント治療中や治療後に歯周病になると、うまくインプラント体が顎骨に結合しない原因になったり、インプラント周囲炎になったりすることがあります。
2-5.インプラント治療が受けられない病気になることも
持病によってはインプラント治療が受けられないことがありますが、高齢になるとそのような病気にかかりやすくなります。
インプラント治療を医師から断られる可能性のある持病は、次のようなものです。
・骨粗鬆症
骨の強度が低下し、骨折しやすくなる骨の病気である骨粗鬆症。
閉経後の女性に多い病気ですが、この病気の治療薬として使われる「ビスフォスフォネート系薬剤」が、骨の代謝を止めることがあります。
インプラントの外科手術した顎骨が治りにくくなってしまうため、骨粗鬆症の治療中はインプラント治療を断られてしまうかもしれません。
・高血圧
血圧が高い場合、まず外科手術に身体が耐えられるかどうかの不安があります。
手術後には、めまいや動悸、頭痛、嘔吐などの症状が出ることもあります。
また、手術後に抗菌薬や鎮痛薬を処方されることがありますが、その薬が高血圧症の薬の効果を下げてしまい、腎臓などに影響が出てしまうことも考えられます。
内科の主治医と相談しながら、治療を考えることが必要です。
・心臓病
心臓病でカテーテルなどを留置されているなどの治療中の場合には、外科手術においてリスクが大きいため、断られることが多いです。
また、血液をサラサラにする薬を服用している場合は、外科手術中に血が止まりにくくなってしまうため、手術が受けられないことが多いです。
こちらも心臓病の主治医と相談の上、治療ができるかどうかを検討していく必要があります。
・糖尿病
糖尿病患者の場合、身体の抵抗力が弱くなるため、細菌感染が起こりやすくなります。
そのため、手術前から抗生物質の服用が必要になることがあります。
また、手術後に傷の治りが遅くなったり、血が止まりにくくなったりする可能性もあります。
3.年齢だけではない!インプラント治療が制限される状態とは
年齢によってインプラント治療が受けられないこともあると分かりました。
しかし、若いからと言って、みんながインプラント治療を受けられるということではありません。
以下のようなインプラント治療が制限される状態もあります。
3-1.顎骨が不足している
顎骨が不足している場合は、インプラント体を埋め込むことができません。
顎骨を増やす治療を先に行うか、もしくは他の治療を検討する必要があります。
3-2.持病がある
年齢が若くても、先述したような持病のある方は多くいます。
持病があると、治療が制限されることがあるため、持病の主治医と、歯科医とが情報共有し、インプラント治療ができるかどうか検討していく必要があります。
3-3.他の薬を服用している
持病はもちろん、それ以外の病気でも、普段服用している薬がある場合、その薬が治療に問題がないか確認する必要があります。
日常的に服用している薬がある場合は、歯科医にまず相談してください。
3-4.口内の状態が悪い
歯周病や虫歯などがある場合、それを治療してからでないと、インプラント治療は受けられません。
インプラント治療後も口内を清潔に保つため、ケアをしっかり行うことが大切です。
3-5.妊娠している
妊娠している方もインプラント治療が受けられません。
治療の体勢がお腹に負担がかかることがありますし、麻酔や術後に服用する薬が制限されることもあります。
出産後に様子を見ながら、治療開始時期を再検討しましょう。
3-6.喫煙習慣がある
タバコに含まれるニコチンが、顎骨とインプラント体の結合を妨げてしまう可能性があるため、インプラント治療が受けられないことがあります。
インプラント治療を受けるなら、これを機に計画的に禁煙をしていくことが必要です。
口内環境にも悪影響がありますし、身体のことも考え、手術前後だけ禁煙するだけでなく、これを機にタバコを卒業し、治療に挑むことをおすすめします。
4.インプラント治療を考えたら早めの相談を!
インプラント治療には年齢だけではありませんが、制限はいくつかあります。
高齢になればなるほど、その制限に引っ掛かりやすくなるため、インプラント治療を考えた際には少しでも早い、歯科医院への相談をおすすめします。
年齢だけで治療ができないというわけではありませんが、これからの未来において、今日が一番若い日です。
今後の生活をより豊かに、おいしく食べ物を味わうためにも、インプラント治療ができるかどうか、治療のタイミングの相談も含め、歯科医院に相談してみましょう。