インプラント治療の「DSD(デジタルスマイルデザイン)」とは?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
https://e-implant-tokyo.com/smile-implant/

デジタルスマイルデザインという言葉を聞いたことがあるでしょうか。

インプラント治療は、歯を失ったところに歯を補う治療ですが、「歯がそこにあればいい」、「機能を回復できればいい。」というだけでなく、口元の美しさや歯並びなども重視する方も増えてきました。

いわゆる、口元や顔全体の見た目も考慮した治療が、最近の歯科治療において重要視される時代になっています。

 

とはいえ、治療後の見た目がどのようになるのか、患者側としては想像しづらいですよね。

そんな時に役に立つのが、デジタルスマイルデザイン(DSD)です。

 

このDSDが一体どのようなものなのか、紹介していきます。

目次

1.デジタルスマイルデザインとは

デジタルスマイルデザインとは、治療前と治療後の顔や口元のシミュレーションができる、デジタル分析システムのことです。

その頭文字のイニシャルを取って、DSDと略されることもあります。

 

治療をすることで、どのような状態になるのか、視覚的に結果が見られるので、患者にとってもイメージがしやすいです。

主にお顔や口元のバランス、歯並びなどを客観的な基準に基づき、コンピューターで分析できます。

好みのスマイル、口元、顔全体の様子をシミュレーションした中から選べます。

 

インプラント治療だけでなく、矯正治療などにも使われるシステムです。

1-1.デジタルスマイルデザインでのシミュレーションの流れ

デジタルスマイルデザインのシステムでは、次のようにシミュレーションを行います。

 

ステップ①写真・動画の登録

患者の顔写真、歯の写真、顔・顎周りのレントゲン写真、表情を撮影した動画などの情報をシステム内に登録します。

 

ステップ②歯の詳細情報の入力

歯科医師が、患者の歯の詳細情報をシステムへ入力していきます。

 

ステップ③歯のバランスをシステム上で調整

ヒアリングした患者の希望を元に、治療後の歯並びや形、大きさ、角度、長さなど、審美的なバランスをシステム上で調整していきます。

これを元に、どの位置へ、どのように治療していくかの計画を立てていきます。

 

ステップ④色の調整

美しい歯は、色も大切です。

色のバランスを整え、治療により入る歯の映像を、患者の顔の映像に入れ込みます。

 

ステップ⑤治療後のシミュレーションの完成

治療後のシミュレーションが画像で完成します。

治療に入る前に、患者は医師と一緒に画像を見て、治療後の状態を確認することができます。

歯の色は候補職の中から、見比べて選ぶことも可能です。

顔と合わせたとき、どの色だと顔の表情が明るく見えるか、歯の色が浮いて見えないかなどを確認しておきたいところですね。

 

もし、歯の形、バランスなど気になるところがあれば、再度医師に相談し、調整を行ってもらいます。

医師はこの画像データなどの詳細データを基に治療を行っていきます。

1-2.デジタルスマイルデザインによるスマイルシミュレーション

デジタルスマイルデザインでは、治療後の顔、歯の状態を画像で確認できるだけでなく、次のようなデータを得ることもできます。

 

・どのような矯正器具で矯正ができるか

・矯正器具以外に必要な補綴物はどんなものか

・外科治療が必要か(必要であればどのような治療であるか)

 

これらのデータを基に、矯正、補綴、外科治療の全てを考慮したプランを立てることができます。

1-3. デジタルスマイルデザインのオプション

また、デジタルスマイルデザインによって導き出したデータを活用した、オプションを治療に役立てることもできます。

 

1-3-1.DSDモックアップ

例えば、「DSDモックアップ」と言って、治療後の歯並び・歯の形の模型を実際に作り、それを歯の表面に貼って、口元の状態を見てみるというものがあります。

シミュ―レーションの結果を画面で見るだけでなく、実際にその歯並びが自分の口に入った時の状態を確認できます。

口を小さく開けたとき、大きくあけて笑った時、横を向いた時など、細かく普段の動作での歯の状態を確認できるので、より詳細なシミュレーションができるでしょう。

 

1-3-2.歯冠長延長術のガイド

また、笑った時に歯茎が多く見えてしまうガミースマイルの治療で、歯冠長延長術を行う際には、どの程度歯冠を延ばす必要があるのかを検討するためのガイドを作製することも可能です。

実際にガイドを歯に合わせてみて、笑った感じがどのように見えるか確認できます。

 

1-3-3.ダイレクトボンディングのガイド

審美治療などで被せ物、補綴治療をする場合のガイドも作製できます。

デジタルスマイルデザインのシステムでシミュレーションしたまま、シリコンガイドを作製し、そこにコンポジットレジンを流し込むことで治療を行います。

 

1-3-4.インプラントのガイド

インプラント治療では、人工歯根となるインプラント体をどの位置に、どの角度で埋め込むかが非常に大切になってきます。

事前に決めた位置や角度に適切に埋め込むためには、ガイドを作製することがあります。

デジタルスマイルデザインのシステムでは、そのガイドの作製も可能です。

2.インプラント治療におけるデジタルスマイルデザイン

インプラントは、これまで審美的な治療というよりも、歯の機能回復という面が大きな治療のメリットとして捉えられてきました。

しかし、インプラント治療のメリットはそれだけではありません。

人工歯による、見た目の回復も可能ですので、治療後の状態を調和のとれた口元にすることもできます。

 

適切なインプラント治療を行うためにも、事前に患者が治療後の歯や顔の状態を知っておくことはとても大切です。

どうしてもインプラント治療には時間がかかります。

また、治療のために日常的に気を付けないといけないこともありますし、痛みや腫れが出ることもあります。

治療後のゴールが満足できるものであれば、その治療期間にモチベーションが保てるでしょう。

 

その他、先述したようにデジタルスマイルデザインのオプションで、インプラントのガイドを作製することで、正確な位置に適切にインプラント体を埋め込むことができます。

失敗のリスクを減らすことができ、安心して治療を受けられるでしょう。

3.インプラント治療はDSDで安心&適切な治療を

デジタルスマイルデザインは、治療後の口元、顔の状態を確認できるシステムです。

最終的なゴールを、患者と医師の間で共有してから治療を開始するため、患者にとっては安心して治療に入ることができるでしょう。

インプラント治療においては、適切な位置にインプラント体を埋め込むためのガイドを、デジタルスマイルデザインによるデータを基に作製することもできます。

ただ歯の機能を回復させるだけでなく、見た目も考慮した自分に合った治療を行うことができるデジタルスマイルデザインは、今後の歯科医療において、メジャーとなることでしょう。

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