インプラント手術は、歯ぐきをメスで切開し、あごの骨に穴を開け、歯根の代わりとなるインプラントを埋め込むという流れで行われます。

外科処置を伴うため「どのくらい安静にすればいいの？」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。特に仕事などで忙しい場合、気になる点だと思います。

この記事では、インプラント手術後に安静が必要な期間・手術直後に気をつけたい点・すぐに歯科クリニックに相談すべき症状について解説します。

結論から言いますと、少なくともインプラント手術当日は仕事を休んで安静にしましょう。インプラント手術の時間は約1～2時間です。多くの場合は入院の必要はないものの、ある程度大きな心身のダメージを受けている状態なので、すぐにいつも通りに過ごせるわけではありません。

麻酔が切れるまで数時間くらいは感覚が鈍くなる・ふらつくといった状態になる方も多いので、車の運転も控えるのをおすすめします。また、麻酔が切れるまでは食事も控えてください。

また、手術後は傷ができている状態なので、腫れ・痛み・出血が生じる場合があり、数日から1週間ほど続きます。無理をすると、手術後の傷の治りが遅くなったり、腫れ・痛み・出血が悪化したりするので無理は禁物です。

もし可能であれば、手術から2～3日ほど安静にして過ごすと、回復がスムーズです。特に体力を使う仕事の場合は、歯科医師に前もって相談し、仕事をしても問題ないか確認しておきましょう。

インプラント手術直後は、デリケートな状態のため、さまざまな注意点があります。主なものをまとめました。

インプラント手術を担当した歯科医師から、手術後の過ごし方について指示があるので、必ず守りましょう。

特に痛み止め・感染を防ぐための抗生物質など歯科医師から処方された薬は、指示に従って正しい量や飲み方で服用してください。

痛みなどの症状がないからといって自己判断で服用を止めてしまうと、感染や炎症の悪化などのトラブルにつながります。

激しい運動や入浴など血行が良くなる行動をすると、インプラント手術をした傷口の炎症が強くなり、腫れ・痛み・出血が悪化する可能性があります。

インプラント手術当日の入浴では、湯船につかるのは避け、短時間シャワーを浴びるだけにしましょう。サウナも身体を温めて血行を促進するため、控えてください。

手術当日から3日間程度は、ウォーキングなどの軽い運動も避けた方が良いと言われています。激しい運動に関しては、手術後1週間～10日ほどは控えましょう。炎症が悪化するだけではなく、運動による疲労が原因で免疫力が低下し、感染リスクが上がる可能性があります。

インプラント手術直後は、口の中が非常にデリケートな状態です。せんべいやピーナッツといった硬いものを食べると負荷がかかり、インプラント体と骨の結合や傷の治りに悪影響を与える可能性があります。

手術から2～3日後までは、おかゆ・うどん・ヨーグルトといった柔らかく、あまり噛まずに飲み込めるものを食べるのをおすすめします。その後も、状態が安定するまでは、反対側の歯で噛むなど、負担がかからないようにしましょう。

カレーなど香辛料が多く含まれている食べ物や炭酸飲料といった刺激の強いものも、手術後2～3日くらいは控えるようにします。傷口が刺激されることで、治りが遅くなる可能性があるためです。

インプラント手術から1週間ほどは、お酒を飲むのを控えましょう。アルコールには血行を促進する作用があり、腫れが強くなる・出血する・出血が激しくなるといったトラブルにつながる可能性があります。

またインプラント手術後は、痛み止め・抗生物質などの内服薬が処方されますが、アルコールと薬は一緒に取れない場合が少なくありません。「お酒を飲んだから薬は飲まないでおこう」といったように服用をしない原因になったり、一緒に飲むことで薬の作用が通常よりも強くなったりする可能性があります。

さらに酔っぱらうことで注意力が散漫になり、転倒などの事故を起こして、インプラントにダメージを与えてしまうリスクもあります。

インプラントを入れた場所を指や舌で触るなど、傷口を刺激するような行動は避けましょう。手術部分が気になったり違和感を覚えたりしてつい触れてしまいがちですが、傷口から細菌が感染する可能性があります。少なくとも1週間は、刺激を避けるようにすると安心です。

傷口を刺激しないよう歯磨きを控える患者もいますが、手術後だからこそ歯磨きの必要があります。口の中に傷がある状態で歯磨きをしない日が続くと、口の中で細菌が増殖し、感染リスクが高くなります。

ただし、手術当日は歯磨きをせず、歯科医師の指示に従って再開してください。

歯磨きをする際は、手術した場所に歯ブラシをあてないようにします。歯ブラシをあてると、ごく小さな傷ができ、そこから細菌が侵入する可能性があります。歯磨き粉も研磨剤が含まれているので、使わない方が安心です。

インプラントを入れた場所以外は、いつも以上に丁寧に磨くと効果的です。正しい歯磨きの仕方を歯科衛生士に確認するとより良いでしょう。1週間～10日ほど経ち、抜糸が終われば通常通りに歯磨きして問題ありません。

インプラント手術後は、口の中を清潔に保つためにうがい薬が処方されることもあります。医師の指示通り欠かさず、うがいをするようにしましょう。

ただし、強くうがいすると手術した場所に刺激を与えてしまいます。手術後3日くらいは、優しく水を吐き出すようなイメージで、静かにうがいするようにします。ひんぱんにうがいをするのも、負担になるので控えるのをおすすめします。歯磨きと同じく、手術当日のうがいは控えてください。

痛みや腫れがある時は、応急処置としてタオルで包んだ保冷剤や濡れタオルで外側から冷やすと良いでしょう。氷で直接冷やすなどの方法は、冷えすぎてしまい血流が悪くなるので、避けてください。血流が悪くなると、インプラント体と骨が結合しにくくなります。

インプラント手術後は、できるだけ禁煙するようにしましょう。タバコに含まれている「ニコチン」には、血管収縮作用があります。血管が収縮すると、血液の流れが滞り、インプラント手術による傷からの回復に必要な栄養や酸素が十分に届かなくなります。その結果、歯ぐきの傷の回復が遅れ、インプラント体と骨の結合が妨げられます。

また、喫煙はインプラント周囲炎や細菌感染のリスクを高める原因にもなります。タバコにはだ液の分泌をおさえる作用があるため、だ液による殺菌作用が低下します。その結果、口の中で歯周病菌をはじめとする細菌が増えやすくなります。

さらにタバコには免疫力を低下させる作用もあるため、感染リスクがより高まります。

このように、インプラント治療にとってタバコはさまざまな害があります。インプラント手術直後はもちろん、治療が完了してからも極力すわないことをおすすめします。

完全に禁煙するのが難しい場合は、手術直後は禁煙してその後は本数を減らすなどの対策を取りましょう。

インプラント手術後に、下記のような症状があらわれた場合は、すぐにインプラント手術の担当医に相談しましょう。

・痛み止めが効かず激しい痛みがある

・1週間以上経過しても痛み・腫れがおさまらず悪化している

・薬を飲んでから下痢・湿疹などの異変が出た

・下唇にしびれを感じる

・よだれが止まらない

・鼻から血・膿が出る

インプラント治療をした周辺に異常が起きているか処方された薬が合っていないかどちらかが考えられるため、早めに対処することが大切です。放置すると、インプラント体とあごの骨の結合に支障が出る・インプラント体が抜け落ちてしまうなどの重大なトラブルにつながります。

インプラント手術では、歯ぐきを切開する・あごの骨に穴を開けるといった処置をします。心身ともに疲労しているので、少なくとも手術当日は安静にしましょう。できれば手術から2～3日ほど安静にすると、回復がスムーズです。

インプラント手術直後はデリケートな状態なので、服薬など歯科医師の指示は必ず守る・入浴や激しい運動を避ける・硬いものや刺激物を食べないといった点に注意します。

もし、痛み止めが効かず激しい痛みがある・1週間以上経過しても痛みや腫れがおさまらず悪化している・薬を飲んでから下痢や湿疹などの異変が出た場合は、すぐにかかりつけの歯科医師に相談してください。

インプラント手術後の過ごし方で、回復までの時間や治療の成功率は大きく左右されます。注意点を守って、快適なインプラント生活を手に入れましょう。