インプラントがダメになったら入れ歯しかない?

松川 眞敏
松川 眞敏
この記事の監修者
医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラントは治療後10年以上経過しても、約9割が使えるほど寿命が長いといわれています。20年、30年と長持ちするケースも少なくありません。

 

しかし、手術の失敗・治療後のメンテナンス不足などにより、インプラントがダメになってしまう場合もあります。「インプラントがダメになったら入れ歯しかない」と思われがちですが、実際にはどうなのでしょうか。

 

この記事では、インプラントがダメになる原因や対処法、ダメになるのを防ぐ方法などを解説します。

目次

1.インプラントがダメになるってどういうこと?原因は?

インプラントがダメになるとは、インプラントがぐらぐらする・インプラントが壊れた・インプラントが抜け落ちた・痛みや腫れがなどの症状が出ているといった状態を指します。

 

インプラントがダメになってしまう主な原因は、下記の通りです。

1-1.インプラント体とあごの骨の結合が上手くいっていない

インプラントは、あごの骨に埋め込んだインプラント体が骨としっかり結合することで安定します。結合が上手くいかない場合は、インプラントがダメになってしまうかもしれません。

 

結合が上手くいかない原因は、インプラント体を埋め込む位置や角度が適切でなかった・あごの骨の厚みや幅が不足している・あごの骨にドリルで穴を空ける際に火傷のような状態になってしまったなどです。

 

手術した場所に細菌が侵入して感染し炎症が起きた場合も、インプラント体とあごの骨の結合に影響が出ます。

1-2.インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、歯周病菌がインプラントの周りの歯ぐきに感染し、炎症を起こす病気です。

 

歯周病とよく似た病気で、最初は軽い腫れや痛みといった症状が出て、悪化に伴い歯ぐきやあごの骨が破壊されます。あごの骨の破壊が進んで骨量が大きく減少すると、インプラント体を支えきれなくなり、ぐらついたり抜け落ちたりしてしまいます。

 

インプラント周囲炎は歯周病と比べて進行スピードが非常に早く、異変に気がついた時には重症化して、あごの骨が大幅に減っている場合も少なくありません。

 

そのため、インプラントがダメになるのを防ぐには、インプラント周囲炎の予防が大切です。

1-3.インプラントの破損

インプラントは安定性が高く、天然歯と変わらないほど強い力で噛むことができます。

 

その分、歯の噛み合わせの乱れや歯ぎしり・食いしばりといった噛み癖あると、インプラントに過剰な負荷がかかり、破損したりネジがゆるんだりする場合があります。

2.入れ歯だけじゃない?インプラントがダメになった時の対処法

結論から言いますと、インプラントがダメになった場合の対処法は、入れ歯だけではありません。主な対象は、次の5つです。

2-1.口内をケアする

インプラント周囲炎などによる痛みや腫れがあると、インプラントがダメになったと思うかもしれません。しかし初期段階であれば、適切なケアによって状態が改善し、インプラントを使い続けられます。

 

日頃のブラッシングを丁寧にする・歯科クリニックでクリーニングをしてもらう・歯科医師に処方された抗生剤を服用するといった対策が効果的です。

 

ケアを始めるのが早ければ早いほど、インプラントがダメになるリスクを軽減できるので、異変を感じたらすぐにインプラント治療を受けた歯科クリニックに相談しましょう。

2-2.インプラントを修理する

人工歯やインプラント体と人工歯をつなぐアバットメントが壊れた場合や連結部分のネジが緩んだ場合は、インプラントを取り除かなくても修理・交換・ネジの締め直しをすれば、また使えるようになります。

 

ただし、インプラント体が破損した場合は再利用できないため、手術によって取り除くしかありません。

2-3.再治療をする

インプラント体が壊れてダメになった場合などはあごの骨や歯ぐきの状態に問題がなければ、インプラントの再手術ができます。

 

インプラント体がまだ口の中に残っている場合は、インプラント体を取り除き、新しいインプラントを埋め込みます。新しく埋め込んだインプラントが安定すれば、そのまま使い続けられます。

 

また、あごの骨量が少ない場合は、人工骨を移植するなど骨を増やす処置をする。インプラント周囲炎の場合はグリーニングするといったように、治療によって状態を改善すれば、再手術ができる場合があります。

2-4.入れ歯にする

インプラント周囲炎が重症化してあごの骨が大幅に減少しているなど、再手術が難しい場合は、入れ歯によって補うこともできます。

 

入れ歯は噛む力が弱く、見た目もやや不自然です。食事中や会話中にずれるなど。使用感が気になる場合もあるでしょう。

 

しかし、インプラントに比べて費用をおさえられる・治療期間が短い・手術が不要といったメリットがあります。

2-5.ブリッジにする

ブリッジは、失った歯の両隣の健康な歯を削って土台にし、橋のように人工歯をかける治療法です。

 

入れ歯よりも噛む力が強い、見た目が自然といったメリットがあります。また、インプラントよりも費用が安く、外科手術も不要です。

 

ただし、健康な歯を削らなければいけないという大きなデメリットがあります。削った歯は寿命が短くなるため、ブリッジにする場合は慎重に検討しましょう。

 

また、失った歯の数・場所によっては、ブリッジで対応できない可能性もあります。

3.インプラントがダメになるのを予防する方法

インプラントがダメになってしまったとしても、場合によっては再治療が可能です。しかし、再治療には手術が必要で費用もかかります。さらに歯ぐき・あごの骨の状態が悪ければ、再治療はできません。

 

インプラントがダメにならないように、下記のような対策をしましょう。

3-1.信頼できる歯科クリニックを選ぶ

インプラントは、専門知識と高い技術が必要な治療です。成功するかどうかは、歯科医師の腕に大きく左右されます。そのため、インプラントの症例実績が豊富な歯科クリニックがおすすめです。

 

また診察時の対応も、歯科クリニック選びの基準になります。話を丁寧に聞いてくれる・説明がわかりやすい・メリットだけでなくデメリットも伝えてくれるといったような歯科医師であれば、信頼できるでしょう。

 

感染対策に有効なインプラント専用の手術室・口の中の状態を立体的に正確に把握するための歯科用CT・事前のシミュレーション通りにあごの骨に穴を開けられるサージカルガイドなど、設備や器具が充実しているかどうかも重要です。

 

逆に避けたいのは、1本あたり10万円前後の格安インプラントを実施している歯科クリニックです。コストをおさえるために粗悪なインプラントを使用していたり、必要な検査のプロセスを省いたりしているので、インプラントがダメになるリスクが高いといえます。

3-2.手術後の歯科医師の指示を守る

手術後は、当日の運動は避ける・硬い物や熱いものを食べないようにする・抗生物質を飲むなど、歯科医師から指示があります。

 

手術直後は非常にデリケートな状態なので、指示に従わないと細菌感染や炎症の悪化といったトラブルが起き、インプラントがダメになってしまう可能性があります。

3-3.定期メンテナンスを必ず受ける

インプラントをダメにしないためには、定期メンテナンスが非常に重要です。

 

定期メンテナンスで、インプラント・歯ぐき・噛み合わせの状態をチェックしてもらうことで、インプラントをダメにする可能性があるトラブルを早めに発見できます。

 

トラブルがあっても初期のうちであれば、インプラント周囲炎の治療をする・噛み合わせを調整する・インプラントの修理・ネジの締め直しをするといった方法で改善できる場合も少なくありません。

 

特にインプラント周囲炎は、初期のうちは自覚症状がほぼないので、定期メンテナンスで早めに見つけてもらうことが大切です。

 

定期メンテナンスでは、歯垢や歯石のクリーニングもしてもらえます。歯垢や歯石がたまると、歯周病菌や虫歯菌が増殖します。その結果、インプラント周囲炎や天然歯の虫歯と言った。トラブルが起きやすくなります。

 

定期メンテナンスでクリーニングを受けることで、インプラント周囲炎や虫歯のリスクを軽減できます。特に歯石は通常の歯磨きでは取り除けないので、歯科クリニックでのクリーニングが重要です。

3-4.セルフケアをしっかり行う

数カ月に1回の歯科クリニックのクリーニングだけでは、口内環境を清潔に保てません。歯磨きなど毎日のセルフケアが重要です。

 

正しい回数方法で歯磨きをしっかりすることで、インプラント周囲炎や天然歯の虫歯を防げます。歯科クリニックで歯磨き指導を受け、正しいブラッシングを身につけると、より効果的です。

3-5.噛み合わせの調整や噛みぐせ対策をする

噛み合わせや噛みぐせによるダメージを軽減対策することで、インプラントの破損を防げます。

 

噛み合わせが乱れている場合は、インプラントを調整することで解決する場合があります。

 

噛みぐせは無意識の行動なので、なかなか自分では直せません。そこで、「ナイトガード」と呼ばれる就寝時に装着するマウスピースを使用します。ナイトガードをつけることで寝ている間にインプラントにかかる負荷を軽減でき、破損やネジのゆるみを防止できます。

3-6.禁煙する

タバコに含まれるニコチンには、血液の流れを妨げる作用があります。血液の流れが悪いと、手術でできた傷口の回復やインプラント体とあごの骨の結合に必要な酸素・栄養素が充分に届きません。

 

また、タバコには免疫力を低下させる作用があり、手術後の細菌感染やインプラント周囲炎のリスクが高まります。

 

インプラントをダメにしないよう、禁煙するのがベストです。もし難しい場合は、タバコの本数を減らすだけでもリスクを軽減できます。

4.インプラントがダメになっても選択肢はたくさんある!

インプラント体と顎の骨の結合がうまくいかない・インプラント周囲炎が重症化した・インプラントが破損したといった理由で、インプラントがダメになってしまうことがあります。

 

ダメになった場合は入れ歯だけではなく、口内をケアする・インプラントを修理する・インプラントの再治療をする・ブリッジにするといった選択肢もあります。

 

インプラントがダメにならないようにするには、信頼できる歯科クリニックを選ぶ・手術後は医師の指示を守る・定期メンテナンスを必ず受ける・セルフケアをしっかり行う・噛み合わせの調整や噛みぐせ対策をする・禁煙するといった方法が効果的です。

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