- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラントは天然の歯のようによく噛めて、見た目も美しく仕上げることができる素晴らしい治療法です。ただ、治療にかかる費用が比較的高額である点がネックで、なかなか一歩踏み出せないという方もいらっしゃることでしょう。
そこで目を引くのが「激安インプラント」ですよね。インプラントについて調べると、通常よりもかなり安い価格のインプラント治療を見つけることができます。ここではそんな激安インプラントの内情について詳しく解説します。
目次
- 1.インプラント治療の相場はいくら?
- 2.激安インプラントはいくら?
- 3.信頼できるインプラントメーカーの見極め方
- 3-1 インプラントの種類は100以上
- 3-2 世界4大インプラントメーカーは安全?
- 3-3 マイナーなインプラントは危険?
- 4.インプラントが安い理由
- 5.インプラントを「激安」「格安」にできる理由
- 5-1 マイナーなインプラントシステムを採用
- 5-2 重要な治療のプロセスを省いている
- 5-3 手術代しか含まれていない
- 5-4 経験の浅い歯科医師が治療を担当する
- 5-5 十分な設備が整っていない
- 6.安全なインプラント治療を受けるためのポイント
- 6-1 信頼性の高いメーカーのインプラント
- 6-2 治療計画が適切である
- 6-3 治療費の内訳を説明してくれる
- 6-4 インプラント治療の実績が豊富な歯科医師
- 6-5 歯科用CTなどの設備が整っている
- 7.まとめ
1.インプラント治療の相場はいくら?
激安インプラントについて解説する前に、まずは一般的なインプラント治療の費用について確認しておきましょう。使用する材料や適応する治療法などによっては、高い費用が発生することもあります。
2.激安インプラントはいくら?
巷でも話題になっている「激安」「格安」インプラントというのは、多くの場合で10万円程度のものを指しています。インプラントに興味をお持ちの方なら「激安10万円インプラント」という文字を目にしたこともあるかと思います。
この差は何なのでしょうか?
一例として、インプラントメーカーの違いに注目すると、激安インプラントのからくりが少し見えてきます。
3.信頼できるインプラントメーカーの見極め方
3-1 インプラントの種類は100以上
インプラントは、「人工歯根を顎の骨に埋めて人工歯を被せる」治療法で、これはすべてのインプラント治療に共通しています。けれども、インプラントの形や性状などは個々のインプラントメーカーによって異なり、その種類は100以上に及びます。そして、インプラントの種類によっては、まだまだ実績に乏しく、安全性も実証されていないケースも多々あるのです。
3-2 世界4大インプラントメーカーは安全?
インプラントには「世界4大メーカー」と呼ばれる4つの会社が存在しています。具体的には、アメリカのジンマーデンタル社、スウェーデンのノーベルバイオケア社、スイスのストローマン社 、スウェーデンのアストラテック社の4つです。インプラントの発症の地である北欧の会社が大半を占めていますね。
この4大メーカーのインプラントシステムは実績も豊富で、治療の安全性や確実性は保証されているといえます。日本の歯科医院でも、4大インプラントメーカーのいずれかを採用しているところがほとんどといえるでしょう。
3-3 マイナーなインプラントは危険?
インプラントメーカーには、マイナーなものも存在しています。その中には、「国産インプラント」と銘打たれた日本製のものも複数含まれています。これらを一概に、安全性や確実性の低いインプラントシステムということはできませんが、メジャーなものよりは信頼性が低いことは確かです。
4.安いインプラントメーカーが存在する理由
例えば、ストローマン社のインプラントは、数十年にも及ぶ臨床研究の末、今のようなインプラントシステムを構築するに至っているので、それなりにコストもかかっています。ですから、インプラント体そのものの値段が高くなっても仕方のないことといえます。
一方、後発インプラントメーカーは、すでに存在しているインプラントを研究するため、研究開発費を大幅に抑え提供価格も安くすることができます。ただし、材料費などを抑え低品質のインプラントを提供しているメーカーも存在します。
低品質なインプラントは、インプラント体の設計自体も適切ではなく、骨との結合が得にくい傾向にあります。つまり、そうしたインプラントシステムを選択した時点で、良好な治療結果を得られなくなる可能性は極めて高くなるのです。
5.インプラントを「激安」「格安」でできる理由
5-1 マイナーなインプラントシステムを採用
先ほどお伝えした通り、マイナーなインプラントシステムを採用することで、インプラントの価格を安くすることができます。
5-2 重要な治療のプロセスを省いている
インプラントを安全かつ確実な方法で埋入するためには、それなりの治療プロセスを踏む必要があります。最もわかりやすい例がインプラント手術の回数ですね。インプラント治療には、手術を1回で終わらせる1回法と、2回に分ける2回法があります。インプラントを確実に骨と結合させられるのは2回法です。もちろん1回法も問題ないのですが、適応ケースが限定されていますので、すべてのケースでできるわけではありません。
激安インプラントでは、適応ケースに関わらず、無理やり1回法を適応して、コストを削減していることが多いといえます。
5-3 手術代しか含まれていない
例えば、「インプラント1本10万円!」と書かれた広告があったとしたら、一般の人はインプラント治療にかかる総額が10万円であると勘違いしますよね。けれども、10万円の内訳はインプラントを埋入するための手術代しか含まれておらず、診断料、上部構造の製作費などが加算されることもあります。
ただし、このケースでは最初の相談の際に費用の内訳を確認することで解決できます。それでもなお治療費の詳細を濁すようであれば、信用できませんので、別の歯科医院を探しましょう。
5-4 経験の浅い歯科医師が担当する
インプラント治療も医療の一環ではありますが、利益が出なければ続けていくことはできません。とくに人件費に関しては、その他の業種と同様、シビアに考える必要があります。そのため、経験豊富な歯科医師に激安のインプラント治療を任せるということはまずないとお考えください。
つまり、1本10万円のインプラント治療を担当するのは、診療経験の浅い歯科医師が多いと考えられます。彼らにとっては勉強にもなるため、安い治療費でも執刀する価値はあります。けれども、患者さんにとってそれがベストであるかどうかは別の問題です。
5-5 十分な設備が整っていない
精度の高いインプラント治療を実現するためには、それ相応の設備が必要となります。具体的には、歯科用CTやシミュレーションソフト、インプラント専用のオペ室などです。こういった設備が整っていることで、インプラントを安全かつ確実に埋入することが可能となります。
ただ、これらは極めて高いコストのかかるものばかりなので、すべての歯科医院が完備しているわけではありません。逆にいうと、これらの設備を整えるコストをカットすれば、激安インプラントを実現することも可能といえます。
6.安全なインプラント治療を受けるためのポイント
「治療費が安い=危険」ではありません。
なぜなら、頑張ってコストカットした結果、治療費を抑えることに成功している歯科医院もあるからです。そこで皆さんが知りたいと思うのは、「安くても安全」なインプラント治療を見極めるポイントだと思います。
6-1 信頼性の高いメーカーのインプラント
採用しているインプラントが4大メーカーである場合はもちろん、国産でも信頼性の高いメーカーのものであれば、安全である可能性は高まります。
6-2 治療計画が適切である
しっかりした治療計画を提示し、納得いくまで説明してくれる医院であれば一定の信頼はあります。
6-3 治療費の内訳を説明してくれる
治療にかかる費用の内訳を細かくきちんと説明してくれる歯科医院であれば、信頼性は高くなります。それでも不安がある場合は、他の医院にセカンドオピニオンを求めて、治療計画が適切かどうかをチェックしてもらいましょう。
6-4 インプラント治療の実績が豊富な歯科医師
これまで担当してきたインプラント実績について、きちんと開示してくれる歯科医師を選びましょう。「埋入実績1000本」という言葉だけではなく、実際の症例を具体的に説明してくれることが大切です。
6-5 歯科用CTなどの設備が整っている
インプラント治療には、もはや歯科用CTは必須といえます。その他、シミュレーションソフトの活用や専用のオペ室の有無なども確認しましょう。
7.まとめ
激安インプラントは必ずしも「安かろう、悪かろう」ではありません。中には明らかに悪徳ともとれるケースも存在しますが、それは上述したようなポイントを参考に、皆さんご自身で見極めなければなりません。インプラントは外科処置も伴う大掛かりな歯科治療となることから、歯科医院選びも慎重に行うようにしましょう。