- この記事の監修者
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医療法人社団「朋優会」理事長。歯科医師・インプラント専門医。国際インプラント学士会(I.C.O.I.)メンバー。米国インプラント学会(A.O.)アクティブメンバー。欧州インプラント学会(E.A.O.)メンバー。O.S.I.アドバンスドトレーニングコース 講師。
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インプラントは第二の永久歯と呼ばれるくらい、天然歯(自身の歯)と同じように噛めることができる治療法の1つです。
特に、インプラントの見た目は天然歯と区別が付きにくい程です。
しかし、インプラントも完璧な治療ではなく、天然歯のマネがしたくてもできない部分があります。
それが、歯根膜と噛み心地です。
天然歯と比べるとインプラントは、歯根膜が無いので、どうしても噛み心地が劣ってしまいます。かといって、天然歯に噛み心地が劣るからと「インプラント=噛めない」ではありません。
天然歯のように独立して噛むことができるのは、インプラントの治療の特徴でもあります。
今回はインプラントと歯根膜の関係、インプラントの噛み心地について詳しく解説していきます。
目次
- 1 インプラントと天然歯の違いは「3つ」
- 1-1:歯根膜
- 1-2:神経
- 1-3:血液
- 2 インプラントの噛み心地は?
- 3 天然歯と同じ?次世代型「バイオハイブリッドインプラント」
- 3-1:歯根膜が再生する
- 3-2:感覚が回復する
- 3-3:移動することができる
- 4 インプラント治療が天然歯に近い治療法
1 インプラントと天然歯の違いは「3つ」
インプラントと天然歯では、次のような3つの違いがあります。
・歯根膜
・神経
・血液
それぞれについて解説していきます。
1-1:歯根膜
歯根膜は、歯の根の部分にある膜のことです。
厚さは0.2㎜と薄いコラーゲンでできていて、歯と顎の骨を繋ぐ役割をしています。
他にも、噛んだ時にかかる圧力を吸収して分散させる役割もあります。
歯根膜の細かい靱帯が、圧力を逃がしてくれるおかげで、歯はある程度の圧力に負けないことができるのです。
しかし、歯根膜は歯の組織の一部なので、抜歯をすると同時に失ってしまいます。
インプラント治療は、歯が無い所の顎の骨にインプラント(人工の根)を直接埋める方法です。そのため、インプラントには歯根膜がありません。
歯根膜が無いインプラントは、噛む時の圧力を顎の骨が受け止めるしかなく、強い力がかかりすぎると骨が吸収される場合があります。
「骨が吸収されるならインプラントは長く使えないのでは?」と心配になりますよね。
そこで大事になってくるのが、噛み合わせの調整です。
インプラントに強い圧力がかかって骨吸収が起こりにくくするために、他の歯とのバランスを見ながら噛み合わせの調整をします。
定期的に噛み合わせの調整をすることで、長くインプラントを使い続けることができます。
1-2:神経
天然歯にある歯根膜には知覚神経が通っています。
この知覚神経は、強い力が歯にかかった場合、脳に力を弱めるように信号を送る働きをします。そのため、強い力が歯にかかってもダメージを少なくすることができるのです。
一方、歯根膜が無いインプラントは、もちろん知覚神経もありません。
強い力がかかってインプラントが悲鳴をあげていても、知覚神経が無いので脳が察知することができないのです。
強い力が頻繁にインプラントにかかると被せ物が欠けたり、インプラントの根の部分が折れたりする可能性があります。
1-3:血液
天然歯には、歯茎、歯根膜、顎の骨の3つから血液が通っています。
血液には、細菌から組織を守る役割があるため、血液の通り道が多いほど細菌感染のリスクが低くなります。
インプラントの場合には、歯茎と顎の骨の2つの血液の通り道しかないので、天然歯と比べると、細菌感染のリスクは高くなる傾向になっています。
かといって、インプラントが頻繁に細菌感染する訳ではありません。
適切な歯磨きと定期的なメインテナンスを受けて、口の中を清潔に保つことで細菌感染を防ぐことができます。
2 インプラントの噛み心地は?
冒頭でも言ったように、インプラントの歯の噛み心地は、天然歯に比べると劣る部分があります。
それが食感です。
例えば、野菜のシャキシャキ感や天ぷらを食べた時のサクサク感は、歯根膜を通して感じることができる感覚です。
この感覚は、口の中に髪の毛が1本入っただけでもすぐに察知し、髪の毛の太さまで瞬時に分かるほど敏感でセンサーのような役割もあります。
また、歯根膜は敏感なセンサーの働きによって、硬い物や柔らかい物を食べる時に噛む力を調整することが可能です。
一方で、インプラントには歯根膜というセンサーが無いので、食べ物の食感を楽しむことが難しかったり、噛みすぎたりする場合があります。
3 天然歯と同じ?次世代型「バイオハイブリッドインプラント」
最新のインプラントの研究では、バイオハイブリッドインプラントが注目を集めています。
バイオハイブリッドインプラントとは、インプラントの表面に歯の組織を作る細胞(歯胚)をコーティングして顎の骨の中に埋めて、歯根膜などの組織を作り出す、新しい治療方法のことです。
しかし、現段階では、まだ人への実用化ができていません。
バイオハイブリッドインプラントが実用化されると、天然歯とインプラントにほとんど違いが無くなると言われています。
特に、次の4つのことがインプラントと天然歯に違いを無くす、ハイブリッドインプラントの特徴になります。
・歯根膜が再生する
・感覚が回復する
・動かすことができる
・細菌感染のリスクが低くなる
3-1:歯根膜が再生する
バイオハイブリッドインプラントの大きな特徴が、歯根膜を作り出すことです。
自身の歯根膜から歯胚を取り出すことが出来た場合には、身体の拒否反応もほとんど無く治療することができるようになるのです。
また、歯は毎日使っている内に、ミリ単位で噛む位置が微妙に変わります。
他の歯の位置が変わると、インプラントの噛む位置も変わることがあり、噛み合わせが強く当たっていることがあります。
インプラントに噛む力が強くかかっていると、破損する原因にもなり兼ねません。
しかし、歯根膜があるバイオハイブリッドインプラントは、歯にかかった強い力を分散できるようになるので、骨吸収が起きたり、他の組織にダメージを与えたりすることがほとんど無くなります。
3-2:感覚が回復する
バイオハイブリッドインプラントでは、失われていた触感や痛覚といった感覚や刺激がわかるようになります。
感覚が回復することで、天然歯と変わらずに食感を楽しみながら、食事をすることが可能です。
また、神経が通るようになるので炎症が起こった時には、違和感や痛みとして感じることができ、炎症がもっと進行する前に気づくことができるようになります。
3-3:動かすことができる
インプラント治療は顎の骨の中にインプラントを埋めて、しっかりと固定するため、インプラントを移動させることはできません。
歯並びが気になっても、インプラントの歯を矯正で移動させることはできないのです。
しかし、バイオハイブリッドインプラントには歯根膜があります。
歯根膜があると歯の移動が可能になるので、インプラントでも矯正治療が可能になり、歯並びを綺麗にすることができるようになります。
3-4:細菌感染のリスクが低くなる
歯の組織を再生できることで、血液の通り道も回復します。
ハイブリッドインプラントは、インプラントより血液の通り道が増えるので、細菌感染をするリスクが低くなります。
4 インプラント治療が天然歯に近い治療法
インプラントは歯根膜がないので、噛み心地はやや天然歯に劣る部分があります。
しかし、歯を補充する治療の中ではインプラントが機能的にも天然歯に近く、見た目は変わらない程です。
また医療技術は日々進化していて、バイオハイブリッドインプラントが実用化できる日も遠くはありません。
かといって、実用化されるまで歯を失った状態で待つ訳にもいきません。
歯は失ったところから、徐々にダメージが広がっていきます。
他の歯に負担がかかる前に歯を補充することが大切になるので、早めに担当医に治療相談するようにしましょう。